第24話 仲の深まり

 ボディチェックをするかのようにレイの体を触るシエルを皐は止める。




「ちょっと、触りすぎよ」


「わわっ!ごめんねレイちゃん!ベタベタと……嫌だったよね、ごめんねほんとに!」


「……いえ、お気になさらず」




 ごめんねぇ、と申し訳なさそうにシエルは手を合わせる。




「それで、人間ではあるが人間では無い、というのはどういうことだ?」


「あ、えっと〜」




 隼の問いかけに琥羽はレイに目配せをする。言ってもいいのか許可をとるのを待っているのだろう。




「(……妖狐だということは伝えてもよろしいでしょうか……。琥羽様のお知り合いということですし……)」


「レイ、みんなに言ってもいい?」




 皐がレイに問いかける。




「…………はい」


「ん。ありがと」




 皐はレイに承諾を得たあと、静かにこう言った。




「実はね、レイは妖狐なの。獣耳や尻尾は隠してあるらしいんだけど……」


「妖狐ってほんとにいるんだ……」




 皐のあとにシエルが何故か感動していた。




「ねねね!レイちゃん!獣耳とか尻尾とか今出せたりする!?」


「あ、え、えっと……獣耳なら……」




 そう言うとシエルはパァァと目を光らせ、レイに期待の眼差しを向ける。優莉も密かに期待を寄せていた。レイは困惑しながらも獣耳を生やす。その瞬間にシエルや優莉は目を光らせて興奮していた。




「わぁぁぁ!すごいすごい!ほんとに妖狐だァ!」


「触ってもいいですか!?」


「シエルも触る!!」



 珍しく優莉が興奮していて、いつものふわっとした口調ではなくなっている。レイはされるがまま獣耳を触られていた。




「ふわふわぁ〜!」


「とても気持ちがいいですぅ!」




 シエルと優莉は鼻をフンフンと鳴らしながら、レイの獣耳を触っていた。




「おい、もうやめてやれ」




 隼がレイの獣耳を触っているシエルと優莉に辞めるよう、声をかけた。二人は慌ててパッと手を上にあげた。




「ごめんねぇ……つい夢中になっちゃって……えへへ」


「あぁいえ、お気になさらず……」




 シエルと優莉はレイに謝った。レイは特に何も思わなかったので二人を慰めた。




「………………」




 するとレイは隼が自分のことをジッと見つめているのに気づいた。レイは不思議に思って、隼を見返し、首を傾げた。




「あ、あの……どうかされましたか……?」


「あ、いや、なんでもない。気にするな」




 気にするな、と言われたのでレイは特に何も触れないでいた。




「そういえばさっき、私の同族とか言ってたけどそれはレイさんと同じ妖狐はこういう袖口が広がった服を着ているってことですよね?その他にももっとレイさんのこt」


「シエル、レイちゃんのこともっと知りたいな!」


「……私が話しているときに割り込まないでいただけますか?シエルさん?」




 優莉がシエルに対して笑顔を浮かべているが、シエルはどこかしら圧を感じた。




「わぁぁぁ怖いよぉ……ごめんね優莉ぃ……」


「よろしい!」


「琥羽も隼もああやって落ち着いて会話してくれたらいいのに……」


「おーい皐、それはどういうことカナー?」




 キャッキャと話しているシエルと優莉を、皐と琥羽は静かに見ていた。そしてその間も隼はレイのことをずっと見つめている。すると皐はレイに話しかけた。




「レイ、私もあなたのこともっと知りたいし、もっと仲良くなれたらいいなって思ってるの。言える範囲でいいから、レイ自身のことをもっと教えてくれないかしら」


「……そ、それはよろしいのですが……あ、あの……」




 とても言いづらそうに言った。




「……しゅ、隼様をッ……どうにかしていただけないでしょうか……」




 全員がパッと隼の方を振り向いた。隼は一気に自分に向けられる視線に驚き、ビクッとした。




「な、なんだよ」


「なんだよじゃねぇよ!隼レイのこと見すぎ!」


「いっ!?」


「いっ、てなんだよいっ、て……アッハハハ!」




 琥羽は軽く隼の背中を叩いた。隼は頭をかきながらレイを見てこう言った。




「………………その、お、俺も……獣耳、触って、いいか……?その、俺は男だからお前が嫌なら……全然嫌と言ってくれて構わないが……」


「ぶふっ……ふっ……んぐっふふ」


「…………おい琥羽、殴るぞ」


「いや、ふっ…………あっははははは!」


「琥羽、表出ろ。ツラ貸せ」


「あっははははは!隼お前、んぐふっ……」




 お腹を抑えて涙を流しながら爆笑する琥羽とそれにイラッとする隼。そして隼のまさかの言動に笑いを堪えるので必死でブルプルしている皐とシエル、そして優莉。何が面白いのかわかっていないレイ。どうすることも出来なかったので、レイはもう一度獣耳を生やし、隼の目の前に立った。




「…………………」


「…………い、いいのか……?」




 レイは何も答えないが、逃げないということは触っても良い、ということなのだろう。隼はゆっくりとレイの獣耳に触れた―――。








 隼はとても機嫌がいい。待ってました、というように琥羽は隼に抱きついたりしている。




「しゅーーーーーん、構ってよぉぉぉぉぉ」


「…………何がしたいんだよ……」


「んーやっぱそのまま動かないで〜」


「…………」




 琥羽と隼の絡みを皐達はヒソヒソと見ながら話している。




「なにあれ、付き合ってるの?」


「隼さんが何も言わずにされるがままなの珍しいですね」


「やっぱり2人だけの何かがあるのね!」




 静かに見守る皐と優莉、シエルは何故か目をキラキラさせていた―――。

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