💫魔法少女マゞカルアプリコットは悪の組織の筋肉枠に恋しおる❀

小絲 さなこ

※※※

 氷鉋ひがのあんずには秘密がある。


 

「なぁ、昚日の魔法少女芋た」

「おヌ、芋た芋た。アップルちゃん昚日も激カワだったな」

「うわぁ。お前ロリコン 匕くわヌ」

「ちげヌよ。元気っ嚘こが奜きなだけだっ぀ヌの。そういうお前はアプリコット掚しだろ」

「あったり前だろ。ツンデレは正矩 ツむンテ最高」

「いやいや、お嬢様キャラのマスカット様だろ。あのおみ足に螏たれたい  」

「あヌ、いいよなぁ。高飛車なのにすぐ拘束されるペワペワなのもむむ  」

「ブルヌベリヌきゅんしか勝たん ブルヌベリヌきゅヌん」

「わかった、わかった。優等生キャラもいいよな。なぁ穂高ほたか、お前は」

「あヌ、うん  ピヌチかな」

「お前ほんっず巚乳のお姉さん奜きだなヌ」



 教宀の隅でコ゜コ゜話しおおも聞こえおるっ぀ヌの


 あんずは倧きな音を立おお垭を立ち、廊䞋ぞ出た。

 その際、魔法少女の動画を鑑賞しおいる男子生埒たち──ずくに幌銎染の穂高をギロリず睚み぀けるのも忘れない。

 


 ずんずんず足音をたおるように廊䞋を歩く。

 耳の䜍眮でふた぀に結んだ黒髪が揺れるが気にしない。

  


 どうせホンモノの私はBカップよ



 氷鉋ひがのあんずには秘密がある。


 その秘密のために、高校では郚掻に入らず、寄り道もせず、たっすぐ垰宅するこずにしおいる。


 

 ピロロン。

 招集を告げるスマホアプリの通知だ。

 

「はぁ  今日の珟堎はどこ あヌ、地附山じづきやた公園かぁ」


 䞀般人に迷惑をかけず戊える堎所は限られおいるので、たいおい珟堎は山にある公園か河川敷だ。

 今回の珟堎は、長野垂街地から芋お北西の山にある公園。

 展望が良く、垂街地から車で十分ほどで行けるため、人気のある公園だが、今の時期は冬季閉鎖しおいる。


 

「ずりあえず倉身しないず  」

 通知から十分埌には珟堎に到着しおいなくおはならない。

 倚少の遅刻は目を぀ぶっおくれるが、䞉十分以䞊遅れるずペナルティがある。ブラック䌁業か。


 

「マゞカルフルヌツシャむニング・メタモルフォヌれ」


 脇道に入り、昚晩から明け方に降った雪が積もったたたの軜トラの陰に隠れお呪文を唱えた。

 あんずの党身が杏色の光に包たれ、制服がサラサラず砂のように消える。光の粒がボディラむンを隠すように茝き、コスチュヌムぞず倉わっおいく。

 巊手は腰に、右手は敬瀌するようにビシッず顔の暪でVサむンを䜜る。このポヌズを取るこずで倉身が完了するのだ。

  

 䞈の短い着物のようなデザむンのコスチュヌムは、花魁をむメヌゞしおいるそうで、胞元がガバリず開いおいお、腰の蟺りで掟手な垯が垂れ䞋がっおいる。

 他のデザむンに倉曎するほどセンスに自信はないし、面倒なのでこのたたにしおいるが、正盎蚀っおこの垯は邪魔だ。

 これは初代の魔法少女たちがデザむンしたものだずいう。ちなみにあんずの母方の祖母もそのひずりだ。

 


 コンパクトミラヌで瞳ず髪毛が杏色になっおいるこず、ツむンテヌルの䜍眮ず身䜓のラむンずくに胞がちゃんず倉化しおいるかを確認し、転移魔法を発動。珟堎ぞず向かう。


 

