最後の闘い
第28話 新しい仲間
「おい!レイ!起きろ!」
「……んっ……」
レイはゆっくり目を開ける。すると、シンの姿と重なったのだろう。彼の名前を呼んだ。
「…………シン、さん……?」
「またそいつの名前かよ……。ちげぇよ。俺は
「琥羽、様……?…………っ!?」
「おぁっ!?急に起きるなよ!ぶつかったらどうすんだよ」
「す、すみません……」
「…………はぁ……ほら、ハンカチ。泣いてるから、拭いときなよ。ほっぺたカピカピになっちゃうぞぉ」
レイはあまり状況を把握しきれていないようだった。そして自分が泣いていることにも気づいていなかった。
レイは琥羽から渡されたハンカチで涙を拭いた。
「しっかしどんな夢見てたんだよぉ〜。
レイは琥羽だけでなく、皐達にも迷惑をかけてしまっていたことに気づいて、申し訳なさそうに下を向いた。
「…………ンな顔すんなってぇ〜!だぁいじょうぶだからさっ!顔洗ってこい!俺の一番弟子に会いに行くぞ!」
「(一番弟子……?)」
誰だろう、と疑問に思いながらレイは琥羽に言われた通り、顔を洗いに洗面所に向かった。
「あ、レイちゃん!」
「え、あ、シエル様……」
「おはようレイちゃん!今どういう状況かわかってない顔してるねぇ!質問受付中だよ!」
「え、えっと……な、なぜここに居らっしゃるのですか……?」
「レイちゃんが妖狐だと教えてくれてから、実は二日経ってて……」
レイは驚いた。まさか二日も眠っていたとは思ってもいなかったからだ。
「も、申し訳ありません……」
「謝んなくていいのー!それでね、急にレイちゃんが倒れちゃって、琥羽が受け止めてたんだけど……皐ちゃんが長居しちゃって申し訳ないからってことで一旦解散ってことになってね!」
「今は私たちが琥羽さんのと皐さんの家にお邪魔させてもらってる所ですよぉ!」
「ゆ、優莉ぃ!」
レイはな、なるほど……と納得しながらシエルと優莉と少し話し、顔を洗いに洗面所へ向かった。
レイの朝の支度も終わり、リビングへ向かう。
「レイ!おはよう!気分は大丈夫?」
「さ、皐様……、おはようございます。……はい、ご心配をおかけしてしまったようで、申し訳ありませんでした……」
「いいのよそんなの!」
ニコッ、と優しい笑顔を浮かべて皐はレイを包み込む。するとそこに隼がやってくる。
「しゅ、隼様……、おはようございます……」
「あぁ、おはよう。体調は大丈夫か?とても魘されていたぞ」
「は、はい……。特に問題はありません……」
「そうか、それならいい」
隼はそう言ってレイの頭を撫でた。
「しゅ、しゅぅぅぅぅぅぅん!!??」
「んだようっせぇな静かにしろ!」
「いや、お前……レイのこと、……す、すすすす、すぅぅぅ!?」
「おい琥羽。一旦死ぬか?そんなんじゃねぇよ」
「はぁぁぁ……よし」
琥羽は息をふぅぅ、と吐いて隼の元へ駆け寄り、目をきゅるんとさせてこう言った。
「はい♡問題ありませ――――イッタッ!!」
ピーンポーン
少し経つとインターホンがなった。琥羽は隼に殴られたところを擦りながら玄関に出る。すると外から元気な男の子の声が聞こえた。
「琥羽兄さん!おはよーござます!」
「おぉ!
その元気な男の子は琥羽と一緒にリビングへ入ってきた。
「あぁ!隼兄さんだァ!おはよーござます!」
「あぁ、おはよう。今日も元気だな」
「えへへ」
「あのお姉さんに自己紹介してやれ」
するとレイと桜樹の視線がバチッと合う。男の子はトテトテと走り、レイの前に駆け寄る。
「えっと、初めまして!僕は
「あ、え、えと……レイ……です……」
「……レイお姉さん、どうしてそんなに悲しい顔をしているの?」
「えっ……」
「おいこら桜樹!」
桜樹の純粋な疑問に戸惑い、レイは目を見開いた。琥羽は慌てて桜樹の口元を手で覆い、きまり悪そうにレイを見た。
「悪い、レイ。こいつまだガキだから許してやってくれ」
「あ、いえお気になさらず……」
そんなに暗い顔をしていたのでしょうか……、と思いながら、レイは時の流れに任せることにした――――。
琥羽と桜樹は二人仲良く近くの公園へ遊びに行った。隼や皐達は家に残り、ゆっくりとくつろいでいる。
「ふぅ、やっぱり静かなのはいいですねぇ。落ち着きます」
「琥羽はうるさいから……私の兄がごめんね」
「でもその分明るくなるから楽しいよ?」
他愛もない話を隼や皐達は話していた。すると、皐はレイの様子を見てレイに話しかける。
「そういえば、レイに琥羽と桜樹のこと話してなかったわよね」
「は、はい。あまり聞かされてませんが……」
「琥羽と桜樹は“師匠と弟子”みたいな関係なの。桜樹が琥羽に弟子にしてくれって頼んだらしいのだけど、琥羽もおちゃらけた性格してるし軽い気持ちで引き受けたのよ」
「お互い楽しいらしいし、それはそれでいっかって私たちは思ってるんですけどねぇ〜」
皐の説明に優莉が付け足した。
「あいつ桜樹になんか教えてんの?師弟とか言ってるけど遊んでるとこしか見たことねぇんだけど……」
「そ、そこは目を瞑っておこうよ、隼……」
「はぁぁ……色々と不安だ」
「隼さんは琥羽にいつもちょっかいかけられてウザそうにしてるのに、こういう時は気にかけてくれるのなんだかんだ琥羽のこと好きよね」
ふふふ、と皐は笑い、隼は頭をかきながら呆れたように言う。
「まぁ、放っておけるような奴ではねぇな」
「ふぅん……」
「(に、人間には色々事情があるのですね……)」
レイは戸惑っているような表情で皐と隼を見守っていた――――。
「たっだいまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ただいまですー!」
もう少し声の音量下げてくれ……、と隼は琥羽と桜樹を出迎えた。
「で、どんな話してたの?」
「別になんもしてねぇよ」
「なんもしてないこたァないでしょ……」
「…………お前と桜樹の関係性についてレイに説明してた」
「あーねなるほどなそゆことなへぇ……それだけ?」
「それだけ」
「うそん……」
レイはコントのような会話を聞きながら、桜樹を見定めるような目で見ていた。
「(なにか、ある……隠してることが、あるような気が、する……)」
じぃーっと桜樹を見つめていると、シエルが声をかけてきた。
「レイちゃん?そんなに桜樹を見つめてどうしたの?」
「え、いや……すみません。特に何も無い、です……」
「そう?ならいいけど……すっごい顔してたよ?」
そう言ってシエルはレイの顔真似をする。
「あ、そーだ。レイ!ちょっと、いい?」
琥羽は何かを思い出したようにレイを呼んだ。レイは言われるがまま、琥羽の後を着いて行った。
「あ、あの……どうかなさったのですか……?」
「いや、その、このお守りのことなんだけど……」
そう言って琥羽は以前レイから渡された袋口に小さな鈴がついたお守りだった。
「その、これ……たまに震えんだよ」
レイは驚いた。
「(震えるって……魔族に反応してるってこと……しか考えられないのですが……まさか……)」
あまりにも衝撃的すぎたのか、レイの顔が青ざめた。
「お、おいレイ!大丈夫か……?」
「いえ、すみません。……あの、震えるのはどういった時に震えだしましたか?出来るだけ詳しくお願いします!」
レイが焦った様子で琥羽に問う。琥羽はこんなに焦った表情をするレイを見るのは初めてだった。そして声量もいつもより大きい。それに気づいた皐達はどうかしたのか、と気になって琥羽とレイの様子を見に来ていた。
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