第3話 相手の話も自分が何を話しているかも分からない奴~私の実父~
私の実の父親だから、そりゃあ親見なのは当たり前だし、私のことを考えてくれているのもわかる。
だが、悩みを相談することによって救われるか救われないかは別問題だ。
この人の良くない点は、私の話を聞いていないわけではないはずだが、脳内で間違って解釈しているらしく、てんでトンチンカンな返答をしてくることだ。
下手すりゃ相手の話どころか、自分自身が何を話しているかも理解していないのではないかとすら思う。
タイプ的にはケースその1の桑原に近い気がしないでもないが、その返答の長ったらしさと内容のカオスぶりが比べ物にならない。
小学校五年の時に足が遅くてクラスでバカにされてることを話したら、
なぜ「孟母三遷の教え」の話が出てきて、「そろばん塾へ通え」という結論に至るのか?
高校二年の時に原付免許を取りたいが何とかならないかと相談したところ、
いつの間にか「三角関数」の講義と「野口英世」の偉人伝が始まって、「これからの世界情勢は厳しい」という展開になったのはなぜだろう?
普段から多芸多趣味を誇り、博識を気取っていたからタチが悪い。
自分の息子のことだから真剣だったらしく、話も異様に長かった。
虫歯が痛むから歯医者に行ったはずなのに胃カメラ飲まされ、「水虫があります」と診断されて目薬を処方されたような気分になる。
何の解決にもなっていないし、すっきりもしないどころか、話を聞いている最中も後もイライラしっぱなしだった私は間違っているのだろうか?
小学生の時からこんな調子で、私は高校生の時点でこの人に重要な相談をしてはいけないことを悟っていた。
ちなみに、恐ろしいことにこの人物の職業は中学校教師であった。
理科担当だったが、あの調子でちゃんと授業になっていたんだろうか?
まさか理科の授業で「ファラデーの法則」を説明してる最中に、「大宝律令」や「徒然草」の話を始めたりしてたんじゃないだろうな。
だとしたら、おそらく彼の教え子の中で理系の分野において大成した人物は皆無であろう。
それか、返答に困る息子の相談をうやむやにして、こちらから取り下げさせる戦術だったのかもしれないが。
他にもいろいろと相談してはいけなかった相手に出くわしてきたが、反面教師以外の何者でもない彼らからは学べることがある。
それは悩みや相談、愚痴は「黙って聞け」ということだ。
そして、「あまり偉そうにペラペラアドバイスするな」である。
他人に悩みを打ち明けられたり、相談を持ちかけられるということは、解決策を求められているというより、ただ聞いて共感してもらいたいという場合もあるのではないだろうか?
それを何とかしてやりたいと思うあまり、何らかのアドバイスを長々としたとしても、相手にとって救いとなるとは限らない。
むしろ逆効果であることが多い気がする。
また、そうやって相談されると無意識に自分が偉くなったような気になってしまい、ついつい上から目線で偉そうなことや余計なことを言いたくなってしまうのかもしれない。
そういうマネはあまりにもみっともない。
私は相談してくる人間の話を黙って聞き、話させることによって相手の気分を晴らすというスタンスを取っている。
そして解決策が道理的にも個人的にも明らかだと確信できる事柄に対してのみ、手短に返答することにしている。
卑怯かもしれないが。
だから先日職場で新卒の新井に、
「彼女がいても、昔から他の女にもついつい手を出しちゃって、今は四股になっちゃって困ってるんですよ」
という自慢風相談を我慢して聞いてやった後は、明確かつ手短かに返答した。
「去勢しろ。そうすればもう困らない」
こんな奴に相談するんじゃなかった!~相談を返り討ちにされたことありますか?~ 44年の童貞地獄 @komaetarou
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