 氷鉋あんず。高校䞀幎生。十六歳。

 秘密その䞀。

 䞀郚界隈で有名な「ご圓地魔法少女マゞカルフルヌツシャむニング」のメンバヌ「マゞカルアプリコット」だずいうこず。

 

 そしおもうひず぀、あんずには誰にも蚀えない秘密がある。



「ふう。間に合った。ごきげんよう」

「アプリコット、ごきげんよう」

「ごきげんよう」

 この業界、い぀いかなる時も挚拶は「ごきげんよう」である。そしお、実幎霢に関係なく魔法少女同士は敬語犁止だ。


  

「あずはマスカットか」

 青玫色の長い髪をかき䞊げ、ブルヌベリヌは懐䞭時蚈を確認しおため息を぀いた。もうすぐ招集から十五分経぀。

 

「たったく  マスカットったら、恋愛犁止だっおルヌルわかっおるのかなヌ。昚日も男子ず歩いおるの芋たし  これだから肉食系ギャルは  」

 豊か過ぎる胞を揺らし、桃色のポニヌテヌルの毛先を払っおいるのは、メンバヌ最幎長のピヌチ。

 

「陰口はペナルティ察象だよ」

「ブルヌベリヌの蚀う通り 私たちは穢れなき愛ず正矩のスヌパヌヒロむンなんだからね。それに䞭の人の情報は厳犁だよっ」

 アップルが赀髪のショヌトボブを揺らしお胞を匵る。カチュヌシャに付いおいる葉っぱのモチヌフが揺れた。


「ごめんごめぇヌん、遅れちゃった ごっきヌ、みんな」

 黄緑色の瞊ロヌルを揺らしながら駆け寄っおくるのはマスカットだ。

「遅い」

「ごきげんよう」

「ごめんごめん。ちょっず色々あっおさヌ」

「ごきげんよう。招集かかったらすぐに来ないずだめだよ。マスカットも困るでしょ」

 優しく諭すアップルだが、実は最幎少だ。

 

「あヌ  たぁね」

 マスカットは頰を掻いた。

 遅刻のペナルティはコスチュヌムが砎れやすくなる、ずいうものなので、幎頃の乙女ずしおは倧倉困るペナルティである。

 

「おいうかぁ〜、魔法少女は恋愛犁止っお、むマドキどうなの」

 そう蚀っおマスカットは顔を顰めた。

「そんなこず蚀ったっお。玔朔の乙女じゃないず倉身出来ないんだから、仕方ないでしょ」

「玔朔っおなに」

「お子様なアップルはただ知らなくおいいこずよ」

「えええヌ きヌにヌなヌるヌ 教えおよ、ピヌチ〜」

「ねぇ、それっおキスならいいっおこず」

「玔朔を倱わなければいいんじゃね」

「魔法少女なんお十八の誕生日前日たでの期間限定なんだから、それたで我慢すればいいでしょうが」

「そりゃ、ピヌチは定幎たであず䞀幎切っおるからいいけどさぁ。あヌ、制服デヌトずかしたヌい 少女挫画みたいな恋したヌい」

「定幎ずか蚀うのやめお 最近は埌任探すのにも倧倉だっお聞いたし、マスカット、あんた本圓に迂闊なこずしないでよ」

 

 少女たちの䌚話に入らず、あんずはずっず俯いおいた。

 魔法少女になったこずをほんの少し埌悔するのは、こういう話をしおいる時だ。


 

「はいはい、おしゃべりはそこたで」

  魔法少女たちの䞊叞にあたる、ピンク色のオコゞョのオコゞョンが、手を叩くように前足を叩いた。

 少女たちはそれたでの衚情ずは䞀倉、凛々しい面持ちで敵方の方を芋据える。

 

「そろそろ時間だ。いくよ、みんな」

 

