死ぬ権利

ぶるうす恩田

死ぬ権利

 2024年、日本の高齢化率は33%を超えた。人口の3人に1人が65歳以上という世界でも稀で異常で歪な人口構成である。加えて未曾有の円安とインフレが襲い国も国民も破綻寸前の事態に陥った。


 国会解散前にときの首相は、「死ぬ権利」の法案を策定し無理矢理施行した。


「死ぬ権利」とは介護や病気により苦しんでいる人々に自死の権利を与えるというふれこみであったが、実際は60歳以上すべての国民に権利があり相続税が無税になるという特例措置が設定されていた。


 日本の未来を子孫に託し、自死を選ぶ元スポーツ有名人や俳優などが英雄とされもてはやされた。死体は特殊工場で裁断・加工され畑の肥料や家畜の飼料になる。人類は自分自身で食物連鎖の一部になることを選択したことになる。


 法案には抜け道があり、60歳以上の人物を殺害した場合であっても適用されることが知らされた。すると多くの家族は両親を殺害し始めた。死刑には処されず減刑されるという特殊条項のため相当数の老人が死に至り、日本の人口は8000万人にまで減少した。


 年金問題や医療保険、介護保険問題が大幅に改善され日本は若返り新たな国としてスタートを切った。

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