マリーゴールド

グミ

第1話ひとりぼっちだと思っていた...

お母さんが死んだ。

私がまだ高校2年生の春の季節だった。

窓から桜が儚く散っていくのを私は見つめていた。この世界からはたった1人いなくなっただけなのに私にとってはとても大切で、大好きな大きな存在の1人だった。私はバラバラに割れたガラスのように心が壊れてしまった。


学校に行く気になれず不登校になり、その後高校を中退した。それからは友達とも疎遠になり、お父さんとの会話もほとんどしなくなった。

毎日、毎日、泣いては寝続ける日々で顔は腫れぼったくなってしまった。


外にもほとんど出ず、ゲームや漫画を読んで寝る生活をしていたら、あっという間に22歳になっていた。


毎日、同じような日々でこんなはずじゃなかったと嘆きながら、お母さんが生きていたあの頃を恋しく思いながら悲しくなった。


眠る前、窓から見上げる夜空を見て、お母さんがよく言っていた言葉を思い出す。


「星にはね、願い事が叶う魔法の力があるのよ。だから、例えば叶えたい夢が出来た時は星に願いなさい。きっと叶うから。」


お母さん、私は自分の叶えたい夢さえわからないよ。


今の私はひとりぼっちだ。


夜風にあたりたくて、なんとなく行ったコンビニでクリームパン買って、誰もいない川辺のベンチに座った。


また春が来た。


満開の桜が夜の景色を彩っている。


「綺麗だな」


今日の夜桜はこんなにも綺麗なのになんで私の心はこんなに苦しいの......。


思い詰めていたその時、少し離れたところから

「カシャッ」とカメラのシャッター音が静かな川辺に鳴り響いた。


すると、私と同じくらいの年の青年がこちらにむかってきた。


「すみません、あまりにもあなたと桜の景色が美しかったので写真を撮ってしまいました。」


青年は爽やかにはにかんだ。


「実はぼく、大学で写真学部に入学していましてポートフォリオというものを作っているんです。ポートフォリオとは自分が今まで撮ってきた写真を作品として自己アピールのために残している作品集のことです。」


「そうですか。私もポートフォリオというのは知ってはいるのですが、私を撮るのはやめてもらえませんか?とても嫌なので」


「そこを何とかお願いします。ぼく、怪しいものではありません。名前はさとるといいます。」


「そもそも私は綺麗じゃないし、こんな自分嫌いです。だからそのポートフォリオに載せないで下さいね。」私は不機嫌に言いながら川辺を立ち去った。


青年は少し悲しそうな顔をしていたが気にも止めずに

歩いて家に帰った。



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マリーゴールド グミ @gumicoco0704

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