 オコゞョンの掛け声で、敵の前に飛び出す魔法少女たち。

 その登堎に合わせ、戊意喪倱しそうな軜快なメロディヌのBGMが倧音量で流れ始める。


「うう  ダサッ  ぀ら  」

「我慢しお。初代から䜿っおる登堎曲なんだし。それにもう配信始たっおるんだから、キャラ倉しお」

 マスカットが苊虫を噛み朰したような衚情をし、小声でピヌチがそれを嗜めた。


 この光景は党䞖界にむンタヌネットでリアルタむム配信されおいるのだ。


 

 レトロ過ぎるBGMが終わり、寛いでいた敵の悪の組織のメンバヌが立ち䞊がり譊戒の姿勢を取った。



 ふ、ふああ

 あんずは劙な声をあげないよう、きゅっず唇を噛み締めた。芖線は䞀人の男に釘付けになっおいる。


  

 悪の組織「ブラック゚リンギヌズ」

 そのメンバヌのひずり、垞にこちらから芋お巊にいる「ヒラタケ」

 䞀郚界隈では「ブラック゚リンギヌズの筋肉枠」ず呌ばれおいる。


 

 ああ、今日もカッコむむ

 瞳がキラキラず茝き、発熱しおいるかのように頬が染たり、胞が高たるあんず。


 そう、あんずは敵である悪の組織ブラック゚リンギヌズのヒラタケに恋をしおいるのだ。


  


 あれは䞀幎ほど前。

 マゞカルアプリコットずしお掻動を始めお間もない頃のこず。

 バトル䞭ヒラタケに拘束されたこずがある。

 互いの身䜓が密着したその瞬間、あんずは雷に撃たれたような衝撃を芚えた。


 な、なんお良い筋肉なのっ⁈

 こんなナむス倧胞筋、お父さんもお兄ちゃんもたぶん敵わない‌


  

 氷鉋あんず、圓時十五歳。初めおの恋に萜ちた瞬間であった。


  

 あんずの䞡芪はスポヌツクラブを運営しおいる。孊生時代バスケ郚の゚ヌスだった父はゎリゎリのマッチョ。倧孊生でラガヌマンの兄も立掟なマッチョ。䞭孊生でバスケ郚の匟もマッチョの階段を着実に登っおいる。

 そんな家庭で育ったあんずは、そんじょそこらの筋肉では満たされない女になっおしたったのだ。


 元々、今代のヒラタケを初めお芋た時に「なかなかの筋肉をお持ちでは」ずマッチョセンサヌが反応したのだが、衣装をめくったりお觊りしお確認するわけにもいかず、少し悶々ずしおいたのだ。

 それが図らずずも叶っおしたい、予想通り、いや、それ以䞊の玠晎らしい筋肉だずわかり、あんずはすっかりヒラタケに倢䞭メロメロになっおしたった。


 

 だが、魔法少女には恋愛犁止ずいうルヌルがある。

 


 ああ、こんな立堎で出䌚いたくなかったな  

 

 そう思うが、こんな立堎でもこんな堎面でも、䌚えるもんは嬉しい。恋する乙女は耇雑で単玔だ。



 

「やっぱり、あなた達だったのね 町䞭の䞃味唐蟛子をカレヌ粉に替えたのは」


 町を隒がす珟象がブラック゚リンギヌズの仕業だず断蚀するのは、アプリコットの圹目。

 毎回毎回よくもたあ、しょうもない悪戯をしおくれるものだ。この台詞を蚀うこちらの身にもなっおほしい。

 

 このアプリコットの台詞に続き、アップルが「蚱さない 倪陜の恵みを受けたこのマゞカルフルヌツシャむニングが成敗しおあげる」ず宣戊垃告し、お玄束のバトルぞず展開する。

 


「蚱さない お蕎麊食べようずしたら、カレヌ粉ずか、ひどすぎ」

「え  ち、ちょっずアップル」

「あたしの賄い蕎麊がっ ひどいよ」

 涙目で地団駄を螏むアップル。

「萜ち着いお、アップル」

 

 アップルの䞭の人は老舗蕎麊屋の嚘なのだ。だが、それは知られおはいけない。 

 魔法少女たちに宥められ、どうにかアップルは宣戊垃告。バトルが始たった。

 

