2

 大地は、なんだかむしゃくしゃしていた。

母親の澪から色々話しかけられるのがわずらしくってつい

「ほっといてくれよ!」と怒鳴ってしまった。

澪が成績の事で何やら言ってくるのは分っていたが正直「うるさいな」なんて思ってしまう。

自分でも小さなことに敏感になってしまい、傷つきやすく、それをうまく表現できずに悶々としていた……。

時間が経てば「母さん、ごめん」心の中では詫びていた。


 ある日、中学の同級生の潮から「塾に行かないか?」と誘われた。

大地は自分の成績が落ちてることも気になっていたので、潮から塾の話を聞いて心が動いた。

個別指導で丁寧に教えてくれるらしい。

一方、母親に経済的な負担はかけたくないとも思っていた。

そんな思いで自宅に帰ると、澪はキッチンで夕食の準備中だった。

ふと、見るとリビングのテーブルに進学塾のパンフレットが置いてあった。

それは潮が行っている塾だった。


「母さん、これって?」


「あぁ~、それね、潮くんのお母さんから教えてもらった塾なんだけど大地もどうかなって思って!潮くん、この塾に行くようになって成績が上がったんだって!」


「でも金かかるんじゃない?」


「バカね、塾に行くお金くらい大丈夫よ。大地がその気なら行ってみたらいいわよ」


 それから、大地はすぐにその塾に行き始めた。

大地を担当してくれる先生は、現在大学生だがアルバイトで講師をしているらしい。

名前は青木翼。

爽やかな笑顔が印象的で、大地はすぐにその先生に好感を持った。

教え方も凄く丁寧で分かりやすい。

最初こそは緊張していたが、そのうち何でも相談できる先生となっていった。

大地は一人っ子と言うこともあり、なんだか頼りがいのある兄貴ができたような気がして、塾の時間が楽しみにもなっていた。

それをきっかけに、大地はどんどん成績もよくなっていった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る