第21話 仲間
一旦昼飯を挟もうと、レイ達3人はフードコートに向かった。それぞれ好きな物を食べ、一服していた。
「ふぅ…。それにしてもなぁんか違うんだよなぁ。レイなら似合うと思ったんだけど……」
「派手なものが多いから雰囲気的にもレイには合わないのよね…」
「もうちょっと大人しめの色……」
「な、なんか申し訳ありません……。私なんかのために…」
しゅんとしているレイを琥羽と皐は慌ててフォローに入る。
「いや違うんだよ!なんていうか…レイは派手な感じじゃなくて落ち着いた大人っぽい色が似合ってんだけど…そういうドレスが無くて…」
「あったとしても、露出がねぇ…。レイが悪い訳じゃないのよ。私たちがやりたくてやってることなんだから!あまり気にしないの!」
「……は、はい…」
琥羽と皐はホッと胸を撫で下ろした。
「んーなぁ。レイって何色が好き?」
「……え、?」
「いや、せっかくだしその色も選べばいいんじゃねぇかなって思って」
「確かに私たちが似合うと思って選ぶのもいいけど、レイの服になるのだから、レイにも選んでもらわないとね」
「……私の、好きな色…」
レイは一生懸命考える。好きな色……。
『レイ!これお前にやる!』
『これは?』
『髪飾り!綺麗だろ!この色!レイに似合ってると思ってな!』
『あ、ありがとうございます。ちなみになんという色なのでしょうか?』
『あぁ、俺も細かいことはよくわかんねぇけど、“――系”…』
「……緑系…」
レイがは過去を思い出しながらボソッとつぶやいた。それを聞いた琥羽と皐はレイに聞き返す。
「緑系?それがレイの好きな色か?」
「…はい。以前と言ってもだいぶ前の話になるのですが、私の仲間に似合ってると言われたことがありまして…」
「緑系……確かにレイに合うわね。緑の中でもどっちかと言うと淡い感じの緑色かしら」
「よっしゃ!じゃあ淡い緑系のやつをメインに探そうぜ!」
レイは嬉しく感じた。自分のためにここまでしてくれるなんて、流石老夫婦が育てただけある。レイは老夫婦の優しさと琥羽と皐の優しさを重ねながら、琥羽と皐との買い物を過ごした。
***
レイ達はとりあえず着物を先に買おうと、着物屋へ向かっている。
「なぁなぁ!そういえばその緑系のやつが似合うって言った奴ってどんな奴なんだ?」
「確かに…レイのお仲間さんのこと気になるわ」
「……琥羽様に似ているところがあります」
「え!!俺に似てんの!?へぇイケメン?カッコイイ?」
「琥羽…。自惚れすぎ…」
「……とても陽気な方でした。性格もよく似ていらっしゃいます」
「……え、俺その人の生まれ変わりとか有り得ちゃうんじゃね?」
「何言ってんのよこいつ」
レイはふと考えた。
「(生まれ変わり…。いやでも、彼らの遺体はまだ見つかっていないのです。大丈夫…まだ生きてる…どこかで…)」
レイはそう自分に言い聞かせ、琥羽と皐に着いていった。
「よし、とりあえず着物買えたな。一件落着ぅ!」
「本来の目的は果たせたわね」
「わざわざありがとうございます…」
着物が買えたということで、レイ達はもう一度ドレスを探しに行くついでにブラブラと色んな店舗を歩き回っていった。
夕方になり、レイは疲れ果てていた。
「レイ、大丈夫?ちょっと疲れちゃったわね」
「久しぶりに沢山歩いたので…」
「じゃ帰るか!ドレス見つけられんかったけど、着物は買えたから問題ねぇだろ!」
「沢山時間をかけてくださって、ありがとうございます」
「そんなのいいってぇ!んじゃ帰って飯食おーぜ!」
そうしてレイ達は家に帰ることになった―――。
***
―――その夜―――
琥羽と皐は眠りについているため、家の中も外もとても静かになっていた。老夫婦の家にいた時と同様、レイは窓から外を眺めている。レイの美しい紫色の瞳と金色の長い髪が月明かりに照らされていた。
「(そういえば私の髪飾りは何処にあるのでしょうか…。あの日から全然見当たりません…)」
レイはため息をついた。仲間から貰った大切なものを無くしてしまっている悲しさと、仲間が見つからない寂しさと不安で気持ちが沈んでいた。やはり、どれだけ今優しく接してくれている人がいても、どれだけその人がかつての仲間の1人に似ていたとしても、その仲間本人ではないと意味が無い。その人の代わりなんていないのだから。
「(しかし、優しく接してくれて親切にしてくれているからこそ、守らなければならないのです)」
そろそろ寝ようとレイは布団に入った。そしてゆっくりと目をつぶり、夢の世界へ入っていった。
レイは夢を見ている。レイの視界に広がる暗闇。周りには何も無い。ただ真っ暗闇の中にレイはたった1人で気づけばそこに突っ立っていた。レイはとりあえずまっすぐ歩いてみる。
どれだけ歩いただろうか。歩いても歩いても特に見える景色は変わることは無い。レイもそのまま変わらずまっすぐ歩いていく。すると遠く離れたところに薄くぼんやりとした人影が見えた。レイはその人影に向かって小走りで向かう。その人の判別ができたところでレイはその人の名前を呼ぶ。
「シン!!」
その人影はゆっくりとレイの方を振り向く。するとそこには方目が抉られ、口が裂け、血が色んなところから垂れ流されている。レイは驚き、怖がりながらも仲間であることには間違いないのでゆっくりと顔についている血を拭き取ろうと手を伸ばす。すると、
―――ゴンッ
鈍く重い音と共に首が落ちた。そして顔はレイの方を向いて動きを止めた。目はレイをじっと捉えている。レイは恐怖でパニックに陥った。
「ハァッ…ハァッハァッ……」
目を開けると天井が見える。レイはさっきのは夢だったのだと認識した。時刻は朝の七時前。冬なので朝日が登るのが遅い。窓から少し赤い朝日の光が差し込んでいた。少し気分が悪くなり、水を飲もうとリビングへ降りる。するとリビングに小さな明かりがついていた。レイはゆっくり扉を開ける。
「うぉあっ!?」
扉を開けるとそれに反応して驚いた様子の琥羽がいた。
「うぉぉレイか。ビビったァ〜、皐かと思った……」
「す、すみません。驚かせてしまって…」
「いいよいいよ(笑)。不可抗力だしな!しょーがないしょーがない!」
そう言って琥羽は鞄になにか物を入れていく。
「どちらに行かれるのですか?」
レイは気になり、琥羽に問う。
「ん?あぁ~ちょっとダチんとこ行ってくる。」
「だ、ダチ…?」
「そ!俺の!とーもーだーち!」
「そうなのですね。寒いのでお気をつけて…」
「おう!あんがと!」
じゃあ皐のことよろしく〜と言い、琥羽は家を出ていった―――。
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