5日目

大学生になり一人暮らしを始めた。


にゃ!

「はい。おとなしくしててね~」

カリカリ

「よし」


暮らし始めたの部屋はペット可の部屋を選んだので■■と一緒に住むことができた。今は部屋の模様替えの為に餌で釣っておとなしくしてもらっている。


「行ってきます」

にゃにゃにゃ!


一人暮らしなので■■は初めてのひとりぼっちになるが、「心配するな」と言わんばかりにお見送りしてくれた。

結局その日は集中できず、俺が心配で急いで帰ることになった。帰ると玄関に来てくれて、多めに用意していた餌と水はちゃんと減っていた。


にゃ!


その鳴き声はまるで「なんで心配した!」と怒っているように聞こえた。


「ふふん。今日もしっかりしてるなぁ~」

「何見ているんですか」

「ふぇ?うちにいるの猫を見ているんですよ」

「そうなんですか…。いつも…その…いかがわしいものをみているような顔をしていたので…」

「え?嘘!そんな顔をしていました?」

「はい。引くほど。噂になるほど」


部屋にペットを見守るようの監視カメラをつけていて、その映像をスマホで見てただけなのに…。終わった…俺の大学生活…。


「あの!」



ギィィ

にゃあ!

「夜遅くなってごめんよ!」

にゃあ!

「なに?毛布?」

にゃ にゃあ!

「…しょうがないな~」


俺がバイトから帰って来ると毛布を咥えて引きずりながら玄関に持ってきた。「休め!」と言っている様にみえたのでその夜は毛布に■■と一緒にくるまり寝た。


にゃあ!

「君が■■ね!」

にゃ!

「ほら!よしよしよぉ~し」

うにゃ~お~


初めてできた彼女を部屋に連れて来た時は、すぐに彼女のなでなでに■■は癒やされていた。ずるいなぁ。


にゃ!

「うん?なんだ?」

にゃにゃん!

「ふふ。ありがとな!」


「なに?会話してるの?」

「いや。あくまで俺がそう思っているだけさ」

にゃ!


俺はなんとなく■■が「おめでと!」と言っている様な気がした。


「ありがとな!相棒!」





====





ペラペラ


猫の視力は人の10分の1らしい。相棒がどんな風に景色が見えていたなんて分からない。でも今なら分かる。


ペラペラ


この5日間で書いた日記は涙でにじんで見づらくなっていた。近くにあった水性のボールペンで書いていた影響だと思う。相棒の名前の部分は手でなでていたこともありもう読めない。


たぶん俺の目に涙をためている時に見える景色が相棒の見えていた景色なんだろう。それでも俺を慕い、愛してくれていたと思う。


ズビッ!

5日間の日記は日記とも呼べない。ただこれまでの相棒との思い出をそのまま書いただけ。1日あたり500から600字ぐらいしか書いていないと思う。


なんか書けなかった。書いたら終わってしまう。相棒との思い出が俺から消えてしまうと思った。相棒との思い出はこの厚い日記に書ききれない程ある。書こうと思えば書ける。けど書きたくなかった。書いたら俺は永遠に止まっていたいと思ってしまう。この5日目に


両親に心配させた。妹に手間をかけた。彼女に迷惑をかけた。たぶん相棒は「にゃあ!」と鳴いて叱るだろう。泣いている俺に。


すぅ~はぁ~

進まなきゃいけない。相棒に俺に付いてきて良かったと思えるように。


できれば幸せになりたい。相棒にまた会うときに胸を張って会えるように。


俺の大事な人生の重要な柱になっていた相棒が後悔しないように。


ガチャン!ギィィ


俺は前に進むために扉を開けた。









また、いつか


『 』



====

====


ここまでお読みいただきありがとございました。

感想など、いただけると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いつか ようび @tyovi_1_4

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