第3話 ファイアスクリュー
『ファイア……スクリュー』
腕の再生が完了した機械型アグレッサーは敵の名を口にし、背中から圧縮された空気を放射して
『来るぞ!』
『こっちの番だ、反撃するよ!』
「待って、ここはマズイって」
火憐が殴り掛かろうとするも涼馬の意志で止められてしまう。グラウンドなんかで戦っていたら校舎も間違いなく背後の備品倉庫と同じように破壊されてしまう。
そうなったら今の校舎内にいる数百の人間も巻き添いで死んでしまう。
こうしてモタついても敵は待ってくれない。
アグレッサーは集中できてないファイアスクリューの肩を掴んで全力の頭突きをかましてやった。
「ウァッ……痛でぇ」
『反撃させろよ! そもそも避難しない連中が悪いんじゃん! あんなの自己責任だよ』
「自己責任だからって見殺しにはできねぇだろ!」
『いちいち細かいな、どうせ仲良い知り合いも居ないんでしょ』
「そういう問題じゃねぇよ」
ウマが合わない二人が言い争いしてる隙にアグレッサーは続けてパンチする。怒った火憐は強制的に体のコントロールを奪って、アグレッサーの伸ばした腕を掴んで炎纏った拳でカウンターのアッパーを喰らわせる。
そして、アッパーで浮かせたアグレッサーのアゴをすぐさま掴んで無理矢理引き寄せる。
『そんなに被害が気になるんだったらッ──』
ファイアスクリューが足と空いた左手から炎を噴かして一直線に上昇する。アグレッサーは抵抗を試みるが、ファイアスクリューが放つ炎の爆発的な加速力と推進力に負けて一切身動きを取れない。
高度はどんどん上がっていくが、火憐は全く減速させるつもりはないらしい。
黒い煙を巻きながら白い雲を突っ切っていく。
「お、おい! どこまで行くんだよ!?」
『雲の……上ッ!』
地上の校舎が米粒よりも小さく見える高さまで着くと、火憐は遠心力を乗せるようにアグレッサーを放り投げる。
『ここなら文句ないでしょ』
「あぁ」
『一発で決めるよ!』
「わかった」
両手をクロスして構えて、全身の炎を心臓に集めて圧縮する。
こちらに向かってくるアグレッサーに標準を合わせて、胸に蓄えた高濃度エネルギーを一気に爆発させる。
「『バースト、アローッ!!』」
叫びと共に放たれた超高温のエネルギー弾はアグレッサーに直撃して、燃焼や蒸発の過程をすっ飛ばして塵も残らずに消滅させた。
数分後。
速度を慎重に調節しながら校舎の屋上に着地した瞬間、ファイアスクリューは光に包まれて再び涼馬と火憐に分離した。
見物していたビビちゃんはにゃあにゃあと鳴きながら、飼い主の胸に飛び込んではまた頭に乗って落ち着く。
「思い出した? これが私、渦巻く炎の
「……全然わかんね」
「なぁんで? ……合体すればアンチボディとしての記憶が蘇るかと思ったのに……もういいや、リーダーに診てもらうから付いてきて」
「いや、行かないけど」
「は?」
涼馬はもらったフュージョンリングを外して困惑する火憐に返す。
「アンタらは何者か知らないけどオレには普通の生活があるから。戦いたいんだったらお前らが勝手にやれよ」
「はぁ? ギャラクシーはそう思っていても敵は容赦なく攻めてくる。この世界でキミだけが正式の
「オレは空木涼馬でただの高校生なんだよ。ギャラクシーとかよくわかんねぇ中二病ごっこに付き合う気はないから!」
彼女から逃げるように涼馬は破損した塔屋の扉を開けて校舎へ向かおうとした。何とか彼を引き止めようと火憐は言葉を絞り出す。
「ギャラク……涼馬ぁ! キミしかいないんだよ」
「……」
「私たちは所詮外から来た助っ人に過ぎない。ここに居る人たちの日常を守れるのはキミしかいないんだよ」
フュージョンリングを握りしめる火憐とその飼い猫と目を合わせないまま、涼馬は校舎に入って「普通の高校生」に戻った。
拒絶された火憐は眉をひそめて屋上の柵に寄りかかった。
大きく溜め息を吐くと、頭上に座るビビちゃんはその尻尾で飼い主の顔をペシペシと軽く叩く。
「にゃっ」
「ここまで相性悪いことある? 私は炎なら、アイツは氷山だよ」
「にゃぁぁ〜」
「コミュニケーション下手だってわかってるよ…………はぁ、どうしよ」
アンチボディズ 水道水 @yt9840
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。アンチボディズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます