私、退魔師の才能が有るかも
四葉翠
第1話 ビルの中からの脱出
「あれ…私なんでこんな所にいるんだっけ?」
いつのまにか廃棄されて数十年は経ったかなように思える建物の中に私は居た。
何故か少し明かりがついているので真っ暗では無いのが少し不気味に思える。
「不気味…早く家に帰ろう」
出口を探して歩き回ってみる。
「あれ?ここってさっきまで居た場所…出口が無い?」
いや、流石にそんな事は無いはず。だってそうじゃ無いと私はどうやってここに入ったのか分からないもの。何処か扉の奥に有るのかな?出口らしい出口が無かったから探すの大変かも。
「まずはこの扉から…」
ギィーー
嫌な音と共に扉が開く。見た目通り年数が経っているのかかなり開けにくかった。
「部屋…?オフィス…かな?」
薄暗い部屋を見てそう判断する。それにどうやら他の部屋に行く扉を無いようなのでこの部屋には用がないので中には入らないでいいかな。
それに窓も無い、廊下にも無かったので扉の中にならと思ったけどどうやらそうでも無いようみたい。
扉を開けたままにして隣の部屋の扉へと手をかけると
ギィーバタン!!
「うわ!何?」
勝手に扉が閉まった。開けづらかったので簡単には閉まらないはずなのに。
『そっちじゃない…こっちだ』
「え!?何何!?」
何処からともなく声が聞こえる。
『こっちだ』
「イヤァァァ!!」
目の前にあからさまに幽霊と分かる男性が反対を指差しながら現れたので思わず悲鳴を上げて幽霊へとビンタをしてしまった。何故か手にビンタをした感触が有り、幽霊の男性は床に四つん這いになっていた。
「いける!」
友達も言っていた。物理が効くお化けは雑魚だと。ビンタが効くなら私でも倒せる!
「はぁぁあ!」
『ちょっと待っ─』
「あれ?消えちゃった…。倒せた?2回目は当たった感じはしなかったのに。まぁ良いよね!消えたんだし!」
その後は部屋を開けて回ったが出口は見つけられなかった。いつのまにか先程出た男性の幽霊が指差していた方へと来てしまったよたみたい。
「どうしよう…大丈夫かな?──いや、心を強く持て私!出て来たらビンタをお見舞いしてやれば良いの!」
気合いを入れ直し進んでいるとまた声が聞こえた。
『こっちよ、こっちよ』
出た!さっきと同じなら目の間に現れるはず!
『こっ─』
「はぁぁ!」
やはり目の前に現れたので先制ビンタをお見舞いした。今度の幽霊は若い女性のようだ。2度目をお見舞いしようと構えると指をある扉へと向けながら消えていった。
「あれ?もしかして一発で良いのかな?」
今度は最初から従ってみよう。別の友達もゲームは進むとイベントが起こるって言ってたから。
女性の幽霊が指差してた扉を開けると下へと続く階段が現れた。
「倒しながら進んでいくのかな?」
警戒しながら階段を降り切るとまた扉があったのでビンタを構えながら開けてみる。
「同じ場所…?いや、違うみたい。このまま降り続けたら出口が有るのかな?」
その後も何度か同じように老若男女問わず多くの幽霊が指差しながら現れたのでビンタをして倒しつつ下へ下へと降りていった。
時間がどのくらい経ったのかは分からないがどうやら一番下の階に辿り着いたみたい。さっきビンタした幽霊が次が一番下と言いながら階段がある扉を指差してながら消えていったから!
「一番下!そうなると出口が有るはず!」
更に二体ほど幽霊を倒しドンドンと進んでいく。
『出口は向こうだ』
「え!出口!」
嬉しくなり思わずピョンピョン飛び跳ねてしまった。でもビンタの手はしっかりと構えているのでいつ幽霊が出て来ても安心!
『出口は─』
パチン!
同じように出て来た幽霊にビンタをお見舞いすると他の幽霊と違い何故から消えずに喋り出した。
『出口に化け物が─』
「えっ!なんで!?」
思わずパニックになりしっかりと構えないまま両手でビンタを繰り返す。
『これなら安心だ…』
「き、消えた!良かったぁぁ!さっさとこんな場所出よう!」
なかなか消えなかった幽霊が指差してたいた方に全力で走ると大きな扉とその目の前に何かが蹲っていた。
「出口!」
「ウオォカェサァナイ」
「キャァァァァァ!」
出口に近付くといきなり蹲っていたものが起き上がった。
全力で走ってたから今からじゃ止められ無い!こうなったら助走をつけたとびきりのビンタお見舞いしてあげる!
「ハァァ!!」
バチン!!
「貴方も消えないのね!それなら!」
幽霊では無いみたいだけど、ビンタはしっかりと効いてるみたい!さっきの幽霊と同じように何回もビンタすれば消えるはず!
それからビンタに次ぐビンタを繰り返していると叫び声を上げながら目の前から消えていなくなった。
「倒せた!これで出られるはず!さっきのがボスだよね!」
大きな扉を少し開けて外へと出ると、こちらを驚愕と言う顔をしたお婆さんが居た。
「あ、アンタあの中から出て来たのかい!?」
「うん!そうだよ!幽霊と最後に幽霊じゃ無いのも居たけど倒してよ!」
「ちょっ、ちょっと話を聞かせておくれ」
「いいよ!」
後ろを振り返ると古いビルが建っていた。どうやら私はビルの中にいたみたい。
ビル中での出来事をお婆さんへと伝えると
「アンタ幽霊と化け物をビンタで倒したのかい」
「うん!もしかして私って退魔師の才能がある!?」
友達が幽霊を退治するゲームをしていたけど、確かそう言う人の事を退魔師って言うんだよね!そうなると私も退魔師って事だよね!
「そうだね、かなり才能は有るみたいだね。幽霊にビンタが最後まで当たらなくて良かったよ」
「え?なんで?」
「その幽霊達はアンタが最後に倒したのかい化け物のせいでビルの中で死んだ人達だよ。幽霊は全員、急に消えたんだったね」
「そうだよ」
「なら危機一髪だったね、最後に出た幽霊以外の人は二発目を貰っていたら成仏じゃなくて消滅する所だったよ」
「ええーーー!そうなの!?」
幽霊さん達ごめんなさい!
「アンタは私の弟子になりな。放っておくと害の無い幽霊達に迷惑になりそうだからね。言っとくけど強制だよ、アンタが解決したから仕事も無くなったし私の家に行くよ。ついて来な」
「私、自分の家に帰りたいんだけど!」
「そんなの後だよ!ついて来な!」
「そんなー!」
どうやらまだ家には帰れないみたい。でも退魔師になれるんだし、いっか!帰ったら友達に自慢しよ!
私、退魔師の才能が有るかも 四葉翠 @YotsubaMidori
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