第8話 エピローグ

「えへへ、バレちゃった?」


 観覧車を降りた俺は、女性カップルのもとに走って見慣れた腕を捕まえた。

 サングラスを外した姉貴は、悪びれもせずペロっと舌を出す。


「えっ、シルフィさん? そしてぷらっちさん!?」


 遅れてやってきためぐみは、女性二人組を見て歓喜の声を上げる。

 サングラスを外したもう一人の女性は、なんとぷらっちさんだったのだ。そしてその腕には白い時計が光っていた。


 ぷらっち、キンカ、シルフィの三人組のホワイトウォッチーズ。

 それってプラチナ、ゴールド、シルバーってことじゃないか。

 つまりゴールドがマスターなのではなく、プラチナがマスターだった。俺は最初から姉貴に騙されていたのだ。


 聞くところによると、姉貴たちは駅からずっと俺たちのことをつけていたらしい。

 どうりでシートに腰掛けるタイミングや立ち上がるタイミングがシンクロするはずだ。俺とめぐみは、ずっとぷらっちさんのサーヴァントだった。


「だってさあ、翔がなんかウジウジしてるからさぁ」

「そうよ。後ろから見てて、すっごくもどかしくなっちゃった」


 ぷらっちさんもそんなこと言わないで下さいよ。

 それにめぐみも目の前にいるんだし。

 するとめぐみが神妙な表情で俺に切り出す。


「ごめん、翔くん。今までずっと、あなたのことを騙していて」


 ええっ、それってどういうこと?

 実はめぐみもグルだったってこと?

 俺はこの遊園地のピエロだったのかよ!?


「ホントはね、あなたに近づきたくてホワイトウォッチーズのファンになったの。そしたらいつの間にか沼にはまっちゃって……」


 えっ……?

 鳩が豆鉄砲を食ったような表情の俺のことを、めぐみは顔を真っ赤にしながら正視してくれた。


「正直に言います。私、翔くんのことが好きです。付き合って欲しいです。お姉さんたちも応援して……くれますよね?」

「もちろんだよ!」

「やったね、翔くん!」


 なに、この超展開。

 他の観客も集まってきた。

 二人の美女が顔を真っ赤にする女子高生を応援しているのだから、何かのロケと思われたのだろう。


「行くぞ、めぐみ」

「うん!」


 嬉しいやら恥ずかしいやらで、俺はめぐみの手を握りしめながら走り出していた。





 おわり

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彼女にスタート委ねたら つとむュー @tsutomyu

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