新年スタートに毎回思うこと
kayako
とりあえず、12月の祝日だけは復活させてほしい。
――馬鹿らしい。
ただ、月が変わるだけじゃないか。
年末年始の喧噪を見るたび、私は毎回そう思っていた。
思っていたというか、今でも時々そう思う。
年末、つまり12月は「師走」で、「師が走る」からこそ非常に忙しい。
そう人は言うが、だったらそれほどまでに忙しくするに至る原因を作った輩は何者なのかといつも思う。
クリスマスの大騒動に始まり、大掃除、年末年始に向けての買い出し、年賀状、おせちに雑煮に年越しそばの準備。
年が明ければ親戚への挨拶回りに、初詣に初売り。それだけで軽く三が日は潰れる。
……とまぁ、ちょっと思いつくだけでもこれだけのイベントがある。
社会人にとっては貴重な休みであるはずの年末年始は、何故か仕事以上に疲労して終わることが殆どだ。しかも三が日が終わればすぐ仕事という社会人も多い。
せめてクリスマスが12月でなく11月であったなら、少しはこの忙しさも軽減されたものを……そうでなくともせめて、クリスマス前後が祝日であったなら!!
令和になってから年末年始がやたら忙しく感じるのは絶対、12月の祝日が消滅したせいだろう。絶対。
しかしそうは言ってもやはり、1年のスタートを迎えるにあたり、それなりの準備は必要と思っている。
何故かというと――自分には年末年始に関して、少々痛い思い出があるから。
あれはまだ自分が学生だった頃。
あまりにも卒論が厳しくキツく忙しく、私はほぼノイローゼになっていた。
今だったらアカハラで訴えれば勝てるかも知れないというレベルまで追いつめられ、年末年始準備どころじゃなかった。
だから、それまで何だかんだで毎年やっていた大掃除やら年賀状やらを、その年だけは全部ぶん投げてしまった。
それよりかなり前から年賀状は面倒くさくてたまらなかったし、大掃除に至っては母が家中を数日にわたって引っ繰り返し暴れ狂いまともな日常生活が不可能になるイベント、というイメージしかなかった。
だからその年は卒論を理由に、全ての年末年始のイベントを徹底無視することにしたのだが――
明けて次の年。
それは人生でも最悪な年になってしまったと言える。
卒論はどうにか通ったものの、その代償にパニック障害を発症した私は、決まっていたはずの就職がダメになった。
電車に全く乗れなくなったばかりか、外に出て人と会話することすらろくに出来なくなってしまったのだから、会社など行けるはずもない。
その状態はおよそ1年以上も続いた。
それに伴い家族との不和、さらには金銭問題をめぐる親戚との諍い……
詳細はあまり書きたくないが、結構な災いが自分に降りかかってきたと思う。
その全てが、年末年始のイベントをぶっ飛ばしたせいだというつもりは全くないが。
一年のスタートをまともに迎える気がなかったというのは確かだ。
姿勢を正し、新年を迎えようという気構えが少しでもあったのなら、あの年、ほんのちょっと何かが変わっていたのだろうか……とは、今でも思う。
だからそれ以来自分は、そこそこでも構わないから一応の新年準備だけはしておこうと思っているし、毎年面倒くさがりながらも何だかんだで一応やっている。
年賀状はそこまで量を出すわけでもないのに常にギリギリだし、年明けに出すこともしょっちゅう。
大掃除など、他の常識的な主婦のかたからすれば普段の掃除にすら及ばないであろうシロモノ。
おせちは黒豆を煮るぐらいが精一杯。あとは全部スーパーで買って済ます。雑煮も年越しそばも超適当。
だけどやっぱり、やらないよりはやった方が良い。
ろくに出来なくとも、新しい年のスタートを迎える心構えぐらいはしておいた方が良い。
面倒すぎる!地獄すぎる!年末年始なんてなくなってしまえ!と毎年愚痴りながらも、それでも年末年始のイベントをやめられないのはそういう理由からだ。
ある意味、強迫観念に近いものとも思える。でも多分次の年末もその次も、きっと私は文句言いながらも何だかんだで正月準備をするんだろう。
そりゃ勿論、忙しいには忙しい。
あまりに忙しすぎてそのしわ寄せがきたせいか、元旦に倒れて救急車で運ばれたこともあった。
だから自分に出来る範囲で、自分のペースで出来ることをする。今の私はそう決めている。
今年は特に、元旦から信じられない災害や事故が連続で起こっている。
被害に遭われたかたの無事と平穏、そして一刻も早い復興を祈りつつ……
いつもと変わらず、自分は自分にやれることをやっていく。
いつもと変わらない日々を過ごし、いつもと変わらず家事と仕事をこなし、いつもと変わらず淡々と何かを書き、家族や周囲の健康と安全を祈る。
それが、今のところ何事もなく過ごせている自分の責務なんだろう……と、何となく考えている。
新年スタートに毎回思うこと kayako @kayako001
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