第18話 皆も人目はある程度気にしようね!! 俺は幽霊だから見えないけど!!
そうしてふよふよ漂いながらトウリ君(クンは読みづらく感じたので)の後をついていき、校舎を出てまた暫く歩くとデカいホテルのような建物が見えてきた。
『なぁピィ…』
『ピィ?』
『学校の近くにホテルなんてあるんだな…』
『ピ?』
まだ人目のありそうな道でトウリ君に話しかけるのもあれなので、ピィ(仮名)に話しかけている俺。
相づちありがとう。
だがやがてその建物がホテルではないことに感づく。
あれれ…生徒しか見えないぞ?
管理人(寮長)もだいぶ若く見える。
受付らしきところを素通りし、トウリ君はエレベーターに乗らずに豪華な階段を使い…なんと10階まで徒歩で息を切らさずに登りきった。
今時の若い子ってこんな体力あんのね~。
へ~。
ヤベーな。
トウリ君…元からただ者じゃない感じはしていたがこれでもっと深まったぞ…。(何が)
そうしてこれまでの階層に比べて少し豪華な感じ(だいぶ曖昧)の階につき、やっと階段から逸れた。
俺は気分的に疲れたよ…トウリ君凄いね。
ピィもそう思うだろ?『ピィ!』
ピィの同意を得ながらトウリ君の後に続き、一つの部屋の中に入った。
中を見渡すと何というか…無駄のない部屋だった。
本当に彼は高校生なのか疑わしくなってきたぞ。
ガチャンと扉が閉まり、何もしていないのに鍵が掛かった音が聞こえた。オートロックだと? なんてハイテクなんだ!
『もう喋って平気かな…?』
俺が呟くとトウリ君は歩みを止め此方を振り返った。
そして振り返るなり此方にそっと近づき俺を抱きしめた。
だが当然、幽霊の俺に触れることは出来ずに俺の輪郭の部分と重なると通りすぎていった。
それでも俺を抱きしめる形で動かないトウリ君に俺は固まり、ピィはそんな二人を不思議そうな目で見つめた。
ピィ…助けてくれ…。俺はこれからどうしたらいいんだ!
情けなくも人間でもない鳥であるピィに助けを求める俺。
何も見えない者からしたら突然後ろを振りかえって空気を抱いている人にしか見えない。言葉にしたらヤバさが際立つな…。
まぁ今は俺達以外の気配はピィ以外にしないから余計な心配か。
そんな現実逃避とも取れる行動をとり数分が経った頃、トウリ君はすっと離れた。
「案外ヒンヤリしているんだな…」
『え、温度感じたの?』
多分ここは恐らくどちらも「そうじゃない」といいたくなるようなコメントだっただろう。
だがしょうがない。お互いに混乱していたのだろうから。
しかしいきなりハグしてきたということは、少なくとも生前の俺と知り合い以上だったのは分かる。
とりま席につき落ち着いて貰うことになった。
俺じゃ席を動かすことは出来ないのでソファーに座ったが。すり抜けるんじゃないかという心配は杞憂に終わった。良かった。すり抜けたら多分第二の心臓が止まってた。(第二の心臓って何だろう)
そしていつまでも沈黙していても、時間の無駄なので俺から話し出す。
『俺の名前は…あ、そういえば思い出せないんだった…。ごめん。自己紹介も何も出来ないや』
申し訳なさげにトウリ君を見ると驚いた顔をして悲しそうな顔をした…のだと思う。ずっと無表情でピクリとも表情筋が動いていないから定かじゃないが…。
ポーカーフェイスか。格好いいな…響きが。
「そうか…だから…」
『ピィ…?』
トウリが小声で囁きピィが心配げな雰囲気で鳴く。
「……いや、何でもない。ゴホンッ‥改めて俺の名前は
『へ~。俺、働いてたんだ?』
「ああ、風紀副委員長としてな」
『そんな真面目そうな委員会入ってたんだ、俺…』
俺そんなきびきびしてそうな委員会でやっていけてたのか?
というか副委員長って…。
カッコイいじゃん? やるな俺。
「話を進めるが、名前以外にも思い出せない事はあるか?」
『ん? あーあるある。家族も友達も、自分の家も思い出せなくって…顔は今日ガラスの反射で見えたんだけどね。なかなかのイケメンだったね』
我ながらイケメンだったと思う。…まぁその後の謎の集団(一般生徒達)のインパクトに引っ張られて俺のキャラが霞んだ気がするのだが。
いや自信を持て俺。
俺には幽霊という強い個性を持っているじゃないか。(ブラックジョーク)
「…変わらないな」
『え?』
ポツリと呟いた声に聞き返すと何でもないと返ってきた。
絶対何かあるヤツじゃん?
「お前は無駄に自分の見た目に自信を持っていたからな…変わらず何よりだ」
無駄は余計よ。
だがそう言った天澄は言葉に似合わず寂しそうに笑う。
それを見て俺の実体のない胸も締め付けられるように苦しくなった。
理由は分からなかった。
王道学園で幽霊になった話 ピピ @Kukkru
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