シノビと鬼

夢月みつき

第1話「危機一髪」

 黒一色の忍び衣装に銀色の鋭い瞳。

 おれはシノビ。今、極秘任務の為に鬼の根城アジトに潜り込んでいる。


 その極秘任務とは、御上おかみの毛生え薬に使う材料。

 鬼の鼻毛を持って来いと言うものだ。


 おえっ、おれだったらゼッテェ使いたくねえー。


 と言う訳で、屋敷の屋根裏に潜入中のおれ、屋根裏からそっと部屋を覗くと

 くだんの鬼は、見張りがいない寝室で、呑気にいびきを掻いて寝てやがる。

「ラッキー、今のうちに……」


 おれは、するすると音もなくロープで下に降り、鬼に忍び寄る。

 周りを警戒し、誰も来ないか鬼が起きないかを確認しながら、鬼の肩の上へと軽々と飛び上がり着地した。



 おれは肩から、顔の方へと歩いて行く。そして、道具袋から枝切りバサミを取り出す。

 その刹那せつな、鬼が寝返りを打った。

「うわっ!」


 おれはバランスを崩して、地面に叩きつけられる、と思った直後に下にあったクッションのおかげで助かる。


 と、思ったのも束の間。鬼の馬鹿でかい手のひらが、おれを押しつぶそうとして来た。


 とっさに布団の上を転がり、難を逃れた。

 まさか、鬼が起きやがったか!?すぐさま、クナイを握りしめ、鬼の方へ鋭い視線を向ける。


 鬼はどうやら、起きていなかったらしく。いびきをかきながら、尻をボリボリと掻いている。

「ふ~っ……危機一髪だったぜ。ちくしょうめ」

 しかし、ここで時間を掛けている暇は無い。いつ、目を覚ますかは、わからないのだ。


 おれは、再び鬼の肩まで戻ってくると、音をたてないように鼻まで行き、ハサミで鼻毛の先を切り取った。

「任務完了、長居は無用だッ!」

 おれは鬼の根城をあとにして、忍びの里に無事、帰還きかんした。



 -了-


 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シノビと鬼 夢月みつき @ca8000k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