第9話
空から降りたのは白銀の光。
白銀の矢が半分を泡と化したナイアードもろとも彼を貫きました。
矢じりが彼の胸に。
矢羽はナイアードの胸に。
一本の橋を架けるように。
碧の瞳は凍ったように一点の空を見つめて固まりました。
言葉も無く。
身動き一つ無く。
花を握り潰す一瞬の如く。
ナイアードは瞳をゆらゆらと揺らしながら泡となった指先を伸ばしました。
頬に触れると泡がぱちぱちと爆ぜながら小さな滴となって火傷の痕を濡らしました。
『そなたを罵るような言葉を人の子が吐けば私の矢がその胸を貫こう』
波はもう穏やかな小川となっていました。
しかし、水に呑まれた人々が広がっていました。
ぽつんと残る木の台には矢を射られた彼とナイアード。
青々とした空と照りつける太陽に強い水の匂い。
ぱちぱち――
泡が爆ぜる音が微かに聞こえてきました。
足も腕も胴体も髪も耳も片目も泡になっていました。
ナイアードは空を仰ぎ見ました。
広過ぎる空がナイアードを見下ろしていました。
私は……。
唇が泡に変わります。
これが……私の流れ……。
空色の瞳を細めると同時に瞳も泡になり
ぱちん――
爆ぜ消えました。
流れのままに 東雲 @sikimura
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