秘密のメッセージ
蔵樹紗和
第1話 手紙
もうすぐ高校の卒業式が始まるとき、隣の席に座る女の子、川崎さんから花柄の便箋に入った手紙を渡された。
まだ式が始まるまで少し時間があるので僕はすぐさま便箋を開ける。
その手紙にはこんなことが書いてあった。
あんどうくんへ
なかなかお話をする機会がなかったけど三年間ありがとう。
たくさんの思い出をクラスの皆と共有できてうれしいな。
がっこうは違うけどこれからもよろしくね。
すてきな毎日を過ごせるよう、お祈りしておきます。
きっと、また会えることを信じて。
よしこより
僕はこの手紙を見て、なんて心が優しいのだろうと感動した。高校生活の中で一番の思い出になったのである。
しかし、このとき僕はこの手紙の真意に気づくことができなかったのだ。
「あなたがすきよ」
僕は五年後、高校の時の友達と再会し、この手紙を見せるまで川崎さんの気持ちに気づかない。
そのときにはもう、川崎さんの居場所は僕に分からなくなってしまっていたのであった。
秘密のメッセージ 蔵樹紗和 @kuraki_sawa
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