令和の脳筋陰陽師☯

ランドリ🐦💨

第1話 ボーイミーツモンスター

  人々の生活の残骸の様な人通りの無いシャッター通りを少女が息を切らして走っている。電灯は頼りなく点滅しており月明かりの方が頼りになるような体たらくだ。


 その少女の後を追う影がある。


 その姿は陸上に打ち上げられた黒い魚の様な見た目のあやかしで、高さはシャッターと同等程度と異常に大きい。その巨体をうねらせると体の半分もある大口を開けて少女目掛けて飛び掛かった!


 巨大魚の跳ねる音に振り返り目を見開いた少女は、飛び込むように方向転換する事で魚に丸のみにされる事態を回避する。


 避けられた巨大魚あやかしはシャッターに突っ込み、大量の牙が並んだ大口で金属の丈夫な構造体をもろともせずに食らっていく。


 そうしている間に何とか立ち上がろうとした少女は、今の急制動で足を捻ってしまったのかシャッターに倒れ掛かった。その表情は歪み苦しそうにしている。


 そんな少女にシャッターを食べ終わった巨大魚あやかしが這い寄り、その大量の牙が並んだ口腔を見せつけるように開いてみせた。


 絶体絶命かと思われた次の瞬間、突然に巨大魚あやかしの上あごが中心から半分になり倒れ伏した。そこから真っ赤な血が広がっていく。


 血濡れになってはたまらないとシャッター伝いになんとか移動して血の海から逃れた少女は、刃を納めた着流しの青年に声をかけられた。


「怪我をしてるのか?」

「うん。肩を貸してくれると嬉しいなー」

「その程度なら良いぞ。えっ」

『じゃあ、いただきま〜す』


 少女の言葉を信じた青年がノコノコと近づくと、両手をワシャワシャして嬉しそうに不穏な言葉を発した少女が飛びかかってきた!


「うおっ!」


 嫌な予感を感じた青年は間一髪仰け反って避けると、青年の上を肥大化した少女の両手が通り過ぎ空を切った。


 その掌には大きく開いた口があり、捕まればタダではすまないだろう。


『意地悪しないで、肩を貸して〜』

「怪我なんてしてないだろ!」

『怪我はしているよ〜』


 避けたことを責める少女に青年は反論するが、彼女は先程両断した巨大魚を血の海の上でビチビチさせることで怪我人……怪我あやかしアピールをした。


 頭部を両断されていた巨大魚はいつの間にか修復され、出血が止まっている。


「逃げていたのは演技かよ! どこでこんな知恵を付けやがった!?」

『コレのマネをしてみたの〜。最近の人間さんは急に賢くなって食べられてくれないから〜。これを見てピンときたよ〜』


 少女が懐から取り出したのはマンガだ!


 漫画を参考にして、こんな釣りじみた真似をしたらしい。


『食べられて〜?』


 あやかし少女は話をしている間に修復を終わらせた巨大魚をけしかけてくる。


 ワナにまんまと引っかかった青年も、大人しく食われるわけにもいかないので抵抗する。


「ふざけんな! 臨、兵……以下略! オラァ!」


 青年は九字を切り始めたが、明らかに間に合いそうにないことに少女の表情がご飯にありつける期待に華やいだ。


 しかし九字を切るのを辞めた青年が、巨大魚の下顎をぶん殴る!


 何故か巨大魚はぶっ飛ばされ、少女を下敷きにしてしまった。


 魚の下から少女の声が聞こえる。


『ええ〜……。なんで〜?』

「詠唱破棄だ。早いほうが強いのは常識だろ」


 意味不明なことをのたまった青年が懐から札を引っ張り出すと投げつける。


 巨大魚ごと少女は光の檻に閉じ込められ、光の檻はだんだん縮小していく。


『ナニコレ〜! 体が小さくなっちゃうよ〜!』

「封印札だ。悪さができないようにお前を封じる」


 最後は札に光の檻が吸い込まれ、札を拾った青年はそれを眺めて呟きながら去っていった。


「このあやかし、人型だし知恵もありそうだから式神にでもして雑用をやらせるか……?」



――あとがき――

読んでいただけて、嬉しいです。

続きを書きました。

良ければこちらもよろしくお願いします。


『脳筋陰陽師の秘密』です!

https://kakuyomu.jp/works/16818023211941541746


無事に式神にしたあとのお話。

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