第22話 友達
レイと皐は共に午前中を過ごし、昼ごはんを食べてゆったりしている。時刻は午後一時半。皐は誰かと電話をしていた。
「え?今から?なんでよ。…………ふーん……、なるほど。それなら行ってもいいけど、昨日の今日だしレイ疲れてるかもでしょ?…………はぁ、わかったわ。レイに聞いてみて大丈夫そうならそっちに向かうわ。うん。はーい」
皐は電話を切った後、ため息をつきレイに話しかける。
「レイ。もし疲れてなかったら琥羽の知り合いを紹介したいと思うの。どう?体疲れてない?」
「はい。問題ございません」
「そう。じゃあ琥羽の元に向かいましょうか」
そうして二人は準備をして、琥羽の元へ向かうのであった。
皐が車を運転して約一時間。とある家に着いた。琥羽と皐の家とは真反対の家が目の前に建っていた。琥羽と皐の家は木造ではないが、家の周りに花壇があり、どちらかと言うと和風の雰囲気があった。しかし、目の前にある家は琥羽と皐の家と同じで家の周りに花壇があり、特徴は同じなのにどこか洋風の雰囲気が感じられた。そしてそこには琥羽の車も止まっている。皐とレイは目の前の家に入っていった―――。
中に入ると、琥羽の笑い声のみが聞こえてくる。
「また琥羽がつるんでる……」
皐は呆れながらリビングだと思われる扉を開ける。
「あぁ!来た来たぁ!」
そう言いながら琥羽はレイに、にへらぁと笑いかける。レイは琥羽に戸惑いながら琥羽に肩を組まれている一人の男性に目を配った。その男性はウザそうに顔を歪ませながらレイに浅くお辞儀をした。そしてレイもそれにお辞儀を返す。
「またウザ絡みしてるのね……飽きないの?」
「飽きるわけないでしょぉー!?」
「……どうして?」
「え〜?反応が面白いからァ!」
肩を組まれている男性はウザがってはいるが、いつもの事なのか何も反応せずにしれっとしている。
「(反応、してますでしょうか……)」
そしてもう二人、小柄な女性がいた。一人は眼鏡をかけ、もう一人はドレスのようなワンピースを着ている。琥羽のウザ絡みを遠い目で見ている眼鏡をかけた女性と、クスクスと笑って見ているワンピースの女性。そして呆れたように見る皐。レイは何もすることができず、ただ突っ立っていた。
するとワンピースを着ている女性はレイに気づくなり、レイの元へ駆け寄り話しかけてきた。
「初めまして!私、
「……お初にお目にかかります。レイと申します」
シエルは満足そうにレイに笑顔を向けた。すると眼鏡をかけたもう一人の女性がレイの方に歩み寄ってきた。
「私は
レイは二人に再度お辞儀をした。シエルという人は明るくて元気な人、優莉はふわっとしていて落ち着いている人だなとレイは思った。
「お!自己紹介終わったかぁ〜?」
「はい、終わりましたぁ」
琥羽の問いかけに優莉がふわっとした口調で答える。
「んじゃ、次は」
「隼!じこしょーかいして!」
琥羽に肩を組まれていた男性はべりっと剥がし、レイの方へ近づく。そして右手を自分の胸に当て浅くお辞儀をしながら、名乗った。
「俺は
「れ、レイと申します」
「レイ、だな。よろしく」
レイはぺこりとお辞儀をした。
「しゅーん!お前硬すぎィ!もうちょい笑えよぉ〜」
「うるせぇ、俺の勝手だろ」
「んもぉぉぉん隼ってば怖ぁぁい♡」
琥羽のちょっかいに腹が立ったのか隼はボコっと琥羽を殴る。痛ぁ、と悶える琥羽をよそに隼はふんっと怒ったように鼻を鳴らす。
「(こ、これが友達……)」
レイがそう思った途端、皐がレイに言う。
「今あれが友達……って思ったでしょ。あれは琥羽と隼さんだからできるのよ」
「は、はぁ……」
「そうですよ。私たちでもどうして付き合いが続いてるのか分からないんですから」
「二人だけの何かがきっとあるのね!シエル気になる!」
皐や優莉、シエルの助言によってレイの友達という謝った認識は避けられた。
「それで?本題があるんじゃないの?琥羽」
「そうそう!隼!」
皐に話を振られた琥羽は隼に話しかける。
「レイのワンピース作って!!」
「…………は?」
琥羽は隼に説明をしている。
「――――という事でしてどうですか隼君、レイのワンピース作ってくんねーかなぁ…?」
「……すぐには完成しないが、それでもいいなら……まぁ作ってやる。」
「ありがとぉ隼〜!」
隼に了承を得た琥羽は隼に飛びつく。ひっつくな、と言われながらも隼の顔に琥羽はスリスリしている。そしてお決まりで慣れているのか、優莉が琥羽を慣れた手つきでべりっと引き剥がす。
「で、どんなやつを作ったらいいんだ。」
「淡い緑系の落ち着いた感じのワンピースを作ってあげて欲しいの。一緒に買い物に行って新しい着物を買うまでは二着しか持ってなかったのよ。」
「なるほどな。今はもう足りてるのか?」
「新しい着物を買ったから一応は足りてるわ。」
「そうか。わかった。レイ、どんなデザインがいいとか何か要望はあるか?」
そう聞かれたレイは黙ってしまった。あまりそのようなことは考えていなかったからだ。
「も、申し訳ございません。あまり思い浮かばないです。」
申し訳なさそうにレイは隼から目線を外した。そうか、と小さく返事をした隼は顎に手を当てて、少し考える。
「ねぇ、そのデザインのことなんだけどさ、シエル達に任せてみない?」
ニシシ、とシエルは隼とレイに笑いかけた。
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