第34話 フクロウカフェ

 そして、少し歩いた先にあった梟カフェに俺たちは入ると、


「いらっしゃいませ~」


 すると眼鏡を掛けた店員さんと可愛らしい梟が出迎えてくれた。


「二名様でよろしいしょうか?」


「はい」


「では、こちらの席へどうぞ」


 店員に席へまで案内されて、俺たちはテーブルに腰を下ろす。


「ご利用料金に関してですが――」


 店員さんは慣れた感じでメニューの説明を簡単にしてくれた。

 1000円+1ドリンクで時間はフリータイムらしい。


「あ、これさっき貰ったんですけど……」


 俺は呼び込みの店員さんに貰ったドリンクサービス券を渡す。


「あ、もしかしてこれで来てくれたんですか?

 ありがとうございます。

 では、ドリンクはサービスさせていただきますので、こちらからお好きなものをお選びください」


 飲み物のメニューは結構豊富だ。

 俺はジンジャエールを、莉愛はタピオカ入りのアップルティーを頼んだ。


「ちなみにオプションもございまして、手乗せや肩乗せ、ふれあいも無料となっております。

 エサやり体験は500円となっておりますので、ご興味ありましたらお声がけくださいませ」


 言って店員さんが一度席を離れた。


「思ってたよりも、いっぱいいるね」


 外で梟を目にする機会なんてほとんどないので、あまり詳しくないのだが室内には様々な種類の梟がいる。

 一応、放し飼いではないのだが、触れようと思えば触れられる距離にふくろうたちが何匹も並んでいる光景は絶景だ。


「あ、あの子……可愛い」


「うん? どいつだ?」


「あの白くて目がまんまるの」


 特徴を言われて、直ぐにどの梟を言っているのかがわかった。

 縁どりのある真っ白い顔、オレンジ色の大きな目。

 何よりとても可愛らしい顔立ちをしていた。

 こうやって見てみると、梟たちも随分と特徴が違うことがわかる。


「あ、その子が気になりますか?」


 声を掛けてくれたのは、先ほど席まで案内してくれた眼鏡の店員さんだ。


「その子はシロさんって言うんですよ。

 ちなみに、アフリカオオコノハズク――通称「アフコノ」なんて呼ばれてる梟です。

 小型で飼育もしやすくて、ペットとしても人気があるんですよ」

 

 テーブルに注文したドリンクを置きながら、店員さんが詳しく説明をしてくれた。


「シロさん……この子、頭に羽飾りをしてるみたいですよね」


「そうなんです!

 羽角って言うんですけど、この飾り羽が特徴の一つですね」


 感心しながら興味津々な様子で、莉愛がシロさんを見つめている。


「あの、触ってもいいですか?」


 少し遠慮がちに莉愛が尋ねた。


「もちろんです。

 当店のふれあいは無料ですので!」


 店員さんは満面の笑みで応えた後、シロさんを手首に載せて俺たちの席まで来てくれた。


「どうぞ撫でてあげてください。

 ちなみにこの子、頭を撫でられるのが好きですよ」


「し……失礼します」


 多分、その言葉は店員さんではなくて、梟のシロさんに言ったのだろう。

 するとシロさんは自分から頭を下げた。

 まるで早く撫でて欲しいと言っているみたいだ。

 莉愛は梟の行動に驚き、俺に顔を向けると目を丸めて、それから微笑を浮かべた。


「すごい……今から撫でられるのがわかってるみたい」


「賢いし、随分と愛嬌のあるやつだな」


 うちのジジも撫でろと主張してくることがあるが、愛情を持って飼われた動物というのは、それに応えてくれるものなのかもしれない。

 こういうのを直接目にすると、やはり可愛く思えてくる。


「ふふっ、この通り撫でられ待ちするんですよ、この子」


「なら遠慮なく」


 ゆっくりと莉愛の指先がシロさんの頭を撫でた。

 顔を伏せているので見えないが、じっと撫でられている。


「もふもふ……」


 幸せそうに莉愛が笑う。

 だが、そんな彼女を見ている俺は、もっと幸せで温かい気持ちに浸れてしまう。

 美少女と可愛いらしい動物というのは、世界が平和になるんじゃないかってくらい、見ている人の心を和ませるものなんだと知った。


「ですよね。

 いっぱい、撫でてあげてくださいね」


「はい」


 シロさんは本当に撫でられるのが好きなようで、莉愛が萎えるのを止める度に顔を上げて、「もっと撫でて~」と言っているみたいに、まんまるとした目を向けてくる。


「大希も撫でてみる?」


「そうだな……」


 俺がシロさんに目を向けると、「いつでも来い!」と察したように頭を下げた。


「お前、本当に察せる梟だな」


「ほんと、私たちの言葉がわかってるみたいだよね」


「シロさんはとっても賢い梟ですから」


 店員さんたちともゆったりと会話をしながら、緩やかに時間は過ぎていき……俺たちは暫くの間、梟たちとのふれあいを楽しんだのだった。

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