またね

「はあ、、、無気力だ…」



5月になって毎年やっている体育祭の時期がやってきた。


運動がとにかく苦手で春から夏までの期間が本当に嫌い…


ん?あれ…


休み時間、ふと校庭を見ながら思った。


体育祭って、確か毎年先輩が何人か来てたような…


僕はそっと近くにあったカレンダー見た。


体育祭本番まで残り1週間、、


また…会える!!


そこからの1週間はただただ本気で練習をした。また会えると本気で信じていたから。


会いたいって思ってたから。


会いたい、また話したい…!


「〇〇先輩、来てたよ!」


「〇〇くん元気そうだったー!」


当日、先輩の名前を聞くことはなかった。


保護者席の中を探しても先輩はやっぱり居なかった。



徒競走は2位、クラスリレーは負け。


やっぱり諦めた方が良いのかな…恋は全てが悲しい方向に向かうものなんだよ、、きっと。


もう会えないんだ。。


ほとんど何も入ってないバックがあっさりと潰れていく。いや、わざと潰している。


自分の組が負けたことを悔しがるかのように深く潰していく…もちろん、本当に悲しいのは先輩に会えなかったことだ。


はぁ、これから1年どうしよ…


これがラストチャンスだったのに。


諦めなきゃ、諦めなきゃ。


先輩と同じ高校の人が羨ましい……また話したい。


ただもう一回、話したいだけなのに。


体育祭当日からの1週間はずっと先輩に会いたいと願っていた。逆に言えば、それ以外のことはまったく考えていなかった。


考えても落ち込むのは自分なのにな、、


いつもの帰り道を自分の足が見えるくらいまで下を見ながら歩いて行った。


なんでこんなに好きなんだろ。なんで、恋なんてするんだろ。


「あれ?〇〇くん!?」


「…?」


一瞬時間が止まる。しかし僕がその顔を先輩だと認識した瞬間、心臓が激しく動き出した。


「〇〇くんだよね!?やば!!」


先輩が目の前にいるのが信じられなくて、ただただ戸惑った。戸惑いながらなんとか話そうとするあまり、何か口を滑らせてやばいことを言ってしまいそうで怖かった。


「会いたかった。」とか、「好き。」っていう普段は絶対言えないような言葉が喉から危うく爆発して出てきそうだったが、直前で止まる。


「あ!そうだ、体育祭見てたよ!!」


「マジで!?」


先輩がスマホを見せてくれて、その中には体育祭当日の写真があった。


恋はあっさりと終わってしまったんだと、なんで好きになったんだろ…なんでこんなに会いたいんだろ…


結局全部無意味だって思ってた。


だが、失恋ソングにもならないような僕の恋はまだ終わっていなかった。


悲しい結末が来るならばなんで恋なんてするんだろう…?


そんなの恋をすればすぐに分かる


悲しい結末が来るかもしれないってそんな不安じゃ諦められなかった。


フラれるとか別れるとかどうとかそんなこと考えない。


君にまた会いたいから頑張れるんだ!!!


たとえその頑張りが無意味でも終わりじゃないって信じ続ける。


「またね!」


先輩が優しく笑ってそう言ってくれた。


もうちょっとだけ…恋、してみよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君にまた会いたいから頑張れる 学生作家志望 @kokoa555

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