海外出張でお買い物を安くしようとすると、無用なトラブルに巻き込まれるかもしれないと言う実話

さいとう みさき

危機一髪だったんだなぁ……

 これは作者が体験した実話である。


 あの感染症ウィルスが全世界に猛威を振るって早数年、2023年にはそれに対抗するワクチン接種などでその猛威はかなり退いた。

 疲弊した経済の復活を狙って各国は様々な対策や方針を決め、徐々に外資や観光を受け入れる為にただならぬ努力を示していた。


 さて、そんな中、今回の問題の発生元と噂される隣の大国へと私は久々の出張が始まる事となった。


 勿論あちらの国も以前と同じように渡航は出来ない。

 今までノービザで最大14日間は渡航できたことも、必ずビザが必要となった。

 解放後もそれは続き、約3年ぶりにあちらに渡航しようと思ったらPCR検査の結果を48時間以内の書類提出も必要となっていた。

 仕方なしにそれをこなし、インターネットで結果をもらいプリントアウトして書類の準備。

 ネット上で他にも当事国産のアプリをダウンロードして事前健康診断の掲示を内容に従って申請し、24時間有効のQRコード取得をしなければいけなかった。


 非常に煩雑かつ、外国人に優しくないガイダンスのお陰で翻訳ツールの出番が頻繁となった。

 ただ、翻訳ソフトがどの程度まで信用度があるかは別問題で、変な日本語と格闘しながらその意図を理解しようとする。


 更に日本国でも同様な処置がなされ、事前に健康についての申請をしなければならなかった。

 まあ、日本語で国内アプリなのでまだ楽ではあるが、煩雑さが増したことは否めない。



 そしてと隣の国へと渡航を開始して、ほぼほぼ毎月出張をこなしていた。


 流石に数カ月すると徐々にそう言ったPCR検査結果などは無くなって行き、渡航もだいぶ楽になって来た頃である。


 もう夏も終わり、猛暑が無くなって過ごしやすく成る事だった。



「はぁ~、残業ばっかでまたホテルのレストランでご飯食べられないや」


「さいとうさん、だたら私たちとご飯喰べに襲い行くアルね」


 現地で残業が終わり、遅い夕食をどうするか悩んでいると、現地スタッフで怪しい日本語だけはべらべらなスタッフが声を掛けてくれた。


「そだね、陳さん(仮名)お願いします」


「任せるアルネ、最後まで看取ってやるアルね」


 うん、いつも通りなんか変な日本語。

 それと特定の言葉遣いだけはかなり詳しい。

 まあそれでも意思疎通するのに助かるし、何より最終手段である現地のコンビニ弁当か日本からの持参したレトルト食品よりはましなものが食べられそうだ。


 私は現地スタッフ数人の女性たちと一緒に遅い晩御飯を取りに行った。



 * * *



 事務所のある複合ビルから地下鉄の電車で繁華街に移動。

 お隣の大国で上の海と書くこの地域は比較的治安もよく、夜に大通り当たりであれば出歩いてもほとんど問題がない。

 なので女性に囲まれた状態で繁華街の夜遅くまでやっている串焼きのお店に向かう。


 ちなみに彼女たちは若い。

 ほとんどが二十代だ。



 ……言っておくが私は一切邪な感情はない。

 そんな恐ろしい事を考える事すらない。

 何故なら私は恐妻家だからだ……



 近年上の海と言う地域ではこの串焼きが流行しらしく、特に羊肉の串焼きが美味しい。

 独特の香辛料を振りかけて、自分でテーブルの上の炭火で焼くと言うスタイルは、話をしながら食事をするにはうってつけだ。

 そこでサイドメニューの麺やチャーハンなども食べてホテルに帰ろうとすると、ついでだから地下街で買い物をして行こうと言う運びになった。


 こんな遅い時間でもまだやっている店があるのかと聞くと、夜の11時くらいまではやっているので大丈夫だとか。

 時間を見ると現地時間(あちらの国は日本と時差1時間で遅くなります)で夜の9時半くらい。

 電車に乗ってホテルまで10分かからない距離なので付き合う事にする。

  