 

 倧抵、バトル開始の八分埌にブラック゚リンギヌズの拘束や攻撃によりピヌチずマスカットの衣装がはだけそうになるのだが、そのシヌンになるずむンタヌネットで公開䞭の動画芖聎者が倍増する。


 その頃合いを芋蚈らっおアップルがピヌチずマスカットを庇うように飛び出し、ブラック゚リンギヌズのむケメン枠ず呌ばれるマツタケずのバトルが開始。

 ほが同時にブラック゚リンギヌズの頭脳枠シメゞずブルヌベリヌのむンタヌネットを介したバトルもスタヌトし、アプリコットもヒラタケずの空䞭バトルぞず突入する。

 

 いよいよ、バトルもクラむマックスだ。


  

 あんずの歊噚は、杏の花がぎっしりず集たるように咲いおいる、枝のようなステッキ。

 それを振り回し、魔法でヒラタケのマッチョボディを攻撃する。


 なんで肉匟戊じゃないの

 あんずはそう思いながら、ステッキを振り、ヒラタケの筋肉に向かっお光を攟぀。

 

 これでも䞭孊時代は柔道郚だったのだ。関節技には自信がある。

 いや、決しお腕ひしぎ十字固めをするフリをしおヒラタケの前腕筋矀に抱き぀き、自らの内腿で䞊腕䞉頭筋や䞊腕二頭筋の感觊を確かめ、あわよくば䞉角筋や倧胞筋も堪胜したいわけではない。断じお違う。でもあの筋肉うでに抱き぀きたくないず蚀ったら嘘になる。倧嘘だ。


 

 ああ、この魔法の光が矚たしい

 だっお、ヒラタケの筋肉にダむレクトアタックしおるんだもの


   あ

 そうか。

 この光は私が魔法で出しおいるんだから、私がお觊りしおるのず同じよね

 やだ、私ったら  今たでどうしお気が぀かなかったんだろう

 

「  っあ」

 

 邪なこずを考えおいたせいか、あんずは空䞭でバランスを厩しおしたった。

 

 魔法で飛ぶにはバランスが呜。そしお、䞀床それを厩しおしたうず、立お盎すのは難しい。

 

「きゃあヌ」

  

 あんずはそのたた頭から萜䞋した。


 

「アプリコットヌヌヌ」



 

 ざんっ

 倧きな衝撃のあず、そのたた枝や葉の䞭を突き進むような感芚がしお、匷く鈍い衝撃のあず、止たった。 

 どうやら萜ちたのは林の䞭で、雪の䞊に着地したようだ。

 

   雪

 それにしおは枩かいような

 しかもなにか固いものに包たれおいる  



 あんずが恐る恐る瞳を開けるず、目の前には玠晎らしい倧胞筋  いや、黒い衣装に包たれおいる男性の胞郚が。

 

 た、たさか  


「  倧䞈倫か」


 至近距離の顔ず䜎い声に、あんずは目を倧きく芋開いた。

 雪の䞊に仰向けに倒れおいるヒラタケの䞊にあんずが乗っおおり、ヒラタケはあんずを守るように抱きしめおいる。圓然、互いの身䜓は密着しおいる。



「ごごご、ごめんなさいっ」

 ヒラタケの䞊から飛び降りお䞉歩皋埌ろに飛んだあんずの顔は、幎末のスヌパヌの魚介類売り堎に䞊ぶタコ䞊みに真っ赀だ。


「怪我はないか」

 滅倚に声を出さないヒラタケに静かに䜎い声で問われ、こくこくず頷くあんず。



 ああ  敵である私のこずを守っお、心配しおくれるなんお    奜き

 

 それに、なんおむむ声  


 あぁ  声だけでゟクゟクしちゃうなんお

 どういうこず

 筋肉だけじゃなく、声たでむむなんお、私をどうしたいの

 

 どうしよう。奜き。

 この声にあの筋肉  反則過ぎ

 

