子供の時つまらない授業の時に頭の中で想像するアレ。

只野誠

子供の時つまらない授業の時に頭の中で想像するアレ。

 危機一髪。

 その意味は、髪の毛一本ほどのわずかな違いで危険に追い込まれる、と言うことだそうな。

 そう言った意味では、いや、流石に髪の毛一本程の違いで、と言うのは流石に大げさかもしれない。

 ただ鼻先をかすめる様に大型トラックが目の前を通過していっただけだしね。

 風圧で倒れ込みはしたが、流石に髪の毛一本と言う差ではない。

 いや、結局のところ、無事だったので危機一髪で回避できた、と言うのが正しんだろうか?

 それも正しくはない。

 だって、私の危機はこれからなのだから。


 暴走トラックに引かれると、思いはしたけれども、なんとか寸前のところで最悪の状況だけは避けられた。

 風圧に煽られ道路に倒れ込みはしたものの怪我はない。

 しいて言うならばストッキングが伝線したことくらいか。

 なんとか立ち上がって、まず自分に怪我がないか確認する。

 よし、怪我はない。

 で、トラックに目を向けると……

 そこには武装した集団がいた。

 え? 何事? と思うより先に銃を突きつけられる。

 私は理解できないまま手を上げる。

 そして、銃を突き付けて来た連中は外国語で、なんやかんやら捲し立てて来るが私には理解できない。

 そのまま暴走トラックの荷台に乗せられる。

 トラックに積んである鉄の大きな箱、コンテナって言うの? 私も詳しくは知らないんだけど、とにかく大きな鉄の箱に連行される。

 そこ私と同じような境遇の人間が何人もいた。

 男女関わらず若い人が多い、とそう思った。

 後、なにかもかも理解が追い付かない。

 ただ人攫いなのかな? と言うことだけは理解できた。

 けど、銃を突き付けられたら私には何もできない。

 そもそも外国人の集団らしく日本語が通じるのかも怪しい。

 そう思ったところで、ドラックが再び発進しようとして、すぐに急ブレーキが掛けられる。

 コンテナの中にいた人間すべてがよろめき、もしくは転がる。


 コンテナ内で見張っていた外国人が慌てて外へ出ていく。

 外国人たちがトラックの外でなにやら大声で騒ぎ始める。

 叫び声すら聞こえてくる。

 コンテナの中からでは外で何が起こっているのか理解できない。

 もしかしたら助けが?

 そう思った人もいたのか、特に拘束はされていなかったので、捕まっていた人の一人がコンテナの扉を開いた。

 私も状況を知りたかったので、その人に続いた。

 眩しかった。

 辺り一面が眩しかった。

 空を見上げると、空一面が輝いていた。

 そして、そこには巨大なUFOとしか言えないような物が鎮座していた。

「えぇ……」

 私の漏れ出た声はそれだった。

 理解が追い付かなかった。

 巨大なUFOはスポットライトのような光線を出し、それで人々を吸い上げて言っていた。

 武装した恐らくは人攫い集団もUFOには敵わなかったのか、次々に吸い上げられていく。

 やっぱり理解が追い付かないが、未だ危機が去っていない事だけは理解できた。

 先にコンテナから出ていった人がそのスポットライトのような光線によってUFOの中へと悲鳴と共に吸い込まれていった。

 スポットライトのような光線が私の目前まで迫って来た時、大地が吠えた。


 一瞬、地震かと思ったがそれは違った。

 大地が割れ、地面から奴が現れた。

 一言で言うと、大怪獣だ。

 それは天に届くかと思うほどの超巨大な大怪獣だ。

 大怪獣はUFOをそのカギ爪のような手で鷲掴みし、UFOのにかじりついた。

 UFOは爆散した。

 そのUFOの破片が遠くから飛んでくるのが、私めがけて飛んでくるのが、私には見えていた。

 だからと言ってどうこうできるわけはない。

 今からでは逃げる暇もない。

 次の瞬間にはUFOの破片の潰されて私は死ぬ。

 私が死を悟った時、再び空が輝いた。

 ラッパが鳴り響き、空が割れ、光が溢れだし、その光が粒子となり、その一つ一つが人の形を取った。

 その姿はまさに天使だった。

 そして、どこからともなく響く大いなる声が、

「審判の時来たれり」

 と宣言した。

 ついでに、UFOの破片は私のほんの数ミリ先をかすめて道路に突き刺さっていた。


 大怪獣と天使たちが争う中、私はただただその光景を眺めている事しかできなかった。

 天使達は味方かと思ったが、そんなことはなく大怪獣だけでなく人間も襲い始めていた。

 私の元にも光り輝く羽をもつ天使が舞い降りて来た。

 その手に持つ光の剣を天使が掲げる。

 その後ろにはゾンビが迫っており、天使を羽交い絞めにして天使に噛みついた。

 あぁ、もちろん、私には何一つ理解できない。出来るわけもない。

 ゾンビに噛まれた天使はゾンビ天使となって、仲間の天使に襲いかかった。

 ついでに天使に噛みついたゾンビは、人攫い外国人の生き残りの人が銃で倒してくれた。

 その人も、突如現れた黒い全身タイツの怪人によって倒された。

 空には無数の巨大UFOが現れ、大怪獣と天使とUFOで三つ巴の争いをしている。

 地上では武装した外国人、ゾンビ、黒い全身タイツの怪人達が暴れまわっている。


 そこへ宇宙から飛来した黄金三頭竜が、口から吐く破壊光線ですべてを薙ぎ払っていく。

 もちろん、私を襲うとしていた黒いタイツの怪人のみを焼き尽くすように、すれすれのところで破壊光線が通り過ぎていく。

 さすがの私も走り出す。

 急いで向かわなければならない。

 そして、なんとか始業時刻までになんとか会社にたどり着く。

 時計の針は八時五十九分を指し示している。

 ギリギリセーフ。

 危機一髪でなんとか遅刻は免れることができた。

 もちろん、会社には誰一人いないけども。

 そして、私はやっとこれが現実だと理解できた。

 私の危機はまだまだ続く。


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