第21話 駅で待ち合わせ

     ※


 お昼に近付いた辺りで莉愛から連絡があった。

 そろそろ駅へ到着するということで、俺も家を出る。

 彼女の到着時刻よりも少し早く駅へ到着した。

 休日ということもあり、駅前はそれなりに賑わっている。


(……改札が見える場所まで移動するか)


 階段を上って駅構内へ。

 すると、改札を通ろうとする莉愛の姿が見えた。

 同時に周囲にいた人々の目が一斉に莉愛に向き、軽いどよめきが上がった。


「おい、あの子……すっげえ可愛くね」


「モデル、かな? この辺りで撮影でもあるんじゃね?」


「声……掛けてみる?」


 そんな話し声が聞こえてきた。

 元々、モデル顔負けの容姿とスタイルの莉愛だが、今日は私服姿ということもあってかより目立っているようだ。


「ぁ……」


 微かに莉愛の口元が動いたのは、俺を見つけたからだろう。

 こちらを見て手を振ってくれた。

 すると今度は大きなどよめきが起こった。


「え? 誰に手、振ったの?」


「彼氏と待ち合わせか?」


 莉愛が小走りでこちらに駆け寄ってきて、男たちの視線が俺に突き刺さってくる。

 明らかに妬みの目で見られているのがわかったが、気にしないでおこう。


「大希……お待たせ」


 近くで見ると、今日の莉愛はいつも以上に可愛い。

 化粧に詳しいわけではないのでわからないが、薄いメイクをしているようだった。

 自然な感じなので近くで見なければわからないくらいだった。

 何より初めて見る莉愛の私服に思わず目を奪われてしまった。

 高校生らしい派手過ぎない私服なのに、莉愛が着るとファッション誌に載っていても違和感がないくらいおしゃれで魅力的になったように思う。


「……大希?」


「あ、ご、ごめん。

 俺も今、来たところだから」


 焦ってテンプレみたいな返事をしてしまった。


「よかった」


 そう言って小さく微笑む莉愛に、俺はまた見惚れてしまった。

 ああ、ずっとこんな幸せな時間が続けばいいのに


「もしかして……変、だった?」


「え?」


「私服……。

 大希のご家族に会うわけだし……あまり派手過ぎないほうがいいかと思ったんだけど……地味過ぎたかな?」


「あ、いや、全然そんなことない!

 その……何も言えなかったのは、私服の莉愛が可愛くて……」


「そう、なんだ。

 ならとりあえず……合格点、かな?」


 安心したように笑う莉愛を見ていたら、胸が熱くなってくる。


「合格点どころか満点を超えてる」


「褒め過ぎ。

 でも……ちょっと自信、持ててきたかも。

 悪い印象、持たれたくなかったから……」


 うちの家族に会うことで、色々と気にしてくれたのだろう。

 ここまで気遣ってくれた莉愛に対して、うちの家族がおかしなことを言わなければいいのだけど。


「莉愛……うちの家族はその……もしかしたら変なこと言ってくるかもしれないんだけどさ……」


「変なこと?」


「いや、具体的に何を言ってくるかは、俺もわからないんだけど……」


 本当に想像も付かない。

 勿論、莉愛を敢えて傷付けるようなことを言ったりはしないだろう。

 だがワザと試すようなことくらいは言ってきそうな気がする。


「うん」


「もし何を言われても、俺は莉愛の味方だから。

 それは、約束する」


 不安を感じている莉愛に、俺が言えるのはこれくらいだ。


「そっか。

 ありがとう、大希……すごく、勇気もらえた」


 言って、莉愛が俺の手を握る。


「じゃあ、行こっか」


「ああ」


 そして俺は莉愛の手を引いて、家族の待つ自宅へ向かったのだった。

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