地球旅行
とある惑星で、宇宙人による旅行先を決めるプレゼンが行われた。
「地球は素晴らしい惑星でした。人間という種族が主権を握っており、大変欲深いのです。」
座長が質問する。
「ふむ、ならば好物の一つや二つを持っていけば歓迎してくれるに違いない。人間は何を与えれば喜ぶんだ?」
「何もいりません。ただし私たち全員、一機の宇宙船にまとまって移動する必要があります。」
「なぜそんなことを?」
「なるほど…。よし、今年の旅行先は地球に決まりだ、今すぐ準備にとりかかろう。」
「あ、そうそう。日本という島には最後に観光するようにしてくださいね。」
プレゼンは終了し、彼らは地球旅行の準備へと取り掛かった。
地球のとある国。
「お~い、狩猟の調子はどうだ~?」
「芳しくないねぇ、こうも悪天候が続くと動物も外に出たがりゃしねぇ…。おっと、都合よく鶏がいるじゃねぇか。今日の晩御飯は決まりだな。」
手慣れた様子で鶏を狩り帰路に就いた。その夜、彼らは重度の病に侵された。
次の日、病院に行くと治療法の分からない未知の病だと診断された。その次の日、病院全体に病は伝染した。しかし院長はその事実の公表を禁じた。
その次の日、町全体に感染は拡大した。しかし市長はその事実の公表を禁じた。
またその次の日、国全体に感染は拡大した。しかし総理大臣はその事実の公表を禁じた。
病は他国へと伝染し、数週間後には世界中に感染する大事態となった。
その病気が日本へ到達するや否や、国内では毎日生卵を食べることを義務付けられた。日本では過去にこの症状になった者が1人おり、生卵を食べることで病原菌が体内から排出されることが確認されていたのだ。
それを知った他国産業スパイ達は各国へ伝達、世界規模の感染病騒動は終幕を迎えた。
後日、各国で複数の鶏が宇宙へ飛んでいく姿が目撃される。
プレゼンターである病原菌は答えた。
「座長、人間は欲深い生き物なのです。保身と利得のためなら奴らは世界を犠牲にしますよ。」
星新一ナイズの現代ショートショート集 いしだい @ishidaisan
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