透色探し
@kurashige
第1話
金色の空に青い夕日、そしてエメラルドグリーンの海、白色の大地。この世界では幾何学的な数の生物が存在していて、その進化の過程で絶滅した生物、その1つ1つの命が色々な色をその目に映し出したのだろう。
「色というものは所詮、光の波のことだ。特に気にしなかった。それでよかった。なのに社会には何故色が必要なのだ。俺も色は持っているのに、何故使い物にならないのか。社会でいう色は1つしかないのだ。世の中には俺の色は存在しない。理不尽だ。」
下田孝太郎
大学3年に自分が色弱である事が判明。薬学部では進級できず、教育学部の社会科に編入した。そのせいもあってか色に対しての好感は持てず色を嫌っていた。
「私はもう色なんてとうの昔に捨ててしまったわ。私には必要ない。私にはもう欲しいなんて考えすらないんだもの。元々持っていない。そしてこれからも気にしない。それが普通。それが今私が出せる1つの正解よ」
矢田リズ
産まれたとに難産での後遺症により全盲に。教育支援学校へ入学。色に関心のない生活を送っていた。
出会い
孝太郎は教授からの課題でレポートの制作をかされていた。「近くのコーヒーカフェで課題でもするか。」孝太郎は社会科の課題に対してあまり意欲が湧かなかった。「ここ数日俺は何もできていないな。本当にダメな奴だな。社会は理不尽って何回言ってんだろーな俺は。」只の独り言だった。後方から声が聞こえた。「そんな事ないわ。」「ん?」「理不尽なんて言葉使わない方がいいって言ってんのよ。理不尽って言葉は八方塞がりの状況だったり意欲が湧かないときの地獄行きの切符のようなものよ。やめなさいその方が楽よ。それに貴方は一度挫折しても頑張っているじゃない。」「え?なに?誰だ?」孝太郎は意表をつかれた。そこには黒髪ショートの少女が後ろを向けて座っていた。少しの混乱の後「なんで杖持ってんだ。」心の声が漏れた。「あ、すまない今のは忘れてくれないか。」「どうして?障害が理由で発言と行動を制限する必要はないわ、全然いいわよ。」「てか何でおれの近況を知ってんだ?」「解るわよ努力している人、疲弊している人ウキウキしている人、全て声色が違うからね、貴方は立て直そうとしていて努力している人でしょ?」「へー。凄いな。今までの経験のおかげなのか?」「まーそうね。何もしないで生きてきたわけではないからね。」『お待たせしました。コーヒーと紅茶ですね』「有難うございます。これってどちらが紅茶ですか?」『手前の方が紅茶になります。』「有難うございます。砂糖2つとミルクも1つお願いできますか?」
『かしこまりました。少々お待ちください』
「あんたコーヒー牛乳頼みなさいよ。それより甘党なのね。それと、色がわからないみたいね?」「あーそうだ、昔からな色弱だったみたいでな、一生懸命勉強して入った薬学部を違う科に編入させられたんだ。今は只々ある一定水準の生活目指して頑張ってるところさ。」
会話が15分程続いた。
「ねー紫ってどんな色?」リズが興味本位で聞た。「それ俺に聞く?」「色と言ってもイメージでいいの。貴方の考えを聞いてみたいわ。」孝太郎は少し考えてみた。「てか何でタメ口なん?初対面だけど」「タメ口だと障害者だからっていう感情が少しでも薄れると思うのだからよ。」「はー、そういうことか。それは君自身の強さなんじゃないかな。」「俺は全然タメ口でいいけどね。」「それは助かるわ、丁寧語なんて使いたくないもの。」「何で使いたくないの?」「勝ちたいと思うからよ。自分にも相手にも。」「なるほどなー、強さか。俺はその感情こそ紫に見えるね。少しも屈しない。逃げることを許さない確固たる強さ。」「そ。私自身が紫でイメージカラーってやつ?」「いや、ちょっと違う気がするが、でも良い色じゃないか、少なくとも俺はその色好きだぞ。」「ま、褒め言葉として受け取っておくわ。」
