悪魔の天使

@Kurosaki-Ryu3

第1話 天使の悪魔

 ある朝、普通に起きて、支度を済ませ、中学校に向かい始める。冬になりかけの朝、肌寒い朝の空気が喉を刺激する。


手袋をもってこなかったことを後悔しながら、震える手でスマホに「手袋」と入力する。


 なんの根拠もない希望を持たせるような、今日出てきたばかりの朝日を感じながらイヤホンでポッドキャストを聞きつつ歩みを進める。


 なんだか視界に違和感を感じた。歩みを止めて違和感の正体を考える。使われているところを見たことがない店の照明、歩道の黒いコンクリート、赤い自動販売機、どれも違う。横を通る車、自転車、落ちている空き缶、と一つずつ違和感の原因を探していたとき、白い靴が見えた。違和感の正体だ。


その白い靴は単独で落ちているわけではなく、靴には持ち主の足が繋がっていた。靴からその持ち主の顔を辿っていくと、同い年くらいの、14、15歳くらいの少女がその靴の持ち主であることが分かった。


 女の子が顔を伏せて倒れていた。まだ冬本番とまでは行かないが、肌寒さを感じるような朝に。


 僕は、彼女に近づいて、なるべく距離をおいて、小指でつん、と突いてみた。反応はない。次は二回彼女をつんつんと突いてみた。しかしまた反応はない。次は強く一回、彼女を突いた。すると、


「痛いなぁ、、、」


と声を発し、顔をこちらに向け、ジトッとした目でこちらを見てくる。透けるような白い髪に、何を考えているか分からない思考をこちらに読ませないような強気な目、街中ですれ違った等誰もが二度見してしまうような美少女だった。


僕は、まさか寝ていたとは思わなかったので、この状況に驚きつつも、


「君が倒れていると思ったから、大丈夫かなとおもって、、、」


 彼女は慣れているようにあぁ、と言ったあと、


「私は大丈夫だよ、優しいね」


と柔らかい声で返してきた。飲み込まれそうになる声だった。


「あ、じゃぁ、ダイジョブそうだから」


と、その場を去ろうとした僕に、


「ちょっと。遊ぼうよ学生さん。どうせ学校に行っても暇だよ」


やっぱり飲み込まれそうな、引き込まれそうな声だった。

 僕は思わずうん、と後のことなど答えてしまった。これも彼女の能力なのだろう。


 僕は、立ち上がった彼女に手を取られ、小走りで街の中心部に向かう。


 八分くらい走った後、街中にある昔なんの施設だったのかが分からない建物に到着し、そこの中に入った。


その建物に入った途端彼女は僕の腕を今までよりも強く引っ張って、その建物の一室に入った。その部屋にはベットがあって、その部屋の中で彼女は、


「私ね、君が食べたいの。いい?」


と聞いてきた。


 また僕は少しも考えずに


「いいよ」


と答えてしまった。


 すると彼女は、口を大きく開けて、あー、と声を出しながら、僕の肩にかじりついてきた。


 最初は甘噛みだったが、ゆっくり力が入ってきた。


 焼けるように痛かったが、なんだかそれがとても幸福なことのように感じられた。


 肩が一かけら欠けて彼女は大丈夫?と聞いてきた。


 僕は大丈夫とだけ答えた。


 彼女はまた僕の肩を食べてきた。


 彼女が僕を食べ始めて体感で30分くらいたった後、彼女はふぅ、っと息を吐いて


「また1週間後以内に来て」と言った。


 その後、時間ギリギリに登校することができた。

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