第7話 竜の王

 竜についての研究は隣国の方が少し進んでいて、隣国の竜使いから話を聞いていくうちに色々なことがわかった。


 まず、やっぱり僕の竜は僕の国出身じゃないこと。でも、隣国の出身でもないらしい。更に奥の始祖の竜がいる地域から出てきたんだろうという話だった。


 そして、僕の竜が土地を離れなかったのは、多分主従関係があるからではないということ。これも多分だけど、僕のことをなんとだと思っているのだろう、ということ。


 ちょっとびっくりだけど、よく考えるとなるほどと思う。


 

 緩衝地帯で暮らしていると、暮らしやすいのか竜が繁殖行動に出ることが増えて、子どもの竜が増えた。(訓練所でもたまにいたけど)それを観察してるとよくわかるけど、首根っこを掴むのも、鼻先に乗せるのも、子供扱いそのものだった。


 親の竜は、竜の子どもが鼻先で親を小突いたりしてわがままを言うのには取り合わない。だけど木登りしたいだとか、なにかしたいことは、さり気なく手伝ってやっていた。


 竜は群れ単位で子育てをするらしく、子竜が迷子になると総出で探しに出ていた。僕のときと一緒で笑ってしまった。


 隣国の竜使いはこうも言っていた。竜は普段血族関係で群れを作るけど、特別強い竜がいるときは、その一頭をリーダーとしてみなすことがあるそうだ。本来は旱魃期かんばつきなどで食糧難になっている時などの限られた場合のみの現象らしい。


 僕の竜は特別大きくて強かったから、ほかの竜は吼え声にびっくりして、竜の本能に従って群れのリーダーになっちゃったみたい。


 僕の国からも竜使いたちがやってきて、色々訓練や研究をしていく。


 王子もたまにやってきてくれる。


 お師匠様のことも調べてくれた見たい。始祖の竜の国から、戦争に嫌気が差して逃れてきた一流の竜騎士の可能性が高いらしい。






 僕の暮らす緩衝地帯は、竜の繁殖地として有名になった。

 そして、緩衝地帯は竜の王国、僕の竜は竜の王と呼ばれるようになった。


 そして、僕はその竜の王の子供だから、竜の王子と呼ばれるようになって、ちょっと恥ずかしかった。


「お前の竜は王になったのだな」

「うん。女王だけどね」


夕日に映える草原で竜が過ごすのを眺めながら、僕は王子とおしゃべりをしていた。


「そうか。私も頑張って、良き王にならないとな。なれるだろうか。」

 王子はそう言って、にっと笑った。


「きっとなれるよ!」

 僕はそう言って笑った。


「そして、お前は竜の王子らしいな」

「おかしいよね」

「なら、お前もそのうち竜の王にならないとな」

「え〜。なら、『良き王にならないとな』」

「『きっとなれるよ!』」


 そう言って二人笑った。


(終わり)

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竜の子 〜竜と暮らす捨て子の僕が、友達の王子を助けて竜騎士になるお話〜 成若小意 @naliwaka36

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