現在:富士の麓の樹海にて
「ただいま」
「おかえりー」
大仁が
「ごめん、にーちゃん。ちょっと手貸してくんない?」
声に従って、大仁は中庭に向かった。
中庭にある池の底には、竹の
「ごめんごめん。
池に横たわる
大仁が奏助を池から引き上げる。奏助の真っ白な長い髪が血で赤く染まる。
「どのくらいここにいた?」
「んー、わかんない。二、三日くらいかな?」
あっけらかんと笑う奏助の見た目は小学生ほどに見える。大仁と奏助は七歳しか違わないにも関わらず、だ。それはつまり、奏助がここ数日でかなり
「あ、にーちゃんもしかして今日お土産ある⁉︎当てていい?ネコでしょネコ!おれがネコ欲しいって言ってたの覚えててくれたんだ!」
「……ああ、そうだよ」
振り下ろす、振りかぶる、振り下ろす、振りかぶる、その繰り返し。奏助の白い髪に、白い着流しに、大仁の白髪混じりの
「痛いよな、苦しいよな、ごめんな」
毎日毎日、このように大仁は奏助を切り刻む。そうしなければ奏助の肉体は
「ごめん……。ごめん、奏助……」
大仁が
「いつか……。いつか必ず、にいちゃんがお前を殺してやるからな……」
「ごめんね、にーちゃん」
奏助が大仁の背中に手を伸ばす。ズタズタに切り裂かれた彼の体は、すでに半分ほど再生しかかっていた。
「大丈夫、大丈夫……」
そうして、大仁はまた自らを
「……にいちゃんは、お前のためならなんだってできるんだ」
いつかかならずころしてやるからな。 鴻 黑挐(おおとり くろな) @O-torikurona
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