第2話 無理やり異世界転移

「どこだここ?」


つい、そう呟いてしまう


「戸塚殿、よくぞ参られた

我らが賢者の子孫よ」


デカいテーブルの向こう側にいる髭のオッサンが話し出した


オレは立ち上がる


目の前にはスパイが作戦会議に使うようなモニタ付きのでっかいテーブルが配置されていた

部屋の中は薄暗く怪しい雰囲気だ


オッサンの方を見る


軍服に軍帽をかぶったそのオッサンは、胸に勲章をたくさんつけていて、

後ろの女が大佐とか呼んでいたことから階級が高いことも伺える


ジロジロ観察していると、その髭軍服のオッサンが口を開いた


「賢者の子孫の貴殿には、我が国でスパイとして働いてもらうことになっている」


「賢者?」


「戸塚殿のおじいさまのことだ」


「じいちゃんがなんだって?」


「おまえ、いつまでとぼけてんだ?ぶっ殺されたいのか?」


後ろから金髪女が抱きついてきて、またオレの頭に銃口を突きつけてきた


「、、、」


オレは口を閉じる


「おまえ、この20年どうやって生活してきた?」


「いや、普通のサラリーマンとして、、」


「はん!普通のサラリーマンが転移魔法で楽々通勤か?」


「それは、じいちゃんから貰った鍵で、、

便利だったから、、」


「そうだよなぁ?その鍵は便利だろうさ

でも、誰にでも使えるもんじゃねぇ

おまえ、魔法のこと知ってんだろ?」


「、、、」


「だんまりかよ

それによぉ、転移魔法なんて特殊な魔法、俺たちの魔力感知に20年もひっかからないなんてどうかしてるぜ

どうやって隠してきた?」


「さ、、さぁ?

なんとことやら?なんじゃらほい?」


オレはアホ、オレはアホだ


「あくまでとぼける気か、おもしれぇじゃねぇか」


そんな、おもしれぇ女、みたいな目で見られても困ります、いやん


「でもよ、おまえ、今日はなんで俺に見つかったかわかってるか?」


「、、、」


オレの魔力隠蔽は完璧だったはず

たしかに、この女に見つかったことが解せなかった

しかし、表情には出さないようにする


「おまえの転移魔法の行き先が

"理想の女"のところに繋がるように、我が国の魔法師団で細工をしたのさ

だから、おまえは俺の前に転移してきた」


「は?理想の女?」


「そうだ、つまり、おまえの理想の女は、俺ってことだな」


後ろから抱きついている女の顔を確認すべく、首を横に回す


ニンマリと凶暴な笑みを浮かべていた金髪碧眼美女と目があった


「、、いや?オレ、清楚な子の方が、、好みで、、」


最後の抵抗だった、おまえはタイプじゃない、とやんわり伝えて下を向く


「おい、、こっち向けよ、、」


ゴキッ

頭を掴まれて、無理やり方向を変えられる


「んむっ!?」


そして無理やり唇を奪われた


「ぷはっ

どうだ?俺の唇は?勃起してんだろ?」


唇を離すと同時に、ニヤケ顔で卑猥なことを言ってくる


「おまえ、なんなの、、」


「テメェの理想の女だ」


「ちがうもん、、」


オレは初キッスを奪われた衝撃で、それくらいの反論しかできなかった


「おほん!

そろそろ戸塚殿への初任務について、説明してもよろしいか?」


「あぁ!いいぜ大佐!」


「よくないが?」


「本任務はツーマンセルにて実行する

戸塚殿には、パートナーとしてアイリガル少尉がつく

協力して任務に当たってくれ」


オレの言葉は無視されて話が進む


「アイリガル少尉?」


「俺のことだ、明(あける)」


「いきなり呼び捨てかよ」


「テメェは俺の旦那様だからな」


「勝手に決めるな」


「これは決定事項だ、俺はテメェを逃がさねぇ、死ぬまでな

それに、、」


「なんだよ、、」


「これから、テメェの【秘密】を暴くのが楽しみでしょうがねぇ

どうやって20年も隠れ続けてきたのか

スパイの技術としちゃあ最高峰だ

全部丸裸にしてやるよ」


アイリガルが、ぺろりと舌なめずりをしてオレを見てきた

獰猛な猛禽類のような目で


「では、戸塚殿の初任務だが」


髭軍服のオッサンがさらに話を進めようとする


「いやいや!だからスパイなんてやらないって!オレ帰る!」


「あぁ、うるせぇなぁ、黙って大佐の話聞けよ」


抱き着きながら首を絞めてくる


「ぐぐぐ、、うるせぇのはおまえだっつの!」


「はぁ?お仕置きが必要だな、旦那様」


カチャリ


アイリガルがオレの眉間に銃口をつきつけた

何度目かの経験だ

さすがに慣れる


「ふ、ふっふーん、どうせ撃たないんだろ?

オレのこと必要だもんな?

それにえっと、アイリガルさんだっけ?

お、おおお、オレのこと好きなんだろ!?

だから!」


「、、死ね」


Bang!


このやろう、本当に撃ちやがった

ちょっと美人でオパーイが大きいからって、調子にのりやがって、、


オレは最期にそんなことを考えていたような

いなかったような


こうして、オレの人生はここで終わった


完?

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