破損品
鹿嶋 雲丹
第1話
危機一髪は、日々の仕事の中に潜んでいた。
私を含む某倉庫会社のパートのおばちゃんたちは、毎日(モノの)命のやり取りをしている。
「あっ!」
今まさに、ここに一つの(モノの)命が消えようとしていた。
バコンッ! コロコロコロ……
軍手をはめた手から、無惨にも転がり落ちる商品。
おかしい……私、あなたのこと、しっかり掴んだはずなのに……
よろよろしながら、私は転がったまま微動だにしない箱モノ商品を手にとった。
「ああっ……」
私はある一点に目を留め、深いため息を吐く。
カドが凹んでいる。しかも、シワが寄っていてかなり目立つではないか。
「だめだ……私にはもう、君を救うことができない……」
涙ながらにそう呟き、私は哀れな姿になってしまった箱モノ商品を手に、トボトボと事務所前に移動した。
『破損品置き場』
その箱には、同じように息絶えたモノたちが集められている。
私は心の中で手を合わせた。
次は、もっと頑丈な体で生まれておいで。
来世に祈りを込めて。
私は今日も、危機一髪が隣り合わせの現場で働いている。
『……私たちを落とさないでよ!』
ぎくぅ!!
破損品 鹿嶋 雲丹 @uni888
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