第3話 フィッシング詐欺

「…おお」


私はスマホに届いた通知を見て、思わず声がこぼれた。


「これはまた、怪しいのが届いたな」


大手携帯会社であるハードバンクからのメールである。自社の名を冠した球団があったり、いろんなテレビ番組の合間にしょっちゅうCMを見かけたりと、かなり知名度も高い。メール曰く、アカウントに不備があるとかなんとか。ハードバンクが利用者に通告する、それ自体は不思議ではない。むしろ伝えないほうが問題だ。ただし、私に届いてるってぇのは不自然がすぎる。


「私…、別にハードバンクユーザーじゃねぇんだが?」


なるほど。これはいわゆる、フィッシング詐欺ってやつだな。



「ハードバンクからのお知らせです。あなたのアカウントが不正に使われた恐れがあります。以下のURLからアカウントに再ログインしてください。https://harbdank****……ふうん。再ログインもなにも、アカウントとかねぇよ」


しかもよく見たらハーブダンクになってるじゃん。

一瞬ミントやらローズマリーやらがダンクシュートやってる画を想像しちまったじゃねぇか。なんか癪に障る。

多分、URLに飛んだらパスワードや利用者番号なんかの個人情報を入力させるんだろうが、こういうのは踏んだだけで一発アウトなやつも多い。これまた顔なじみの警官に送ることにした。


「件名:なんか詐欺っぽいのきた、と。転送ぽちっとな」


広く使われているSNSであるMINEの連絡先も知ってるが、転送が面倒なのでSMSで送り付ける。

ほっといたらそのうち読むだろ。



〈件名:お知らせ感謝

 情報提供ありがとう。調べてみたけど、この詐欺メールは、この前きみが知らせてくれたオレオレ詐欺をやっていた団体に関連するものだったみたい。きみのことだから、多分無駄だと思うけど、踏んじゃだめだからね。〉


「私だって、さすがに機械通すのは無理なんだが。私をなんだと思ってやがる」


どうにか茶化してやれないものかと画策してはみたものの、やっぱ情報抜かれるのはやべーぜ。社会生活に支障が大きい。だったらオレオレの現場行くなって声はこの際無視する。

つーか二つ詐欺仕掛けられてどっちも同じ組織とか。世界っつうのは狭いな。どんだけ私のことが好きなんだよ、その詐欺団体。

ま、とにかく。


「ケーサツ万々歳。やっぱこーいうのは個人は弱いんだよなぁ。爽快感は減るけど確実っちゃ確実だ」


後日聞いたところによると、URLのページの削除はできたが、本家大本の詐欺団体の駆除はできなかったんだと。

ま、私としちゃおもちゃが減るのは忍びない。顔なじみの警官には言わねえが。


「ま、それにどーせ次は無えだろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

凪根もかは騙されない 櫻井桜子 @AzaleaMagenta

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