俺はドラゴン

白川津 中々

◾️

休日に中華食べてヘルスに行ったら姉が出てきた。



「あれー奇遇じゃーん溜まってんのー?」


「そうそうー一発よろしくー」



なんてエロ漫画的展開があるわけもなく、気まずく、重く、嫌な汗をかく雰囲気が続く。意気揚々と入店したものの下半身は既に戦意喪失。近親相姦などできるか。インモラルは創作物の中だけにしてほしい。



「……帰る」



一言述べて帰り支度。当然の選択。一線越えるなどとんでもない倒錯。社会規範と倫理観に則る。



「いや、なに言ってんの、遊んできなよ」



まさかの言葉に驚愕。困惑。頭おかしいのか。



「いやいや、姉弟だろ。無理無理」



「無理とかそんなん関係ないから。やんないとお金入らないから。大丈夫だから大丈夫だから。目つぶっとけばすぐ済むから」


「お前マジ金の亡者だな。もっと大切なものあるだろ」


「あるかも知れないけど、今、私はお金が欲しい」



こいつマジだ。



悟った瞬間、逃げられないと理解。しかし、さすがに無理。身体を預けるなど不可。どうする。諦めるか死に物狂いとなるかの土壇場二択。決まってる。抗う。正気を捨てて!



決断。決行。喉に指を突っ込む。爆音のえずき、未消化の内容物が床へと自由落下。俺はドラゴン。炎の代わりに半チャーラーメンセットを吐き出す気高き巨龍。半チャーハンラーメンセットは580円。



「なにやってんすかぁ!?」



登場した黒服。ガン詰めされて強制退店。「二度とくるな!」の怒号がこだまする。所謂出禁。さようなら優良店。そして前払いの7000円。欲求を満たせず金も失った。しかし、しかし危機一髪。姉との一発を回避。難を逃れ胸を撫で下ろし、溢れるしてやったりの笑み。あの姉に一泡吹かせてやった。勝利の余韻が、射精以上の悦びを与える。



「ゲロ処理お疲れ様でーす🙃👎」



姉宛にメッセージ送信後、俺は上機嫌で立ち飲み屋へ向かった。帰宅後、その姉から包丁を向けられるとも知らずに……

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