魔王ちゃんは隠し事ができない〜魔王と秘密の友達になりました。

るるあ

密偵辞めて、魔王とお友達になりました。


 「おまえ、ニンゲンなのか〜。じゃあ仲良くしたら、大叔父陛下に怒られるかな?……でもいいやつみたいだし、我と友達になれ!そうだ!秘密の友達というのはどうだ?」


 両親に隠れて入った森の奥。出会ったのは、私と同い年くらいの、オデコにルビー色の宝石が埋まっている女の子だった。


★★★★★★★★★★★★★★



 アタシはキラ。

 この学園に生徒として潜入し、魔王の存在を探っている。

 

 「♪とうさま〜とかあさま〜に♪まおーなのーは〜ヒミツに〜しなさい〜と〜♪」


 私の里は、魔族に潰されたと聞いた。

 私は、亡き一族の為にこの身を捧げる事が生きる意味なのだと、お頭に腕輪と共に誓った。


 「言うゎるぇてぇぇ〜♪」

 「(言われてー)」

 「完璧にいぃ〜やってぇ〜♪」

 「(パーフェクトー)」

 「おっともだっち♪100人♪つくるんだあぁあ〜♪ボエー!!!」

 「(ボエ…?)魔王ちゃん様、そこはちょっと違います。」

 「えっ!?この歌の締めをこれにすれば、おーでぃえんすどっかんどっかんだって父様とニンゲン陛下が言ってたぞ、ヴァンプ!」

 「…そうですか(アイツら後でシメル)」


 …。

 上手く潜める場所だと思っていたが、変な女子二人組が寄ってきてしまった。

 奴らが居ない場所まで避難しよう。

 


 さて。

 この国は魔族国とは友好的な立場で、生徒同士の交換留学もしているのだそう。

 今年度は次期魔王とされている女性体が、

その身分を隠して入学しているらしい。


 何人かの実力者に目を付けてはいるが、魔王クラスの者はまだ見付からない。

 ……万が一でも、あの変な女子達は、ないだろう。


 高度な授業の合間、昼休み。

 一息入れるこの時間はきっと隙ができるはず。この木の上からならば気付かれず観察できる…

 「こんにちは!なのだ〜!!!」


 背後からあの変な女子!?全く気配に気が付かなかった…!!

 「……こんにちは。」


 「なんでこんな所に隠れているのだ?何か面白い物でも…はっ、まさか、隠れんぼ中!?邪魔をしたのだ!」


 すまなかった!さらばだ〜!!……と叫びながら、凄い勢いで消えて行ってしまった。


 ……変なやつだが、油断ならない相手だ。


 それからも、どこに潜んでいてもあいつは私を見つけ、満面の笑顔で手を振ってくる。

 国ではトップクラスの隠業師だったのだが……自信無くす。


 「元気ないな?ほれ、まおちゃん印のルビークッキーじゃ。お食べ!」

 「…ありがとう。」

 真ん中に赤い果実が埋まったクッキーを貰ってしまった。

 …ありがとう、なんていつから言ってないのだろうか。


 「そう言えば、名乗っておらなんだ。我はまお…、まおちゃんなのだ!」

 「…私は、キラ。」

 「なぁなぁ、これで我らは友達じゃな!」

 「えっ…」

 危うくクッキーを落とす所だった。


 「お主が初めての友じゃ!」

 「でも、いつも一緒にいる子は…」

 「あれは従者…家臣…眷属?ナマモノではないし、ちょっと違うのじゃ。」

 困った顔の後、ふっと真顔になった。


 「おっと、あやつに見付からない内に!サラバ!また会おうぞ!」


 ……消えた。


 ……私も、初めての友達だよ、まおちゃん。

 初めての…友達?

 「っぐぅ!!」

 腕輪から全身に、呪いが絡みつく。


 ……そう、私は一族の為の存在。個ではなく、お頭の名の元にあるもの。


 それだけ。




 学園の寮、自分の部屋に帰ると、お頭の式神が文を持ってきた。

 目ぼしい人物について等、暗号にして送り返す。


 ……判っている。この任務が、私の生きる意味。個人等という物は、ない。


 何だか心が晴れず、窓の外を見つめる。


 ??

 まだ夕暮れのはずなのに、窓の外は闇?

 「おい、サイガの里の陽炎。」


 「、っく?!」

 首にヒヤリとした感覚…刃物?

 まるで生きていないかのように、全く気配がない?!しかもわたしの正体が…。私は、ここまでか。

 自決用の呪が封じてある腕輪を握ろうとしたが、その前に触れられた手で腕輪を粉砕されてしまった。

 ガクッと力が抜け、気が遠く…な、る………。


 「ふん、他愛もない。魔王ちゃん様が友と認めなければ、サッサと排除したものを…面倒だ。」


 気を失ったキラを肩に担ぎ、不死者である彼女は消えた。


★★☆★★


 “キラ、生きていればきっと、いい事あるからね”

 “私達の事は気にするな。お前の心に住んでいるのだから”


 “秘密のお友達にも、よろしくね。”


 「ゔ……?」

 父上?母上?私の身代わりになったのでは…?


 “ふん、役立たずが。まぁ、このスキルなら娘でも捨て駒くらいには使えるか。”


 「お、かしら…?」

 お頭…あいつ、母上に横恋慕してたクソ叔父上だったのか?

 じゃあ、じゃあ今まで私がしてきた事は……!?


 「はい、トーントーンじゃ〜。」

 ぎゅっと、柔らかく抱きしめられた。

 トーントーンと言いながら、背中を優しく叩かれる。


 体中から、何か重たい物が剥がれていく。



 気がついたら、寮の自室でベッドに横たわっていた。頭は半覚醒状態だが、目は開かない。

 「(なぁヴァンプ、キラは大丈夫かの?起きてるのかの?)」

 「(魔王ちゃん様、洗脳は魔王ちゃん様が完璧に解いておりますから、何も心配はないでしょう。)」

 「(本当かの?ニンゲンは脆いと父から聞いておるし、お前などそもそも生きておらんではないか!目が覚めるまでは不安じゃのう…。)」


 ……こんなに心配してもらった事などないから、どうしていいか判らないし、なんだかむず痒くて恥ずかしくて、目を開けられない………。


 その後、私の様子を間近でじっと見ていた二人が、恥ずかしくて真っ赤になっていった私に慌てて、寮母さんを呼んできたり魔族国のゲートを開いて現在の魔王夫妻(まおちゃんの父母)を呼んで診察させ、さらには初めての友達だと紹介したりとバタバタしたけれど、


 とにかく、私はまおちゃんと友達になったのだった。


 ちなみに私の両親、魔族国の不死者の村で第二の人生を送っていて、私の存在とその境遇を知ったまおちゃんが、色々頑張ってくれたらしい。


 本当に、色々ありがとうございました、と最上級の礼で跪いたら


 「だめじゃ!友達はそんなことしないんじゃ!もう秘密の友達ではなく、本物の友達なのだからなっ!」


 と、立たされて、柔らかくハグされた。


 うん、もう、秘密じゃないね!




 

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