第2話 見たことのない光景
赤、青、黄、緑、白。まるで何かの装飾なのではないかと思ってしまうほどに、夜空はきらめいている。
明らかに普段と異なる光り方。星がこんな光り方をするなんて、見たことはもちろん、聞いたことすらなかった。
現実とは思えない絵画のような美しい光景に、異世界に迷い込んだような錯覚を覚える。
「え。え、えええ!」
驚きでろくな言葉を発することができない。少女はただただうるさいだけの俺を一瞥すると、「そんなに驚くこと?」と静かに呟いた。
「星がちょっとおかしな光り方をしてるだけだよ?」
「それがすごいんだよ! こんな景色、人生で初めて見た!」
呆れたような顔をする少女とは裏腹に、俺は終始興奮していた。
そうこうしている間にも、星々の輝きは収まるところを知らない。むしろ、より強まっているように感じた。
星々はそれからもきらめき続け、その間少女は子供のように目を光らせている俺を微笑ましそうに眺めていた。
◇
「気に入ってくれたようでなにより」
数分が経ち、星々が鳴りを潜めると、少女は嬉しそうに――とはいっても真顔なのだが――興奮が冷め切らない俺に話しかけてきた。
「そういえば今更だけど、名乗ってなかったね。私は
「あ、ああ。よろしく。俺は宇野悠星だ。宇宙の宇に野原の野。
これが少女、いや、雫と俺の出会いだった。
「それにしても、すごいな、さっきの! どうやったんだ?」
「あー、ええと。ひとまず今は秘密ってことで」
調子を取り戻し、俺は意気込んで雫との距離をぐいっと縮める。圧倒されたのか、雫は半歩ほど後ずさった。
「ちなみに、もう一回やってもらうこととかはできる?」
「ごめん、それは無理かな。一日一回って決めてるから」
「なるほど……なあ水流田さん」
「雫でいいよ。私も君のこと悠星って呼ぶし」
そっと訂正された。
「じゃあ雫。雫は明日も
「……多分」
俺の質問ラッシュに、気圧されつつも雫は答えてくれる。こんなに面白い現象を間近で見せられて、落ち着いたとはいえまだまだ俺の心は躍っていたのだから、雫を質問責めにしてしまうのはある程度仕方がなかった。
そうして俺は勢いのまま、若干引き気味の雫に対して約束を押し付けた。
「じゃあさ明日も会おう! また雫の不思議な力を、俺に見せてくれないか?」
「う、うん。いいよ……」
「ありがとう!」
嬉しさのあまり、雫の手をとって上下にぶんぶんと振る。
テンションマックスな俺とは対照的に、雫はただ無気力で、俺になされるがままになっていた。
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