第7話 ローサ・1

夜明けに広がる橙色の空の下で、山に登っていく3人の子供の姿があった。


「ゼーロー!クロバー!早くー!」


「待ってよローサー・・・」


「ほらゼロ!手貸してあげる」


一番前に出て先導している男の子と、大変疲れながらも、焦燥に駆られて急いでついていこうとするもう一人の男の子。そして、その男の子に手を差し伸べる女の子が一人。


「もう無理・・・」


「ゼロはほんとに弱いなぁ」


ローサと呼ばれる男の子はいたずらな笑みを浮かべて、地面に倒れ込むもう一人の男の子に対して掻き立てるように声をかける。その挑発に乗って言い返そうとする、より先に、横にしゃがんでいた女の子が口を開いた。


「本当はゼロの方がもっとすごいもん・・・」


頬を膨らましながら訴える。


「なら、一度でいいから見てみたいなー?」


「ほんとだから!」


男の子は口を開く度に挑発じみた言葉を吐く。女の子もその挑発に乗って追いかけ合いになる。その様子を、座っている男の子は苦笑しながら見ているのだった。






―現在・盗賊団本拠地―


「お前は・・・!」


「っ・・・なんで!」


ゼロとクロバが声を荒らげて訴えかける。玉座に座っていたのは・・・もうこの世に居ないはずの幼馴染、ローサだった。金色に輝くサラサラの髪をなびかせ、依然として生きている。


「だって、あの時俺を助け・・・」


「黙れ」


洞窟に響き渡るゼロの声を、一言で静寂に変える。


「お前らは自分の立ち位置も分からないのか?俺の指示一つで死ぬんだぞ?」


ローサは地に膝を付けて座るゼロの額に指を打ち付けて、しっかりと教え込む。しかし、ゼロの顔は安堵しており、口元が緩んでいた。


「気持ち悪。こいつら入れとけ」


「待ってくれローサ!久しぶりに会ったんだからさ、もう少しだけ・・・!」


「お前と話すことなんて無い」


ローサはゼロに背を向けながらきっぱりと言い捨てた。ゼロは、「離してくれ!」と必死に抵抗するが、「チェーン」からは逃れることができない。そのまま部下に連れられて、隣の部屋にある牢屋へと放り入れられる。「チェーン」は解除されたものの、対魔法性の鉄格子と魔力枷により、抗力を完全に封じられる。


「ゼロ・・・」


「うん・・・分かってる」


生きてるはずのないローサがなぜいるのか。クロバも動揺が隠せないらしい。状況を全く掴むことのできていないアキレアは、二人の様子を見守ることしかできない。


「今は話せる機会を待っとこう。聞きたいことしかないよ・・・」


ゼロは乱暴をされても笑顔でいる。それは、ローサが別人のように変わっていたということよりも、生きていてくれたという事実に対して悦ばしく思っているからだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

守備力ゼロの阻喪勇者 ゆきのふるひ @yukiya0407

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