母子で挑んだ中学受験

おかん星人

決戦前夜、1月31日

コロナ禍の中学受験。ヒトカゲは1月の後半は小学校を欠席し、自宅で受験準備を行った。この間、おかん星人は欠勤するわけにもいかないので普通に出社する。コロナ禍に完全出社という当時の上司のやり方は全く納得していないが、在宅勤務でヒトカゲの近くにいると、あれこれ考えて良からぬことを言ってしまう可能性もあったので、病気を持ち帰らないことに集中してヒトカゲとは程よい距離を保っていたと思う。


1月31日、さすがに前日はおかん星人も落ち着きのなさが普段の3割増しの状態で、石のように固い表情でオフィスにいた。翌日に受験を控えていることを知っている社内の人間は、もはや腫れ物に触る状態であったに違いなかった。


終業の時間が来た瞬間、平気なふりをしていつも通り挨拶をして帰路につく。帰宅途中の電車の中では、帰宅後にやることを予習。その日の夕飯はあらかじめヒトカゲと相談をして「うどん」に決めていた。野菜をたくさん入れて栄養たっぷりの温かいうどんだ。その後、ヒトカゲを先に休ませる。自分もいつもより早目に就寝することを意識しながらも、翌朝に用意するお弁当や朝食、荷物の準備を怠らない。

いつもの3倍以上のスピードで脳内が回転するが、帰宅までの道のりはいつも以上に長く感じられた。

最寄駅に到着すると、いつも通りヒトカゲが迎えに来ていた。ヒトカゲはコロナやインフルエンザの罹患回避のため、1月20日から小学校を欠席。自宅で受験準備をしていたのだが、一日中自宅にいるのも精神衛生上よくないと思い、散歩がてらおかん星人が帰宅するときに最寄駅まで迎えに行くことを日課としていた。これなら人混みに晒されることもなく、外の空気を吸うことができる。試験前日も駅前まで散歩をしてもらい、おかん星人と合流して一緒に帰宅した。


1月31日は塾から激励電話がある予定になっていたが、おかん星人が帰宅する前にすでに電話があったとのことだ。この激励電話に関しては、通常であれば担当講師1名が激励してくれるものであったが、おかん星人はあえてもう一人講師を追加リクエストをした。担当講師だけでも十分ありがたかったのだが、最も鍵となる教科担当講師からもお声を頂戴したいと考えたのだ。最も鍵となる教科は入試のトップバッターとなる教科に他ならない。ヒトカゲは模試の時、この教科の浮き沈みが結果と大きく関係していたので、この最初に行われる教科を制すれば他の3教科も波に乗れると判断。先生にはお手数をお掛けして申し訳なかったが、プロからの話をいただくのもこれが最後だと思い、塾にはおかん星人の願いを聞き入れてもらった。まぁ、前日の会話なので専門的な話は抜きとして、緊張がほぐれるような話を贅沢にも2名のエース講師から頂戴したヒトカゲであった。


激励電話がすでに終了しているのであれば1月31日にやるべきことは、暖かくしてなるべく長い睡眠をとることだけだ。超特急でうどんを作り、ヒトカゲが完食。ヒトカゲ本人も緊張と気持ちの高ぶりがあったのか、早く休むことに焦点を置き。自ら早めに入浴、おかん星人が気付かぬうちに就寝していた。


ヒトカゲ就寝後、おかん星人が寝床に着くまで何をしたかは覚えていない。

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