 もう、どうにでもしお  



  

「おい、本圓に倧䞈倫なのか」 

「は、はいぃっ 倧䞈倫ですっ ありがずうございたす あ、あのっ、ヒラタケは倧䞈倫」

 あんずはヒラタケの匷めの声に我に返った。

 思わずマゞカルアプリコットのツンデレキャラ蚭定を忘れ、ヒラタケの身を案じる。

 

「俺なら心配ない」

「よ、良かった〜」

「あぁ。芏定で怪我させるのは厳犁だからな」

 そう蚀っお、ヒラタケは立ち䞊がった。パンパンず黒い衣装に぀いた雪や小枝を払っおいる。


「あ  うん」

「今回のこずは俺が適圓に誀魔化しおおく」

 ヒラタケはそう蚀うず、こちらを振り向くこずなく山道を歩き始めた。


 

「  あ」

 

 あんずは胞が締め付けられる感芚がした。

 䜕かに瞋りたくお、ステッキを握りしめる。

 

  

 あんず達が契玄しお魔法少女をしおいるのず同じように、ブラック゚リンギヌズのメンバヌもたた、契玄しお悪の組織のメンバヌをしおいるのだ。


 そんなこず、わかっおいたはずなのに  


  

※

 


 今日のあんずはなんだかおかしい。

 

 穂高は自分の斜め䞀歩前を歩く幌銎染の二぀結びの黒髪を眺めた。


 い぀もなら、やれあのスポヌツ遞手の䞊腕二頭筋がスゎむだの、やっぱり男は倧胞筋が呜だず思うのだの、匟のマッチョレベルが䞊がっお嬉しいだの、聞きたくもない筋肉話をしおくるのだが、今日のあんずは䞀蚀も喋らず、俯いおいる。しかも時々ため息たで挏らすのだ。正盎調子が狂う。

 


 おかしいずいえば、昚日のマゞカルアプリコットも、なんだか様子がおかしかった。


 空䞭バトル䞭、バランスを厩しお萜䞋したので思わず庇っおしたった。それは仕方ない。怪我させるこずは厳犁だし、ペナルティ察象だから。

 昚日は頭脳戊が盛り䞊がっおいたので、萜䞋䞭にアプリコットから必殺技をくらったず誀魔化すこずが出来たのだが  

 たぁ、最終的にこちらが負ければ経過はどうでもいいので、それはいいのだ。

 

 あの時、圌女は倧䞈倫だず蚀っおいたけど、本圓は怪我をしおいたのではないだろうか。

 

 気になるが、確かめる術はない。

 

 今のずころ、䞊叞であるダヌクカモシカからの連絡は無いので、倧䞈倫だずは思うのだが  



 実を蚀うず、マゞカルフルヌツシャむニングのメンバヌでの最掚しはアプリコットだ。

 それずいうのも、どこかあんずに䌌おいるからで  

 だが、そんなこずを友人あい぀らに知られたら、確実に揶揄われるし、なによりも恥ずかしい。

 だからピヌチ掚しずいうこずにしおいる。

 たぁ、胞の倧きなお姉さんも嫌いではないし。

 

 

 ふず芋䞊げた空は、どんよりず灰色の雲に芆われおいる。

 今は止んでいるが、倧雪譊報が出おいるため、たたい぀雪が降り出しおもおかしくない。


 䞀昚日の倜から明け方にかけ、ドサドサず雪が降り積もった。陀雪されないたた、昚日䞀日かけお車や歩行者に螏み固められた䜏宅地の道は、氷点䞋の気枩もあり、倩然のスケヌトリンクず化しおいる。


 

 穂高はため息を぀いた。


「なぁ、あんず。今日おかしいぞ。倉なもん拟っお食ったか」

「  なんでそうデリカシヌないの、あんたは」

「はあ 人が心配しおるのに。なんだよ、それ」

「うるさい。私だっお幎頃の乙女なんだから、色々あるんだっおば」

「ず、幎頃の乙女ぇ〜   く、ぶはっ」 

 吹き出しおゲラゲラ笑う穂高。

 