数日後
「貴方私をスポーツ観戦に連れて行くなんてとんでもない皮肉ね。」「ふーん、そう思うのかそういうつもりじゃなくて所謂、宝探しだ。経験というものは色を探す俺達に何必ず宝をくれる。」「ま、いいわ、付き合ってあげるわ。そして今回何のスポーツなの?」「ん?言わなかったか?ボクシングだ。」「ボクシングって何でまた、私怖いイメージしかないのだけれど。まー、いいわ色を探しましょ。」「ちょっと前向きじゃないか。」『皆さん今夜お集まり下さり誠にありがとうございます。スーパーバンタム級4団体と統一戦を行います。選手リング入場です。赤コーナーー!二団体統一王者フロイドガルシアーー!青コーナー二団体統一王者井上和也ーーー!』『カーン!!』リングの音が鳴る。1ラウンドが始まる。「やっと始まったな。」「凄い熱気ね。」「お互いジャブで牽制して、間をとっているな。このボクサーたちはお互い防御が得意なんだ。」「私何も見えなくて怖いんだけど。」「そうだよな、すまない。だがリング中央に耳を傾けてくれ。セコンドと選手の息遣いステップそして激励の音を聞いてみてくれ。彼らは今日のために血反吐を吐くような努力を重ねてきたんだ。ただ勝つという1つの目標に足並みを揃えてね。」リングが重なり井上和也の10ラウンドKO勝利で試合が終わった。「私ボクシングって怖いイメージがあったのよ、でもそれは間違い。努力して戦術を整理して相手を分析してこのリングの上に上がって練習の全てを全力で出していたのね。とても勉強になったわ怖いと思っていたことも経験というものは恐怖を克服する鍵になるのね。」
「その通りだ、さすがだな。君は冷静な分析官ってところじゃないか?」「その通りかもしれないわね、それは何色?」数秒考えた後「青かな。」「へーどんな色なのかは知らないけど恐らく格好良いんじゃない?」私その色好きかも。」「そうだな。俺も良いと思うよ。」
試合が終わり。時刻は20時をまわっていた。
「次は何処に行くの?もう夜だけど?」「そうだなもう時期帰らないといけないな。どうする?ゲームセンターにでも寄って帰るか。」「そうね、そうしましょう。」『ガヤガヤ』「凄くいろんな声が聞こえてくるわ。落胆する声、不安になっていく声、安心の声とかかな。」「俺もちょっとやってみようかな。」
「上手なの?」「お手のもんよ」「欲しいものあるか?」「青色のもの」「そうか青色が好きなんだな、了解とってあげるよ。」「とてもウキウキしている声。とても楽しそうね。あっ、ごめんなさい。お金を渡すわ。」「良いよ俺からのプレゼントだ。」「へーやるじゃない。お金に余裕があるのね。」「そんなことないぞ。かなりの貧乏さ。」「じゃあ何故とってくれるの?」「使っても良いと自分が思った時には俺は積極的に使うね。」「じゃあ使っても良いと思ったのね。赤色。リズは頬を赤らめた。「赤よ、今の気持ちよ。」「そうかお前の中で赤色の答えがでたんだな。」「有難う。」
「良いよこんくらい何でもしてやるよ。」「赤って面白い。とっっても綺麗な色なんでしょうね。」「ほら一発!はい、青色のぬいぐるみだ。」「有難う。」「おう。次は何がほしいんだ?」「じゃあ次は赤色が欲しいわ。」「了解とってやる。」
数日が空いた。「久しぶりの色探しだな。」
