第1話 託される願い
目が覚めるとそこは見知らぬ場所だった。..いつものことだ。焦ることはない。
僕は不思議とそう思った。そして僕の他に3人も人がいて僕と同じくらいに目が覚めたようだ。知り合いがいないかと確認してみるとそこには以前会ったことのある人物があたりを警戒しながら起き上がっていた。名前は確か、、、「琥珀 零」さんだったな。そんなことを思い出していたらどうやら僕以外は全員顔見知りらしくこの状況について話し始めた。
「ここはどこだ。」と黒髪の男が言った。「今回は風景が違いますね、雪村先輩」黒髪の後輩らしき人物が応える。どうやら黒髪の人物は「雪村」というらしい。
「城井くんも巻き込まれたのか」
「そのようですね。とにかく先輩も琥珀さんも無事で良かった。」
後輩らしき人物は「城井」というらしい。これで3人の名前がわかり、話すのには困らないだろう。そうこう考えながら自身の置かれた場所の分析する。軽く粘性を帯びた地面に、宙に浮く球状の何か。この世とはおおよそ思えないほど神秘的でそれと同時に不気味な光景が広がっていた。なぜこんな場所にと思考を巡らせていると雪村が話しかけてきた。
「君は、一度このような空間であったことがあるよな」
「...えっ?」
雪村は僕にあったことがあると言っているがいまいち覚えていない。まるで抜け落ちたかのような感覚だ。そのことを相手が知るわけもないので覚えてないことにしよう
「ごめん。僕は覚えてないや。自己紹介いる?」
そう話しながらあたりを見渡していると空間の奥の方に巨大な歯車の塊があった。
僕がそれに気づいたとほぼ同時に雪村と城井、そして琥珀もその存在に気がついた。
「自己紹介は後でいい?」
「そうしてもらえると助かる。」
そういって歯車を注視していると歯車の中心に人の形があるのがわかる。
そして、ソレは歯車の運動を阻止するために四肢を組み込んでいた。
「何だろうあれ?」
「近づいてみましょうか。」
「そうだね。」
そう会話して歯車に近づいていく。
「...城井くん、武器は?」そういって雪村は銃を用意し構えている。
「ちゃんとありますよ。それに警棒も。」そう言って城井は雪村同様、銃を構えた。
どうやら二人は警察らしい。今構えている銃を使わないことを僕は静かに願った。
そうして近づいた先で僕らの目に写ったのは、四肢が歯車でぐしゃぐしゃになり気を失っている女性がいた。
「なっ!?大丈夫か?」そう言い、雪村たちが駆け寄る。少し乗り遅れてその場所に着くと彼女は目を覚ます。
「あぁ...間に合ったか...」と彼女は言った。「どうしたんだ?」「一体何が...あったのですか?」雪村たちは彼女に話しかける。
「大丈夫そう?」そう問いかけるが、彼女の状態を見て驚愕する。なんと出血がないのだ。このあまりの異常さに自分の今いる場所が「普通」とは逸脱しているのだと改めて理解した。
「この状況で...出血がない...」琥珀さんもこの異常さに気づいているらしい。雪村と城井はどうかと思ったが二人との声に出さないだけで異変には気づいていた。
「詳しく...説明するには...時間がない..。」
彼女の声は疲弊しているのか酷くか細く、普段ではとても聞き取るのに苦労しそうなのだがこの空間が静かなせいかよく響く。
「時間がないのはどうしてだ?」
「そんなことは...どうでもいい..はぁ..旧常星盤球を操作して...」
雪村の質問をぶった切り彼女は自身の要望を答える。
「それはどこにあるんだ?」
雪村は彼女の意思を汲み取ったのかすぐさま切り替えた。
「私の組み込まれている...これだ。私の下の方に操作盤があるはずだ。」
歯車の全体を見渡すとそこには確かに操作盤があった。
「その操作盤にレバーがついているだろう。その一番右のものをどの方向でもいいから、動かしてくれないか?」
「了解!!このレバーでいい?」
そう言い僕はレバーを上に動かした。そうすると、彼女の右腕の部分の歯車が回転を始める。
「...ッ..。...ぐぅ...。」彼女の右腕はブチブチブチと音を立ててすり潰されていく。
「えっ、もしかして間違っちゃった?」
「あぁ...気にしないでくれ...これで装置は正しく動いた..。」
苦しそうに彼女は応える。
「これが、正常だと...」琥珀はその異常さに酷く動揺していた。
「わ...私は..自ら進んで...組み込まれたんだ...気にすることはない。」
「自ら...だと?」「それは...一体..。」雪村と城井がそれぞれ質問する。
「すまないが今は答えている暇がない。」と一蹴された。
そうしていると、歯車が蒸気を放ち、右に合った球体の一つがすぐ近くまで落ちてくる。
「そこの球体に触ると別空間に飛ばされる。そして君たちにはそこで種を集めてくれ...。そして、そこの夢見人...」と彼女は雪村に向かって呟いた。
「...俺か...?それに夢見人とは?」
「すまないが夢見人については後だ。それより私の腕が落ちた所に行ってくれ。」
雪村がその場まで歩く。そうすると彼女は切断された腕の断面を雪村に向ける。
「あ...握手だ。」「ああ、わかった」そう言い二人は握手をする。
「..う”ぅ”ッ..。」握手をすると彼女は苦しみ始めた。そして対象的に雪村は少し放心状態に陥っているようだった。
「これで...【夢見】..力の使い方がわかったはずだ。わかったなら早く行け。」
「行くしかないようですね」城井が促す。
「わたしも同行しよう。」「僕も行くよ!」と琥珀さんと一緒に答えた。
「こんなことに巻き込んですまないが、頼んだよ」と彼女は呟いた。
「あぁ、任せてくれ。」「大丈夫だよ!」「安心してください。」「了解だ。」
それぞれが彼女に返答する。そして転移が開始され4人は別空間へと移動する。
物語2 @nanekuzikozou
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