大文字伝子が行く218

クライングフリーマン

『投稿警察』(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 青山たかし・・・元丸髷署生活安全課警部補。EITOに就職。江南(えなみ)美由紀と結婚した。EITOガーディアンズ(EITOボーイズ)所属。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田(小田)慶子・・・やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 高島軍平・・・伝子の1年後輩で、翻訳部元部長。

 新里警視・・・あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。

 矢代正夫・・・フィットネスMFC会員。

 スコット・ガーランド・・・Metal社日本支社社長。

 橋爪警部補・・・普段は、丸髷署生活安全課勤務。EITOの「片付け隊」の任務も担っている。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。社会人演劇団を主宰しているが、年2回の公演活動以外は、建築事務所で勤務している。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後4時。矢代正夫宅。

 山村編集長と高島が、あつこと共にやって来た。

「私が狙われる?」高島が笑うと、「相手はテロリストかも知れない。警察はね、『民事不介入』と言って、『起こるかも知れない』事件には手を出せないの。あなたを保護するのは、既に犠牲者が出ているから。ビットコイン、どうした?」と、あつこは詰問した。

「変な感じだが、小遣い入ったと思って・・・使ってしまいました。」「換金したサイトは?」「もう、ありません。ネットで探して・・・。」

「詰まり、『受領証』を受け取ったことになりますね、警視。」高島は、今は事務所の事務員をしているだけあって、分かりが早い。

「換金サイトも、あなたが殺人依頼をしたサイトも繋がっているのよ。あなたは勿論、あなた以外にも犠牲者がいるかも知れない。あなたは、たった1万円で殺人の片棒を担がされ、おまけに殺されかかっている。何が捜査に役に立つか分からない。さあ、話して頂戴。私達はあなたの味方よ。助けたいのよ。」

 矢代は、山村の必死の説得に項垂れた。

「年が明けてすぐでした。演歌歌手で有名な、熊本由奈さんが亡くなられたのをご存じですよね。」「勿論、知ってるわ。ファンも多いと聞いている。」

 矢代は、山村に促され、話を続けた。「実は、私はBase bookのグループに複数参加していて、お悔やみの積もりで、彼女のヒット曲の歌詞を書いて、祖母もファンだったのですが、祖母と私の思い出話を書いた上で『ご冥福をお祈りします』って書いたんです。ここまでは、何も無かったんですが、追投稿してきた方が『ルール違反なのに』と私をくさしたんです。何ですか?と尋ねたら、重複投稿は禁止!って罵倒してきました。それで、管理人さん、詰まり、グループの責任者に『何が重複しているのか教えて貰えないと改善出来ない』と投稿したんです。すると、『訃報は、コロニーで無くなったヨツムラ・ケンさん以降、爆発的に増えるから禁止した。あなたの投稿は違反だけど、今回はスルーした』と返って来ました。」

 矢代は、涙を流しながら、話を続けた。「訃報って、人が亡くなったというお知らせでしょ。弔意は、人の死をいたみ、とむらう気持ちだと思うんです。確かに彼らが排除しようとした、面白半分目立ちたい半分の投稿もあるかも知れないけど、『きりがないから止めにした』って言うんです。管理人も訃報を書いたとか、言い訳していました。それなら、管理人が代表して書くから、皆さんはその投稿に追投稿して下さい、って言えばいいじゃないですか、って返して退会しました。似たようなグループに、『ひょっとしたら、ここもそういう方針ですか?』って管理人さんに呼びかける投稿したら、『何で管理さんに尋ねるんだ、常識だろう。規則に書いてあるじゃないか。』って凄い剣幕で怒る人がいました。また、がっかりしました。」

「矢代さん、どういうグループですか?系統は?芸能関係?」と、あつこは尋ねた。

「いえ、『昭和を懐かしむ』系です。もう、この系統のグループには、投稿するのを止めようって決めましたが、その矢先、『あなたの恨みを買います』サイトが現れたんです。」

「根底はフィッシング詐欺と同じね。ちょっと複雑だし、殺人と絡めるのは初めてだけど。」と、あつこは溜息をついた。

「警視。鴨葱は分かったけど、敵はお金出してまで殺人したいの?」と、山村はあつこに尋ねた。

「前に、おねえさまとも話したことが、あるんだけど、組織は『日本を混乱に貶めて分断させる』のが理想なの。詰まり、ダイナマイト抱かせて殺すのも、精神的に参らせるのも、ウイルス撒いて流行らせるのも、根っこは同じ。いつか、日本を奴隷にするためにあらゆる手段を使って攻撃してくるのよ。」

