脱却輪廻

釣ール

偏見消滅

 華がないから暗くなくてはいけないのだろうか?


 インフルエンサーのように拡散力を身につけなければ恵まれてはいけないのだろうか?


 澪奈れなは女子大生としての生活を終えつつある。

 結構恋愛関係はあった。

 華がないだけでバイトを掛け持ちしながら就活もして最低限のお洒落はしてきた。

 この話をすると同年代からは「普通。」と言われ、上の世代からはハイエイジだと言われ、


「あっ!これ分かり合えないやつ!」


 澪奈は早々に現実に気付き、悔しくて恋愛もしてきた。


 だが現実は煌びやかなものでもなければこの世の悩みを解決するわけではなく、

 恋愛はギャンブル性が高くてしなくてすむならわざわざ選びたくないと澪奈は考えていた。


 むしろ澪奈は明るめに見られるグループと過ごしていて、それなりの経験は終わらせていた。

 肩の荷が下りたから逆に自分の時間を作れたはいいものの、流石に一人では生活に限度があることも熟知している。


 そういえば忘れていたことがあった。

 男女の営みを!


 正確に言えばもう終わらせたから忘れてしまっていた。


 大学生活を終え、その後は特に何も良い変化が訪れないストレスだらけの現代社会で生きる屍として過ごさざるを得なくなる。


 こういうのを喪女もじょとは言わないらしいけれど、今は彼氏もいない。

 付き合ってきた男性も別にそこまでを求める人達ではない相手をお互い選んでいたので利害の一致による現実的やり取りだった。


 その方が長続きしている。

 今じゃ戦友である。

 そんな彼らも現代社会へ羽ばたいていった。


 別に悩みではないけれどある人が子供の頃、澪奈を見て禁句を放ってきたのだ。


「澪奈は恋愛できない。」

「あいつじゃモテない。」


 ふふふふふふ。

 そうか。

 あなた達はそう思っていたのか。

 ふふふふふふふふふふ。


「ファッ◯◯◯◯◯◯◯ッス◯◯◯◯◯!」


 それを聞いて以来モテる努力も結構してきて恨みによる行動力で禁句を言い放った人間達よりもどこかでは高位に立てるように努力をしてきた。


 つまり澪奈は自分の為の恋愛をしたことがなかった。

 勝つ為にやってきたに過ぎない。


 大学生になってからは現代を生きる同年代はわかりやすいマウントしか取らないので適当に流しながら話していた。

 でも上がんない。

 大学生活このままでいいのか?

 せめて自分が今まであったことのない人と恋愛をしたい。

 けれど将来を見据えるのなら時間が欲しい!


 何かあった時では遅いのであらゆる防犯グッズと法律を学んで誰と付き合っても対策できるように貯金をし、筋トレもしたので着れる服の幅が広がったのと節約と自炊もできたので動画配信もできるようになってしまった。


 スキルや才能が欲しいんじゃない!

 終わらせた筈の記憶のない恋愛という名の物語に決着をつけ、自由になりたい!


 それは男性陣にも言える可能性はある。

 というかそこまで行かなくて付き合った男子や先輩達もさり気なく愚痴っていた。


 ここでかけがえのない経験をし、壁を乗り越えるよう普段は絶対関わらないタイプの人とお近付きになった。


「へえ、君が澪奈?

 凄え!俺より筋肉がある!

 そこまでしなくても危ねえ男いたら喧嘩で勝てるよ俺?」


 まさかこんなアグレッシブな人だとは。

 初対面から何かあると思っていたが何だかこの手の出会いは初めてそうだった。


 やる事は決まっているのでそこまでいく間、話をしているうちに彼は同性に対して喧嘩っぱやいだけで異性に対しては厳重な守り方をしてくれていた。


 例えば、澪奈がどこかで何かを食べる時は頼んでもいないのに全て代金を支払ってくれたり。


 危なそうな道を通らざるを得ない時は彼が先導し、アサシンのような目線で道を開けさせ周囲に誤解がないようにまるで騎士のような敬礼?か何かをしてレッドカーペットを通る俳優のように澪奈を歩かせた。


「この格好ではよく誤解がございますが、全てはカモフラージュ。

 貴女様を目的地までご案内することこそ我が使命。

 お通りを。」


 あれ?

 ギャップ萌え所かギャップしかない。

 逆に怖い。

 繊細な人なのか?

 もしかしてこういうの初心者だったりするのだろうか?


 ただ話をすると同年代の大学生だからか先のことを考えると不安だったりしていて共感してしまっていた。


 あのスキルも生き延びる為に習得したらしい。

 内心、澪奈は


「自分だけじゃないのか。」


 一言彼へ賛同した。



 それから他人には言えないことを終えた。

 記憶に残った部分が営みではなくここまでの過程ばかりだった。


 エンディングを迎えた後は二人とも大きなため息をついた。

 もう臨界点に達している。


「このスキル持ってても進路には関係ないんだよね。

 に使えてよかったよ。」


「景気が悪い世界に自分を委ねる必要なんてない。

 私達はもう一人じゃないし簡単には挫けない。

 貴方からそれを今日教わった気がするから。」


 連絡先を交換したのにもう二度と会えない気がしてしまった。


 なんか、恋愛や今後に時間を割けられる気がしなかったからだ。


「俺たち。

 また会えるだろうか。」


「卒業決まったら連絡するから。」


 実は私も防衛スキルがあるとは言えなかった。

 二人で公的機関に行けばどうなるのか目的地で創作もした。


 だが、フィクションはフィクションだからこそ美しい。

 現実にそれを求めれば生きづらくなるだけ。


 最後は笑ってここまでの過程を話し、彼の送りで帰宅した。


 彼も私もこう思ったに違いない。


 輪廻脱却りんねだっきゃく


 もう人目を気にしても色々ありましたですまそう。

 二人で話したが今後の未来、仕事先で出会った時に気まずくならないようにここだけの関係にすると決めていた。


 解脱げだつはまではお互いできなかったが就活を終えて落ち着いた時に会うことを決めた。

 それで全ての物語は終わる。


 でも。

 子供の頃からこんな経験していたら違った未来もあったかな。


 澪奈はもう生き方を偏らせない。

 身を守り、大切な人達を守ることを誓いトレーニングを続け就活を終わらせる方向へ転換した。


 彼の名前なんだったかな。

 そこは全然教えてくれなくて歯痒かった。

 彼がここまで守ってくれたから好きになったわけではない。

 生きづらく世知辛い現実で違う世界での愚痴を言い合えたから好きになっただけだ。

 彼の名誉と澪奈の誇りを守るきっかけとしてこの歴史を刻もう。


 解脱まで欲深になっていいのかはまた後で考えるだけで今はいい。

 これでいいと納得し次の人生を二人は歩み始めた。

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