目閉じる時計
「これは目閉じる時計といって目覚まし時計の逆の効果があるのじゃ。セットした時間になると時計から睡眠効果のある電波が流れてグッスリ眠れるぞぉ。」
そいつは不眠症の俺にピッタリだ。私は博士にモニターになることを申し出て目閉じる時計を貸してもらった。
その日の夜、私は早速目閉じる時計を22時にセットし布団に入った。あいも変わらず脳は活発に動き全く眠れる気がしない。いつの間にか私はスマホ片手にネットサーフィンに明け暮れ、気付けば22時、時計から和やかな音楽が流れ出した。心地よい音楽に耳を済ませていると、いつの間にか私は眠りに落ちていた。
目を覚ますと目の前には博士がいた。博士が言うには私は丸3日眠っていたらしい。目閉じる時計から発する電波は時計上部のボタンを押さなければ止まらないが、押そうとする前に眠ってしまうため、誰かが起こさない限り電波が流れ続けて永遠に眠ってしまうという重大な欠陥があったのだ。博士は考えた末、目閉じる時計の上に腕を上げたまま寝ることを提案した。電波により眠ることで腕への力が弱まり、重力により時計のボタンに触れて電波を止めれるという寸法だ。
その日の夜、早速時計の上に腕を上げてみた。22時になり音楽と電波が流れ強烈な眠気に襲われ目を閉じた。
目を覚まし時計を見ると22時10分、全く眠れていない。もう一度時計をセットして腕を上げて電波を流し目を閉じる。目覚めると22時50分、さっきよりは長く寝たがそれでも全く眠れていない。もう一度同じことを行い目を閉じる。目覚めると朝になっていた。
どうやら私は相当な不眠症らしく、ある程度の電波を受け続けないと簡単に起きてしまうみたいだ。私は二度寝ならぬ二度起きに苛まれることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます