第15話 【暗躍】
私には、書類上、父が二人いる…。元閣僚の政治家である父、九条 頼兼と、財務官僚であり後に義父となる、伊川 司郎。父と義父は、竹馬の友だったらしい。父の死後、父の汚職と愛人問題が発覚、世間の目が子である私に向くのは必定。マスコミや警察がごまんと湧いた。その好奇の中、親戚中を盥回しにされていた私を、伊川 司郎が、引き取ってくれた。世間の目を誤魔化す為に、改名手続きをして新たな名前も用意してくれていた。そして、伊川旺司になった……。
[義姉上も、暇なことだ…。いや、それほど、逼迫した状況であると見るべきか………? …アレは…]
『なっ、なぁ、ホントにやるのか? 』
『ここまで来て、怖じ気づくなよ』
『でっ、でも……』
[(はぁ……呆れるな…)お前ら……爪が甘い。]
『伊川 !!』『伊川くん…』
顔を見合わせる小岩井と浜岡
『なぜ……』
[お前ら…まだ、教師はいるぞ…。どれほど綿密な計画を立てようとも、完璧なんてこの世にはあり得ない。イレギュラーは、起こりうるんだ……もしまだ、やる気があるのなら、もっと、計画を詰めることだね…それじゃ、私はこの辺で…]
[Bye. good night .また、来週]
後ろ手に手を振りながら、悠然と去る伊川……
『チッ…』『どうする……』
『そうだ!! アレをしよう…』
『アレ? 』
不敵に笑う、小岩井。たじろぐ浜岡…
一体、何を企むのか……
週明けの月曜日
テスト週間まで、あと1週間と数日。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
『ねぇ、伊川くん。この問題どう解いたらいいの? 』
[広松…これくらい自分で考えろ…俺は暇じゃない]
ガビーン
『そっ、そんな……』
『そんな言い方してやるなよ…伊川!! 』
<あぁ、揉めてるよ……口悪いし一言多いからな…>
「まぁ、伊川。抹茶オレの美味しい喫茶店見つけたんだ、今度、紹介するからよ、教えてやれよー」
[渡…お前……。私は抹茶は好きだが、物で釣られるような人間ではないぞ…。はぁ、教えればいいんだろ…教えれば…。]
不貞腐れながら、言う伊川であった…
『あっ、ありがとう! 渡くん。伊川くん、抹茶好きなんだ(フフッ良いこと聞いた~)』
『次の授業は移動教室だよねー? 』
『あぁ、そうだったねー』
『どこだっけ?』
『渡り廊下渡った、隣の校舎の2階の科学室だよー』
『あぁ、小島先生の授業ねー』
廊下にある鍵付きロッカーに、バックを入れている桝岡。
『あぁー! 桝岡先生だー』
ビクッ こちらを見ながら驚き鍵をかける桝岡。
『桝岡先生ヤッホー』
『コラコラw廊下で大声出すと響いてびっくりしちゃうだろー。以後気をつけるようにね。みんなは移動教室?』
『そぅなのー。小島先生の授業なのよー。科学室なのよねー』
『あぁ、だからドライアイスがあったのねー』
『面白いこと起こるかもねーwww』
(ドライアイス? 教科書の通りなら…要らないと思うが……)
<へぇー、ワクワクしてきたーwww>
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
『はい、今日の授業。先週は物質の三態変化と、融点とか沸点とかしました。覚えてる~?』
『そうだっけ?』『忘れたぞw』『ヒソヒソゴソコソ』
『俺はちょっと悲しいぞー』
『まぁ、毎年忘れられるんだけどねw』
『その為に復習と、ドライアイスを使ってちょっとした実験をします!!』
『ちなみにドライアイスは素手で触ると凍傷を起こします、最悪、細胞が壊死して、切り落とすことになるので、あとで渡す軍手を二枚重ねで着けてしてください。』
『はい。じゃあ、ドライアイスに水を入れるとどうなるでしょうか? 分かる人? 』
『どうなる?』『どうなるんだろ』『わからんw』
「白い煙が出ます」
(ほぉ、知ってたか…)
『おっ、誰が言った? 渡くんか、当たり!! 拍手!』
パチパチパチパチ
『はい、じゃあ、何ででるのか、何が出てるのかを実験して確かめてもらいます』
(うん? 準備室の扉が開いている。何故、あんなに沢山の…ドライアイスが……。ざっと見た感じ…20kg位か……何に使うんだ…)
スタスタスタスタ、バタンッ
『いーがーわーくん!! さっさと実験してきなさい! それに隣散らかってるからあんまり見ないでー。全日制の先生が何かするらしいからさ。』
(ほぅ…瞳孔が収縮している…)
『まずは水にドライアイスを入れるやつ、水と油で層になってるやつにドライアイスを入れるやつで実験してください。』
『おぉ!! 水の方から白い煙出てきた』
『つめてーw』『机も冷えてるーww』
『冷たくて草』
『水と油の方は、泡はでるけど煙は出てこねぇ』
『へぇー、不思議~』
『はい、ちょっと前向いてねー。この実験から分かることは何かな? 』
拗らせ系 素直になれない探偵 @tai6
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