「そうね。色探しはあと3色にしましょう。」「どうしてだ?まー良いけど。」「色って組み合わせることでたくさんの色を作れるんでしょ?だったら色のイメージだけでも組み合わせることでいろいろな色を作れると思うのよ。」「なるほど、それじゃーあと何色が欲しいんだ?」「緑、白、黒よ。」「ほーどうして緑なんだ?白と黒は何となくわかる気がするが。」「緑って昔からよく聞くし、知りたい色だからよ。」「そうかさがしだせるといいな。」「そうね。」「今日は何処に行くんだ?」「イルミネーションを見に行くわ。」「いや、いま朝だぞ。」「それで良いのか?」「うん。」「まーいいか。行くか。おー、花や緑は綺麗だな。」「霧が少しかかり幻想的な風景が広がっていた。「人が少ない。」「そうだな十数人ってとこか?」「全然いい。私イリミネーションの場所って少し特別だと思うの。朝と昼は落ち着きがあって夜は華やかになる。でも、朝昼晩全ての時間帯精神的余裕を感じられるの。」「へー、そうなんだなでも少しわかるような気がするよ。」空気が綺麗だった。「まーとりあえずそこのカフェで朝食でも食べましょ。」「おう。」「なんか時間がゆっくり進んでいるみたいね。」「さっきの広場よりさらに落ち着く。穏やかで余裕のある場ではあらよるものを穏やかにするのかも。だけどそれは人によって違う。元々余裕のある人の落ち着き具合は、普段余裕がない人の余裕より遥かに上をいっていると思うの。でも万物を平等に穏やかさを与えられる個性、これこそが緑なんじゃないかしら。」「凄いな、俺も同感だ。」
カフェで喋っていると昼になった。
「あと黒と白だがどうする。」「夜までそこの遊園地で遊びましょう。「あーいいよ。絶叫系はいけるか?」「無理に決まってるでしょ怖すぎるもの。」「そうだよなごめん、んじゃあのパンダの遊具に乗るか。」「いいわよ。」100円を入れる。すると突拍子のない音楽が流れ出しパンダが時速3kmほどの速さで進み始めた。周囲の目を独占した。「とてもメルヘンね。」「おい。あまり言うな考えたら恥ずかしさで爆発しそうだ。」「どうする?やめる。」「いや、止められない。」「そう。」数分間耐え忍んだのちコーヒーカップ、メリーゴーランド、観覧車に乗った。リズはコーヒーカップで酔ったらしく1時間程度寝ていた。
そして夜になる。
『只今から場内を一億個のライトで照らします。準備はいいですか?10.9.8.7.6.5.4.3.2.1.
点灯!』アナウンスの後にあたり一面を光の花びら、光の川、光の地面とても幻想的な光景が広がっていた。『うわぁ!とても綺麗!凄い綺麗だ。すごぉーい!!』数十人だった人は軽く数100人を超えていた。「とても凄いわ人間の嬉しくて優しくて穏やかで華やかな素敵な声。とても素晴らしいものね。」「そうか。それは何よりだ。楽しんでくれて嬉しいよ。」「とても良いわ。けれどもこの感覚は貴方がいなければ味わえなかった。だって1人だと寂しさの方が勝っていたから。今日とわ言わずいつも付き合ってくれてありがとう。」「全然いいぞ俺も楽しかったし。」「私わかったわ。黒色は精神的支柱だと思うの。私にとっては孝太郎ね。いつも支柱であってくれて有難う。私にとって最高の色よ。これからもよろしくね。」「照れちまうな。でも、まーいつでも連絡待ってるぜ!いつでも何処か連れて行ってやる、辛くなる時も待ってるぜ必要な時は俺を頼ってくれ。お前は俺の友達だからな。」「わかったわ。そうする。ありがとう。」「えーと、残りは白だが。」「実はね、白は黒色をイメージした時からわかっていて黒は支え、精神的支柱だったでしょ。それを軸にして白は白紙の未来。なにも描かれていない純白な未来。つまりこれから白色のキャンパスってあるでしょそれに今までの色のイメージを使って描いて行くこれが私の色たちよ。」「とても素敵じゃないか、君は今世界で一番いろんな色で輝いているよ。」
透色探し @kurashige
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