猫を飼ってみた

@eightpine

第1話

年齢が50代に入ってしまいました。小柄なこともあって実年齢より若くみられがちだったから、自分ではずっと若くてかわいいつもりでいたけど実際にこの年齢を迎えてみたら、年齢相応にしか見えない自分、少しずつ太ってきて、40代頃まで維持していた体重も体形もずいぶん緩んで見た目も変わっていることにもようやく自覚ができてきた。人生のパートナーも、気づけば肩があがらない、胃が痛いとずっと言っている・・そうか、年をとるってこういうことかと実感をもって知った。


幸いなことに育児を経験させてもらえたので、子供が親の持ち物ではないことも、希望通り成長してくれると期待してはいけないことも、成長する本人達の意見も意志を尊重しないと本人達にいびつさを与えてしまいかねない怖さもいろいろ知った。本人達の意志が形をとるのに時間がかかることも、それを忍耐強く待つこともようやくわかってきて思ったのは、「子離れしないと自分の人生を生きられない」だった。いろんなことから「自分は自分」と自立するために、猫にそばにいてもらって愛情を猫に注ぎ、子離れを手伝ってもらおうと思ったのだった。


まず一匹目。ペットショップで一目惚れしたキジトラ柄の女の子。キジトラ柄はとても慎重な性格らしい。評判通り慎重派の女の子で我が家に慣れるのに時間はかかったけれど、とても可愛い女の子となった。我が家は日中は留守が多く、帰宅するといつも玄関まで迎えに来てくれるのがうれしくもあり、寂しさの表れのようで切なくて、お仲間を増やそうと今度はホワイトタビーの男の子を迎えた。相性はよく見たつもりだったが、猫の素人にはよくわかっていなかったらしく、ホワイトタビーの男の子はいわゆる「俺様」だった。いろんな試行錯誤を繰り返して平和に過ごす模索を続ける毎日となり、当初狙った「子離れを手伝ってもらう猫達」という目論見ははずれ、「いかに猫様達が平和に平穏に暮らせるか」に心を砕く毎日が待ち受けていることになった。


猫様達はケンカするのに忙しく、帰宅しても玄関まで迎えにきてくれることもなくなった。気が紛れているようでよかったとほっとしていたが、去勢手術しているにも関わらず男の子は発情するらしく毎晩女の子を襲うようになり、どうしたものかと頭を抱える毎日となる。ちょうど思春期を迎えている子供達の目の前で繰り広げられるこの事態にずいぶん頭を抱えて、結局夜はケージで寝てもらうことで夜中のドタバタ惨劇は収まりを見せた。


猫様達を暮らすようになって2年を迎えた。猫様達の惨状を子供らは笑ってみていた。親が思うより子供のほうがおおらかなのかよくわかってはいないのか、それさえつかめないけれど「これは見せたくない」と思った惨劇も案外あっさりと受け入れて対応をとっていた。猫様達は年々家族に甘えられるようになったり、リラックスした様子も時間もずいぶん増えてきたように思う。

結局、猫様達でさえ自分の思うようにはならなかったけれど、やはり生き物には意志があること、猫様達が自覚をもっているかどうかはさておき、幸せを追求する生き物であることなんかを何度目かに勉強させてもらうこととなった。思う通りにならないものばかりであることも何度勉強しても忘れてしまって、また猫を増やそうかと思ってしまう自分もいたが、結局同じことの繰り返しになることも、ようやくまた自覚ができてきた。もう迷わずに、子供は子供、猫様は猫様、私は私で自立したいものだと思う。


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