「恐ろしいわあ。」と山村は感嘆した。

「で、私は・・・。」と、恐る恐る尋ねる矢代に、あつこは言った。

「囮になって。」「え?」「完璧に守るから。警察の力だけでは出来なくても、警察とEITOが連携すれば可能よ。」矢代は気絶した。

 午後5時。EITO本部。司令室。

「気絶させて、どうするのよ、あつこ。団塊の世代はナイーブなのよ。」と、伝子は笑った。

「だって、おねえさま。囮使う以外ないと言ってたじゃない?」と、あつこは抗議した。「ああ、2番目。3番目の犠牲者が出ているからな。」

 同じ頃。午後5時。Metal社日本支社。応接室。

 新里が、社長のスコットと対峙している。

「詰まり、Base book利用者の方が、ネット上で『イジメ』に遭った。それにテロリストがつけ込んだ、とおっしゃるのですね。グループは『届け出制』で、各グループのルール・約束事はお任せしています。ですが、利用者が不満を感じたりする場合は、『管理者報告』と『Metal報告』で訴えることが出来ます。おっしゃる通り、『イジメ』の温床になるリスクもありますのでね。」

「矢代さんも、後で、他の利用者に『Metal報告』にすれば、中立的に対処してくれた筈だ、と教えられた、と言っているようです。だが、後の祭り、です。矢代さんは、犯人逮捕に協力して貰っていますが、似たような事案・案件が発生すると思われます。」

「おっしゃることは、よく分かります。他の会社なら『検討します』で終わりでしょうが、以前、『トップインフルエンサーの事件』で、利用者にも警察にもEITOにもご迷惑をおかけしています。今、直ちにお約束出来る事は、まずグループに対して『行きすぎたルール』にならないよう努力するように指導すること。そのために、『ルールの改訂』はMetal社に報告すること。また、利用者には、『見やすい位置』に配置する、グループの規約蘭を参照の上、参加するよう、『定期的に』広告を出させましょう。グループ運営者には、『混乱』に過剰反応する人もいたのですね。ただ、『ルールだ、違反だ、出て行け』は『ファシズム』に違いないです。ルールより前にマナーやエチケット違反です。大袈裟な言い方をすれば、『投稿警察』です。やり過ぎでしょう。今後も、社員からいいアイディアがあれば、採用します。勿論、利用者の提案も、実現可能なことは採用します。」

「ありがとうございます。犯罪抑止に繋がれば幸いです。それにしても、スコット社長の日本語は流暢ですね。」

「曾祖母が日系でしてね。曾祖母から日本語を習いました。」新里はリップサービスかな?と思ったが黙って頷いた。

 午後8時。とある、居酒屋の外。

 囮になった、矢代が、ほろ酔い気分で歩いていると、どこからか走ってきた男が、どんと体当たりした。が、からぶりに終った。

 稲森が投げ縄で矢代を引っ張ったからだ。

 つんのめった男の肩に、ブーメランが当たった。

 男が立とうした時、馬越が背負い投げをした。

 すかさず、なぎさと日向が両腕をつかんで押えた。そして、飯星が、薬を飲ませて無理矢理水筒の水を流し込んだ。

「薬を盛ったのか?」という男に、「逆だ。解毒薬を飲ませた。今死んで貰っちゃ困る。」と、伝子は冷然と言い放った。

 なぎさが、長波ホイッスルを吹いた。

 ほどなく、愛宕と橋爪警部補がやって来た。

「ご苦労様です。エマージェンシーガールズ!!」

 同じ頃。午後8時。やすらぎほのかホテル東京。

 高島が、依田と福本に土下座している。

「もう、いいよ。高島先輩。大文字先輩からも編集長からも聞いている。今頃、囮になった矢代も救出、殺人犯人も捕まっているよ。」

「大文字先輩のデコピン食らったんでしょ。俺達は、それ以上出来ないよ。」と、福本も言った。

 小田社長と慶子が、離れた所で笑って見守っていた。

「やっぱり、部活はいいね。」「同感。」

 午後10時。伝子のマンション。

 遅い夕食を終えた伝子に、高遠は言った。

「今日、求めてもいい?」「求めてもいい?下級生のくせに。どんとこい!」

「どんとこい?こんな夜中に相撲取るの?」「あ・・・紙相撲ね。」と、高遠は綾子に返した。

 伝子が、トイレのドアを力強く閉める音がした。


 ―完―



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