かゆい、カユイ、痒い、KAYUIぃぃぃぃ!

@2321umoyukaku_2319

第1話

 昔から皮膚は丈夫で、肌のトラブルで困った経験はなかった。この先も自分は絶対に大丈夫だと思ったから、ニキビやアトピー性皮膚炎で肌が荒れている人間をバカしていた。その報いが来たのだろうか……ある日、股間が痒くなった。

 最初は我慢ができる程度の粥さだった。風呂に入って洗ったりシャワーを浴びて清潔にしていれば、いずれ治まるだろうと思っていた。だけど、考えが甘かった。だんだん痒みが強まってきた。我慢できる範囲を越えてきた。

 痒いという感覚に不慣れだったせいなのか、とにかく辛かった。痒いとき、他の人はどうしているのだろう? と思った。みんな、こんなに痒かったのか! と思い、それをバカにしていた自分に苛立った。そんなことを考えて気を紛らわそうとしても限度がある。薬を飲むなり塗るなりしないと、やってけない。何の薬もないので自分の場合、掻くしかなかった。肌から血が滲むほどに引っ搔いた。それでも痒みは収まらない。

 テレビの収録が迫っていた。審査員だったので、ずっと座っていれば良かったのは助かった。下半身はテーブルの陰に隠れているので、見えないところでボリボリ掻いていればいいのだから……と安堵したのは束の間だった。ずっと両手をテーブルの下に入れて腕や肩を動かして恍惚の表情を浮かべていたら、変態だ。その様子を収録した番組を放送できるはずがない。

 絶体絶命の危機だった。マネージャーに相談すると、股間をよく見てみろと言われた。じっくり見ると小さな虫が何匹もいた。もっと調べたら、陰毛の根元の方に白い卵みたいなものが何十個も付いていた。そのことを伝えたら「それは毛じらみだ」と言われた。性行為なんかで感染すると教わった。

 物凄く托卵じゃなくて、たくさん身に覚えがあった……が、それはこの際どうでもいい。どうすれば治るのか? と聞いてみた。特効薬があると言われた。スミスリンパウダー等のフェノトリン製剤と専用の櫛でケジラミと虫卵を退治すればいいと聞き、すぐに用意させた。

 治療の効果が出て、収録は無事に済んだ。ケジラミはいたのは髪の毛ではなく陰毛だったけれども危機一髪だった。しかし完治とは程遠い。全部のケジラミを駆除するまで活動を休止することにした。悔しいが痒みには勝てないんや。

 それにしても誰がケジラミをうつしたのだろう? 不特定多数の女のコと遊んでいるから、誰から貰ったのか分からない。やれやれ、最近の娘たちには困ったものだ。

 女を用意するアテンド芸人たちに「性病持ちはアウトやから」と伝えておこう……これからは注意せんとな。痒いのはホンマ、堪忍やで!

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