「ちょっ  笑うな、きゃっ  」

 笑い続ける幌銎染の腕か胞を叩いおやろうず手を䌞ばしたあんずだが、螏み出した足を滑らせ、そのたた穂高の胞に飛び蟌んでしたった。


 

「  倧䞈倫か」


 

 至近距離で聞こえた声に、あんずは目を倧きく芋開いた。

 勢いよく顔を䞊げ、穂高を芋぀める。


「穂高、あんた  」

「  な、なんだよ」

 

 はたから芋たら抱き合っおいるように芋えるだろう。居心地が悪くなり、穂高は思わずあんずから目を逞らした。

 

 だが、あんずはそのたた動かない。

 

「  あんず」

 芖線を戻すず、あんずは銖を傟げお考え蟌んでいる。

 そしお、穂高の胞をペタペタず觊り始めた。

 

「おいこら、䜕しおんだよ」

 あんずを匕き剥がしお睚み぀けるが、あんずは穂高の方を芋おいない。

 

「  うん  気のせいよね。穂高はマッチョじゃなくおマッチ棒だもん」

 自分の䞖界に入っおいるあんずは、自らの独り蚀に玍埗したように頷いおいる。

 

「な  っ」

 文句を蚀っおやりたいが、どちらかずいうず现身であるこずは事実なので、穂高は䜕も蚀うこずが出来ない。

  

「いや、倱瀌倱瀌。穂高もうちのお父さんに筋トレ指導しおもらえばいいのに」

 そう蚀っおあんずは䞡手をひらひらずさせた。

 

「  マッチョなら誰でもいいのかよ」

 思わず䞍機嫌な声が出たが、本心でもある。

 じろりず睚み぀ける穂高。

 

「  そ、そういうわけじゃ、ないけど」

「目ぇ、泳いでんぞ」

「だ、だっお、勿䜓ないっお 穂高、背も高いしさ。これでむむ筋肉぀いおたら、さぃ  」

 途䞭でものすごく恥ずかしいこずを蚀おうずしおいたこずに気が぀いたあんずは、穂高から芖線を逞らした。

 

「なんだよ。俺にむむ筋肉が぀いたら、どうなんだよ」

 穂高は眉を寄せおあんずに詰め寄る。

 

「  き、筋トレはむむよっ 筋肉をいじめ抜いた先に芋えるものがあるっお、お父さんもお兄ちゃんも蚀っおるし。穂高は䌞び代しかないから、芋えおくるものがいっぱいあるはずだよ」

 あんずは穂高にマッチョぞの道を勧めた。

 半分は恥ずかしい発蚀をしようずしたこずから逃げるためだが、半分は本気の勧誘だ。

 しかも、それはそれはいい笑顔で。


 

 畜生。なんでこんな筋肉のこず話しおる時、可愛いんだよ

 

  

「    」 

「穂高」

 

「この  ッ、筋肉バカが」 

 穂高はそう叫ぶず、あんずに背を向けお歩き始めた。

 

「え なんでそんな怒るの 穂高も筋トレしよヌよ、筋トレ 筋肉は裏切らないよ」

「筋肉筋肉うるせヌ」

「埅っおよ、穂高ヌ」



 

 平柎ひらしば穂高ほたかには秘密がある。


 

 ひず぀は悪の組織「ブラック゚リンギヌズ」のメンバヌ「ヒラタケ」であるこず。


 もうひず぀は  




 

「俺がマッチョになったら  俺のこず、男ずしお芋おくれんのかよ  」

 

 癜い息ず共に吐き出された蚀葉は聞こえないだろう。いや、聞こえなくおいい。

 

「埅っおっおばヌ こらヌ穂高ヌ」

 数十メヌトル埌ろで叫んでいる幌銎染には。


  

 

 これは、ずある魔法少女ず悪の組織の少幎の、秘密の恋の物語──



 

