サカミチヨリ・シルべの調べ

釣ール

それもまた一生

 その対にある花である彼女は誰にも指図されない世界で咲く一輪の花。

 季節的にも「枯れ尾花」とは言わせない。


 見かけだけシクラメン


 高山地帯に咲く花を英雄視しても、目の前の花は花のまま。


 雑草なんて名付けるセンスはあるのに、一本一本名前を覚えられないのはあまり優れているとは思えない。


 今日も人間達は自分を棚に上げて空気と差し支えない会話で盛り上がる。


 私としては人間ではないからこそその程度では溜息も出ない。


 収穫があるかどうか、またはその間にヒントが隠されているかどうかを備わっている器官で学習していく。


 この地で咲いたのも風に選ばれたから仕方なく。

 生まれたばかりでも選べるのなら誰しも考えてその風に乗るはず。


 人間や哺乳類ではそこまで及ばないのかもしれない。

 いや、産み出されたり作られたりする私達はすべからく何も選べず、選ばず、配置されてしまうのだろう。


 苦労は絶えない。

 二酸化炭素を酸素に変えられないことだけは同情してしまう。

 憎しみによるこじれではなく、呼吸をすることでも差が生まれる私達生命体を嘆く驕り。


 これだけ言葉にしてしまう私も、ほんの少しぐらい謙虚になれないか多年草の世渡り上手さに舌打ちしながら嫉妬のような感情と憎悪で花を閉じる。


 共感は得られない。

 それもまた一生。

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