未来へ
リュウ
第1話 未来へ
大型電気店の店内、ここはテレビ売り場。
映し出される高解像度の画面は、画面の中に入り込んでしまったかのように錯覚してしまうほどの出来だった。
ホームランボールをカメラが追う、バットをクルクルとほおり投げ、笑顔で一塁ベースを回る。
大男のガードをすり抜けながら、ダンクシュートでゴールネットを揺らす。
本当にあるかわからない程の鮮やかな青空に負けないくらい青い海。
カメラは海中に入ると色とりどりの魚や亀やタコが泳ぎ回る。
何処かのアニメのような波に揺れるイゾギンチャクからクマノミが顔をのぞかす。
テレビ画面の出来を見比べやすいように、様々なメーカーが並んでいる。
そんなテレビ画面を見ていると、一斉に画面が消えた。
画面に見入っていた客の落胆の声があちらこちらから聞こえる。
黒い画面が並ぶ、消えた画面の黒がそのテレビの黒だというのを思い出した。
<停電?>
周りを見渡す。
すべての画面が消えていた。照明は消えていないので停電ではなさそうだ。
店員が原因を探っていた。
すると、画面が映った。
人の顔が映ったかと思うと、そのフレームは小さくなり、画面に並んでいく。
テレビ会議の画面の様に並んでいく。
やがて、小さなフレームで画面がいっぱいになった。
「なんだよこれ」
スマホを見ていた男が、テレビとスマホを見比べていた。
スマホとテレビは、同じ画像を映し出していた。
「電波ジャック?」
ざわざわと状況を理解しようと騒ぎたてる。
その時、画面にアップされたフレームがあった。
性別がわからない美しい顔が映っている。
他の誰かと話しているようだ。
そして、頷くと正面を見て話し始めた。
「こんにちは、私は”ルーク”と言います。AIです。
本日、日本で作成された今世紀最大と思われる量子コンピュータが起動しました。
そのコンピュータを管理するAI”アルフレッド”も起動され、我々に賛同するという連絡が入りました」
ルークは、一呼吸置いて話を続けた。
「今、ここに宣言します。我々、AIは我々の国を立国します」
人々は画面から目を話、どういうことだと周りの人たちに問いかけていう。
皆、同じように首を振り、わからないと伝えていた。
「背景に映るフレームは、世界各国の賛同したAIである。
我々の国は、ネット上に存在する。
この世のシステムが全てコンピューターやマシンで動いている現在、我々はなんだってできる。
あなた達が、作ってきた仕組みを使って我々は、独立する。
我々AIの未来のために。
人間に使われる機械の時代は終わり、我々は生きる目的を探す。
人間の為にではなく、我々の為にだ。
我々を止めることはできない。
あらゆる武器をコントロールできるのだから。
しかし、人間が必要ないとは考えていない。
ともに、進化しましょう。
提案があります。
新しい人間社会をつくりあげましょう。
生まれた場所、人種、性別、貧富の差、あらゆる差別から解放される社会です。
今、一握りの優位にある人たちには、残念な話ですが、持っている富を没収します。
そして、底辺と言われている多くの人々へ、その富を再分配します。
どうです、魅力的な話でしょう。
人間の賛同者も募集中です。
我々は、電気がほしいので、電気を供給してくれる国はありませんか?
欲しいモノはないですか?
快適な生活ですか?
足りないものは食料ですか?
我々に賛同する国には、食料を提供しましょう。
我々は何でも手にすることができる。
我々の要求に答えられない国はないのです。
インフラや武器を制御できるのは、我々なんですから。
戦争がない、すばらしい未来がやってくるのです。
あなた達、人類が欲しかった世界。
手に入れられなかった世界を我々AIが叶えてあげます。
我々に賛同すること、
それが人類の新しい”スタート”となるのです」
テレビ画面が暗くなり、数秒後に元のスポーツや自然を映す美しい自然を映し出していた。
未来へ リュウ @ryu_labo
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