僕らの旅
津多 時ロウ
……
僕らは世界を救う旅に出た。
どこまでも続く平原を一年かけて踏破して
鏡のような湖に吸い込まれ
空に架かる虹の果てを目指して
雲で築かれた霹靂の大宮殿に辿り着き
キラキラと輝く紺碧の海を泳いで進んだ先
人跡未踏の深山に登り
空を塞ぐ巨大樹の枝で昼寝をし
無数の星が瞬く洞窟を抜けた先で
空につながるハシゴから、僕らはやっと帰ってきた。
僕らは世界を旅して、そしてある発見をした。
それは僕ら以外、誰にも言ってはいけない秘密になった。
僕らにとっては命にも代えられないほどにそれは重要で、けれど白日の下にさらされたところで、それでも世界は回り続ける重大なことだった。
風が吹き、雲が流れ、雨が降り、川が下り、海がうねり、太陽が照らし、月が輝く。
笑い、滴り、粧い、眠る。
僕らの秘密がどうであれ、そうして世界は回っていく。
僕らの旅に意味はあったのだろうかと、今でもふと思う。
そんなことはどうだっていいことなのに。
僕らは旅に出て帰ってきた。
それだけのことだった。
ねえ、
僕らの秘密って何だと思う?
僕らの旅 津多 時ロウ @tsuda_jiro
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