そして訪れたここ地下街は、夏場の余韻を残す蒸し暑さを微塵も感じない空調完備な場所だった。


「へぇ~、こんな所があるんだ。で、何買いに来たの?」


「服ね。いろいろ有るから、さいとうさんも見るアルね!」


 衣服に関して私はセンスがない。

 なので、どちらかと言うとネタ的なものを物色する。

 と、陳さん(仮名)があちらの店に特別なものがあると言う。

 何だろうと思って行って見ると、漫画の神様である手塚治虫大先生のキャラクターがプリントされたTシャツがたくさん売っていた。


 ふと、「版権問題」とか言う言葉が頭をよぎる。

 が、いまさらそんな事言ったってこの国では馬の耳に念仏。

 とりあえず見るだけ見ようと店に入っていると、やたらと派手な男の店員が出て来た。


 そしてなんか陳さん(仮名)がニコニコしながらあれやこれを進めて来る。

 

 いや、進められても買うつもりは……

 はっ!?


 あ、あれはド根性な黄色いカエルのTシャツぅっ!?


 何と言う事だ、私だってDVDでそのアニメは知っている。

 しかしそれを実現するティシャツだとぉ!?


 ちょっと欲しい。


 いや、かなり欲しい!


 そんな事を思っていると、店員がやたらとボディータッチ多めで何か言ってくる。

 いや、なんで手を握るの?

 ああ、これ着てみろってことかな?


 それとやたらと顔が近い。


 熱心な販売なのだろうと思い、一応着るだけ着てみようかと思って陳さん(仮名)に通訳を頼む。

 すると、その派手な男の店員は嬉しそうに私を更衣室に案内する。


 が、その更衣室は変な鏡の裏にある?

 と言うか、隠し部屋みたいになっている??


 陳さん(仮名)は何故か興奮気味にそこで着替えるように勧めるが、何故か他の女性たちが片言の日本語で「ダメね!」とか「やめとくアルね!!」とか言っている。


 うーん、流石にこの平面カエルのTシャツはダサいとこの国でも感じるのだろうか?


 私は仕方なく試着をあきらめ、店を後にしようとすると先程の男の店員がまたやたらとボディータッチ多めで何か言ってる。

 何を言っているか分からないので、陳さん(仮名)に聞くと「半額で好いから試着しないか?」とか言っているらしい。

 しかし、他の女性スタッフはやはり同じくやめた方がいいとか、ダメとか連呼している。


 私は苦笑いをしながらその店員さんに軽く頭を下げながらお断りをして、陳さん(仮名)に通訳してもらう。


 何故か陳さんがそこで軽く舌打ちをしながら残念そうにするのが少し気になる。


 もしかして知り合いのお店だったのかな?

 だとしたら何か買ってやったほうが良かったかな??


 そんな事を思いながら店を後にしてホテルへ。

 その間、何故か他の女性スタッフは私をじろじろ見ては安堵の息を吐いている?


 一体何なのだろう?

 陳さん(仮名)を見ると少し興奮気味と言うか、赤い顔してこっちを見ている。

 お酒飲み過ぎたかな??


 確かにお店に行った時も少し酔っていたように感じる。

 いつもは冷静で生真面目な陳さん(仮名)がやたらと、薄い本の話で盛り上がっていた。


 ちなみに、上の海と書くこの都市でも腐ってる女子は多い。

 勿論うちの事務所にもだ。

 だから私がお土産に持ってくるのは妻のいらなくなった薄い本とか、リクエストのあった物をネットで買って持ってきてあげる。

 おかげでこちらに来た時は色々と助かっているので、お礼もかねてだが。




 で、ホテルに戻って先ほどの地下街のお店が気になる、ネットで検索すると……



「上の海版ハッテン場」



「はいぃいいいぃぃっ!? ちょ、ちょっと陳さん(仮名)っ!?」



 まさしく危機一髪だたんじゃないだろうか、私……








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海外出張でお買い物を安くしようとすると、無用なトラブルに巻き込まれるかもしれないと言う実話 さいとう みさき @saitoumisaki

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