妨害俯瞰

釣ール

栄光もない

 今日も人間達の間では売れている、人気となだかい音楽を動画で見ている。

 それを更に見る我々。


 やっている事は人間と変わらない。

 だがそれも仕事なのだ。

 我々トロイカにとっては。


 生まれてから今まで


「地球上に存在する食物連鎖の頂点たちから発展の術を盗め。」


 ざっくりとしたブラックな仕事内容だ。

 こんな湿気た役割を何世代も続けていることが苦痛だ。

 しかし苦痛すらももはや過去なのだ。

 継承というのは下手な習わしよりも遥かに怖い。

 習慣化とは敢えて言わないでおこう。

 観察対象と同じ感覚を持つなんてあまりにも我々にとっては残酷だから。



「良い歳して天才だの才能だの今どきうるさいよねえ。

 自分の生活を充実させることをしない連中の多いこと。」


「俺たちには関係の無いことだ。

 人間は醜さを愛せないのだから。」


「馬鹿しか生きてないのかよ。」


 我々トロイカは動画に群がる文の羅列に意味の無い愚痴ばかりつぶやく。


 妨害したい。

 恨みや怒りではない。

 何百年も続く頭の悪い食物連鎖の頂点達を知っているからこそ湧き上がる衝動。


 だがもう監視しているだけで精一杯だ。

 情けない一族。

 どちらも醜くて誰かに見せたくは無い。


 給料や食料がなくても生きていける代わりにこんな絶望と共存し続けるなんて、最悪過ぎてどうしようもない。


 ここにいる三人以外にもトロイカ達は監視を続けている。


 人間と手を結んでる者がいても裏切りとは思わない。


 上手いこと立ち回って何事もなく過ごせているあたり自分達は次の食物連鎖の頂点にはなれまい。


「はぁぁぁ。」


 ため息をつくしかない。

 妨害は妄想で、俯瞰が現実。


 きっと今だけが長続きする。


 次は娯楽ぐらいは探すか。

 結局人間を監視続けるしかないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妨害俯瞰 釣ール @pixixy1O

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