第3話
ロープレの効果自体は低かったものの、かめの作った人見知り向けのマニュアルによって徐々に入塾率は改善されてきました。初見には弱いが時間をかけて関係を構築していくタイプのかめは生徒や保護者にも好かれ、講習売上達成率の高さや退会率の低さにおいて、入社8年目で初めて表彰されました。
うさぎは新しくできた福井ブロックに異動することになりました。愛知の部下からの信用は地に堕ちていました。部下たちはそれぞれの担当する教室で講習授業・通常授業・人数達成の3項目で120%を達成し、うさぎに実績を持たせて福井へと追い出すことに成功したのです。うさぎは真意に気づいていません。
「うさぎを追い出してかめさんをブロック長にしよう」という思いが部下たち努力する糧となりました。おかげでかめは愛知のブロック長に昇格することになり、責任の重い業務が増えることに内心辟易していましたが、部下からの厚い信頼によって、その役職を全うする覚悟ができました。
ブロック長会議の日、京都で久々にうさぎと鉢合わせしました。かめはうさぎからご飯に誘われました。最初は重たい雰囲気でしたが、徐々に新卒の頃と同じ空気になりました。うさぎにかめを嘲笑する様子がありません。部下に好かれなかった愛知時代、福井での不遇によって過ちに気づいたのでしょう。
一方でかめはブロック長の大変さを実感し、一足先にうさぎがこの大変さを味わっていたことを理解しました。若いうちから重い業務を任されてプレッシャーで難聴になっていたのです。方法こそ間違えていたのかもしれませんがうさぎも業績を出すことに経験値の足りない頭を必死に回転させていたのです。
お互いの長所をたたえ合ったあと、かめは財布を出すとうさぎに制止されました。「俺が奢る」バニーガールに捧げた2,000円がチャラになるわけではありませんが、せめてもの罪滅ぼしだと思ったのです。二人は「今日も頑張ろう」と別れ、それぞれの地域に戻っていきましたとさ。めでたしめでたし。
個別指導塾うさぎとかめ 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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