美しくない私へ

木漏れ日の空想家

美しくない私へ

鋭いシャベルで

地面を突き刺す

思いっきり手にちからを入れて

土をかき分ける

腕が痛い

手には血豆ができて

顔には汗が滴る

足がふらっと

宙に浮いた


どうして

どうして

これだけ掘り下げても

何も出てこないのだろうか

いつか

この世の美しい色を全て混ぜたような

そんな色をした宝石が

出てくると思ったのに

今までこの黒い黒い土から出てきたのは

石ころ

鉄屑

みみずの死骸

干からびた根っこ

美しいものなんて何一つない


もう一度シャベルを

地面に突き刺す


でも

その瞬間

恐怖に駆られる

もしかしたら

もしかしたら

この下には

美しい宝石なんて

存在していないんじゃないか

美しいものなんて

この下に眠っているなんて

嘘なんじゃないのか


シャベルを握る手の力が

弱まる

汗が涙のように

頬をつたり

ぽたりと落ちた


もう掘り下げるのをやめよう

もし私の望むものが

永遠に出てこなくて

地球の熱い熱い部分まで

掘り下げてしまったら

どうすればいいの


その時は

絶望するだろうか

悲しむだろうか

信じていた自分に呆れるだろうか

その前に

その熱さで

焼け死ぬだろうか


シャベルを置いて

そっと目を瞑る


この土の中には

私の思い描いていたものが

埋まっていた

虚像を作って

私の土の中に埋める


The End

私はその時

この瞬間を後悔するだろうか


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美しくない私へ 木漏れ日の空想家 @komorebinokuusouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