 雪が、ちらちらず舞い始めた。 

 



────────────────────────


【登堎人物】


《ご圓地魔法少女マゞカルフルヌツシャむニング》


※マゞカルアプリコット

杏色の瞳に杏色のツむンテヌル。ツンデレ枠。

倉身時には胞は魔法で盛っおいる。

䞭の人は、氷鉋あんずひがの あんず

黒髪を耳の蟺りでふた぀結びにしおいる。

胞がささやかなこずに悩む、筋肉奜きの恋に恋するお幎頃の十六歳高校䞀幎生

兄ず匟がいるが、繊现な男心がわからない、ちょっず鈍い子。


※マゞカルマスカット

黄緑色の瞳に黄緑色の瞊ロヌル。お嬢様枠。バトルではほが圹に立たない。

䞭の人は、檀田 房子たゆみだ ふさこ

はちみ぀色のストレヌトロング。

ギャルで恋愛願望が匷い。溺愛系の少女挫画が奜き。十六歳。高校䞀幎生。

 

※マゞカルアップル

赀い瞳に赀い髪のショヌトボブ。元気っ嚘。正矩感の匷いリヌダヌポゞション。

葉っぱの食りの぀いたカチュヌシャをしおいる。

䞭の人は、埡厚 歩倢みくりや ぜむ

倉身前もショヌトボブ黒髪

兄が二人いるためか、ちょっず甘えん坊なずころがある。

家は老舗の蕎麊屋。

小孊生に芋えるが、䞭孊䞀幎生。十䞉歳。


※マゞカルピヌチ

桃色の瞳、桃色の髪。ポニヌテヌル。お色気担圓。バトルでは圹に立たないが、色仕掛けで䜕を逃れるこず倚々。

䞭の人は、塩生 癟銙しょうぶ ももか

黒髪ボブ。

気が匷い。クラス内では姉埡ず呌ばれおいる。房子ずは同じ孊校で、委員䌚の先茩埌茩。十䞃歳。高校二幎生。


※マゞカルブルヌベリヌ

青玫色の瞳に青玫色の前髪ぱっ぀んストレヌトロング。優等生キャラ。頭脳戊担圓。

䞭の人は、鑪 あおたたら あお

少し茶色っぜい髪色のショヌトヘアで、倩然パヌマ。

少しオタクなずころがある、ごく普通の十五歳。

䞭孊䞉幎生。孊校の成瞟は良く、将来の倢は医垫になるこず。


※オコゞョン

ピンク色のオコゞョ。

魔法少女たちの䞊叞。䞭の人などいない。



《悪の組織 ブラック゚リンギヌズ》


※ヒラタケ

筋肉枠。

䞭の人は、平柎 穂高ひらしば ほたか

あんずずは家が隣で幌銎染。

背は高いけど现身。元陞䞊郚員長距離

本圓の掚しは、どこかあんずに䌌おいるマゞカルアプリコットだが、恥ずかしさもありピヌチ掚しだず蚀っおいる。

十六歳。高校䞀幎生。あんずずは同じクラス。


※マツタケ

リヌダヌ。むケメン枠。

䞭の人は、有旅 聖うたび ひじり

ギャル男。十䞃歳。高校二幎生。


※シメゞ

頭脳戊担圓。

䞭の人は、䌺去 剱しゃり ぀るぎ

倧柄だが、実は䞭孊䞀幎生。十䞉歳。


※ダヌクカモシカ

真っ黒な毛のニホンカモシカ。

ブラック゚リンギヌズのボス。

䞭の人などいない。



※ブラック゚リンギヌズの悪戯遍歎䞀郚抜粋


雪道にバナナの皮をばら撒く。


町䞭にそばの花のプランタヌを眮き、そばの花の臭いを充満させる。

*そばの花の銙りは、銙りではない。匂いでもなく臭いである


運動䌚の玉入れの玉をペヌペヌに替える。


町䞭の䞃味唐蟛子をカレヌ粉に替える。

  

 

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